ひとりごと
そいつは随分な見てくれだった。
埃にまみれて置いてあった。
いったいいつからそこにあったのか。
そんなになっても捨てられなかった。
どんなに汚れても譲れない誇りがあった。
そいつは随分な見てくれだった。
誇らしい程の見てくれだった。
見栄を張って生きてきた。
意地も張って生きてきた。
自分の事ばかりを気にして
他人の事など気にもせずに
胸は張れずに生きていた。
嫌な事から逃げていた。
逃げ道ばかりを造りあげてきた。
いつの間にか帰り道がわからなくなっていた。