カズヒト死す・・
「俺は……2人に会えて幸せだったよ……」
ガクッ
「カズヒト!」
「カズヒトーーー!」
アルカにものすごい力で抱き締められ、身体中の骨、内臓、肉……全てが潰れ、俺カズヒトは、
死んだ。
ということはもちろんない。お約束というやつだ。
さて……
「アルカさーん? 力を抜いてくれたのは非常に助かるんだけど、そろそろ離してもらわないと動けないんだけど?」
べったりと背中に付いたまま離れなくなってしまった。
ちょっとしたリュックサックである。
「やーだー」
「うふふ、すっかり仲良しさんね」
ん? チャリーンちゃんが近付いて……
うおっ!?
「ふふふ、私も……」
チャリーンちゃんが前から抱きついてーーー!?
すごい、おっぱいがすっごい!
美女と美少女のサンドイッチ!
俺は幸せサンドイッチの具材!
あっ、ヤバい、俺のエクスカリバーがエクスカリバーしてる!
「ペネトレーションワープ!」
「あっ」
「ああん……」
ふう……危なかった。朝っぱらから野外でとんでもないことをおっぱじめるところだった。
「そ、そ、そ」
「そ?」
「そろそろダンジョン探索いかないとなー、ハハハ!」
「……」
「……」
アルカとチャリーンちゃんの視線が痛い。
「カズヒト、それはちょっと」
「ひどいわねー」
「うっ、ほ、ほら、あれだよ。そう、ダンジョンで稼いで家を買おうと思ってさ! 3人で一緒に住めるように!」
「い、」
「家……」
アルカもチャリーンちゃんもうっとりした顔をしている。
よし、なんとか乗り切ったぞ!
後は嘘から出たまことでそのままダンジョン探索に行こう。
「さて、じゃあアルカ、今週もダンジョン探索にいくぞ!」
「うん」
「待ってカズヒト」
「ん? どしたのチャリーンちゃん」
「私も一緒に行くわ」
「えっ!? チャリーンちゃん、ギルドの受付嬢は!?」
「もう退職届を出してあるの」
「ほえーーー!?」
「ちょっと前から内緒で同僚のエンティアって子に引き継ぎを進めてたのよね。だから今の私は無職ってわけ。パーティーに入れてくれないとね」
「ま、ま、ま、マジ?」
「ええ……だって……アルカちゃんと2人っきりでずっとダンジョン探索してるの……うらやましかったんだもの……ガマンできなくなっちゃった……だめ?」
ほんのり赤らめた顔、上目遣いで俺を見つめるチャリーンちゃん。
そんな顔されて断れる男などこの世にいるだろうか? いや、いない。
「もちろんオッケーだよ! HAHAHA」
二つ返事でオッケーする俺。
「やった、ありがと、カズヒト」
ぎゅむっと胸を押し付けてくるチャリーンちゃんをやんわりと剥がす。
「あん……」
「でもアルカにも聞いておかないとな。アルカもそれで問題ないか?」
「うん。それもチャリーンさんと既に打ち合わせ済。オッケーならとっくに出てる」
「ああ……そうなのね」
俺に関わることは大体なんかもう俺がいないところでおわってるこの感じ悔し……いや、悪くないな?
「あー……えーっと、そっか。とりあえずじゃあパーティー申請をしにギルドへ……」
「元ギルド職員だったのよ? もう手続きは終わってるわ」
「ほんと手際いいのな……。うん、よろしくね、チャリーンちゃん」
「よろしくね」
「うふふ、よろしくお願いするわね」
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パーティー名 竜王のお膝元
パーティーメンバー
カズヒト Sランク冒険者
アルカ Sランク冒険者
チャリーン Aランク冒険者 ←NEW!
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「さて、と。パーティーが3人になったし、早速ダンジョンに、って思うんだけど、チャリーンちゃんって元冒険者だったんだよね? 元々職業ってなんだったの?」
「魔穹弓術士よ」
「まきゅうきゅうじゅつし? 聞いたことないけどそれって……」
「ええ。ユニークよ。魔法で作り出した弓と矢で敵を倒すのがメインね。連射とかもできるわよ」
「便利そうだなぁ。あ、レベルは?」
「152よ。カズヒトとアルカちゃんに比べたら低いと思うけど、これでも下層の敵をソロで倒せるくらいの実力はあるわよ」
「なるほど……とりあえずチャリーンちゃんのブランクを確認して、レベリングといきますか」
「ええ」
「うん、いく」
両手にアルカとチャリーンちゃんを掴み、
「ペネトレーションワープ」
いざ、23階層へ移動する。




