vs ブル・・③
「さぁさぁ! 間もなく締め切りだよ!」
「よーし、1回目の賭けを帳消しにするくらい賭けてやったぜ!」
「俺は300万!」
「すくねぇすくねぇ! 俺は1000万だぜ」
「バッツ……お前そんなにカネ持ってやがったのか……」
「おめーらもいっぱい貰ってんだろうがよ。何に使ってんだ?」
「そりゃおめー……酒と女とカジノよ。ここらでいっちょドカンと勝たないとな」
「はっ、負けるやつのセリフじゃねぇか」
「言ってろ」
デカイ声で喋るやつが多いが、あそこのやつらさらにうるせぇな。聞きたくもねぇ会話がガンガン聞こえてくる。
数分ほど経過しただろうか。
「はい! 現時刻をもって締め切りとしまーす! オッズはこちら!」
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①0~2分00秒でダウン
→2.4倍
②2分01秒~4分00秒でダウン
→1.8倍
③4分01秒~6分00秒でダウン
→3.7倍
④6分01秒~8分00秒でダウン
→6.5倍
⑤8分01秒~09分59秒でダウン
→7.7倍
⑥10分間耐えきる
→45.2倍
⑦反撃して反則負け
→24.8倍
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おいおい、耐えきるが45倍オーバーかよ。賭けさせてくれねぇかなほんとに?
まぁ賭けたところで支払いがあるとは思えないけどな。
にしても……ちょっとS級冒険者なめられ過ぎじゃないか?
さすがに魔術メインとは言ってもさすがに2分以内に倒れると思われてるのは心外なんだが……
……うん。色々考えてたらちょっと冷静になってきたな。
チャリーンちゃんが心配そうな瞳で見つめてくるのがツラい。あんな顔させてるのが俺だと思うと心が痛む。
あとちょっとの辛抱だ。耐えてくれチャリーンちゃん……
「さぁカット! さっさとそっちの線の中に入りやがれ!」
ほんとブルは偉そうで腹が立つな。なんなんだコイツは?
「ふっ……大勢お仲間がいて気が大きくなってて滑稽だなブル?」
「…………やっちまえ」
怒りで顔をブルブル震わせているブルが合図をすると、俺への攻撃が始まった。
「おらぁぁぁあ」
「いけいけ!」
「ちゃんと攻撃しろよ! 4分以内に倒れないと賭けに負けちまうだろ!」
「しっかり耐えろよ! 倒れたらぶっ殺すぞ!」
口々に好き勝手言ってる声が聞こえる。
俺はというと。
「ガハッ! ぐぁぁあああああああ!」
と声を上げていた。
「カズヒト! カズヒト! なんでそんな……」
「ああああああ!」
と、叫んではいるものの……。
え!? 何コイツら? ビックリするほど弱いんだが……嘘だろ? 本気か?
HP体感1%くらいしか減ってないぞ……10人もいてこれ?
10分どころか1時間でも2時間でもいけそ……うおっと!?
今度はファイアー系とかアイス系の魔法まで飛んできた。
「あっっつ! いだっ!」
いや、せめてどっちかにしろや! なんで熱くなったり冷たくなったりしないといけないのか。
しかし……弱いな……なんだこの魔法は?
ヤバいレベルの手練れがいるかもしれないとか考えてたけど、そんなもんいないのか?
いや、まだ油断はできん……
2分……4分……6分と、時間が経つ毎に攻撃が苛烈になっていっている。のだろう。たぶん。
相変わらず俺のHPは体感で……今で5%くらいは減ったか?
フル鑑定使えないから詳細がわからなくて不便だな。
「おおい! もっと攻撃強めろよ!」
「手を抜いてんじゃねぇぞ!」
等、最後まで耐える、に賭けなかったであろうやつの罵声が飛ぶ。
「おらぁ! ここまできたら最後まで起きとけや!」
「いいぞ! もうちょっとだ! 耐えろ!」
って声も聞こえてくるが、いや、お前らどっちの味方なんだよ……とツッコミたくて仕方ない。
……
…………
10…………
6…………
3……
2……
1……
「終了だぁぁぁああ!」
満身創痍なフリをして、なんとか立ち上がる俺。
「死ねやぁぁぁ」 「何耐えてんだよカス!」
「よっしゃあああ! 大穴取ったぁぁ」
など、悲喜こもごもな有り様である。
「やけにしぶといじゃねぇかカットォ! まさか最後まで耐えるとはな」
「案外しぶといんだよ俺は」
「はっ! つまんねぇなぁおい」
「さぁブル、約束通り解放してもらおうか!」
「しゃぁねぇなぁ…………」
ビリィィッ! っと、布が裂ける音がする。
音の出どころを見ると、チャリーンちゃんの服の前が破られており、ライトグリーンのブラが露になっていた。




