アッツアツ・・?
「やったー!」
まずは手早くコの字型のカマドを作る。
そこに、落ちないように網を乗せ、その上に金属製の深めの皿を乗せる。2つ乗せる。
それぞれ、さっき採れたての超オリーブオイルをなみなみと注ぐと、まずはフェノメクションで火を付ける。
温まりきる前に、鍋の中に塩と潰した赤トゥーガラシ、薄切りのガルリックを加える。
「わぁ、なんかいい匂い!」
「ふふ、そうだろうそうだろう、もうすぐだぞ」
「わくわく」
ふつふつと油が熱されたら、たっぷりのシューリンプ、マシュールーム、ブロッコルリを入れる。
後は火が通れば……完成だ!
「出来たぞ! アヒージョアだ!」
「うわぁぁあ、美味しそう! こんなの見たことない!」
「さぁさ、熱いうちに召し上がれ。但し、熱すぎるからふーふーしながら食べ」
「あっっづ!」
「遅かったか……」
「でもこれちょー美味しい! さっきの球の油なんだよね?」
「そうだぞぉー。じゃあ俺も……ふーー……ふー……ほふっあっち……うほぁぁ、うんまい!」
夢中になって食べ進めると、あっという間になくなる。
「なくなっちゃった……」
寂しそうなアルカ。だが……
「アルカ」
「んー?」
「これからが本番なんだぞ」
「次は何を作ってくれるの?」
「おいおい、まだ残ってるじゃないか HAHAHA」
「残ってるって……油しかないように見えるよ?」
ふふふ……そうだな。だがこれは……
すかさず収納袋から麦パンを取り出し、
ナイフを使って薄くスライスしたものをどんどん用意する。
これを、カマドの空いたスペースに乗せて、さっと炙ると、表面はカリッ、中はほんのりもちっとしたふたつの食感が楽しめるのだが。
「いいかアルカ、これをこうするんだ」
アヒージョアの残り油に、炙ったばかりの麦パンをヒタヒタとつけて食べる!
カリッ
と音がして、そのままジャクッときて、ジュワッとアヒージョアのうまみたっぷりの油が口の中であふれる。
「うんまぁーーー」
「あ、アルカも! アルカも!」
待ちきれない様子のアルカに、薄切りパンがたくさん入った木カゴを渡す。
「さっと炙って……つけて……」
カリリと音を立てながらパンを頬張るアルカ。
「ほいひぃーーー!」
「ふふふ、そうだろうそうだろう」
「あふっ はふっ 残った油なのになんでこんなに美味しいの?」
「やっぱいい油だったからね。ダンジョンでこんなに良質の油に出会えると思ってなかったよ。ダンジョン産の食材と言えば大体肉か果物、野菜が大半だからね。油とは盲点だったなぁ……」
とは言え、87階層なんてこれるやつはまずいないだろうし、仮にこれたとしても、こんなとこまで料理しないだろうし。
まぁそもそも油持って帰るかー! みたいな発想になんないよなぁ。
……
…………
「ふぅ……今日も食べた食べた」
「おなかいっぱーい」
「そうだなぁ。さ、いっぱい食べたことだし、お風呂タイムといきますか」
「わぁーい」
チャリーンちゃんへの誤解事件(?)が発生した後も、俺とアルカの泊まりがけダンジョン探索は続いた。
当然毎日お風呂には入りたい。
入りたいのだが、やはりチャリーンちゃんと付き合い始めた以上、いくらドラゴンとは言え、幼女と二人っきりでお風呂に入るのはまずい。
というか、チャリーンちゃんと付き合っていない時だろうが絵面は完全に騎士団案件。
すぐに牢屋にぶちこまれてしまってもおかしくない。
そこで俺はきちんと考えたのだ……この広いダンジョン。
敵を倒したらすぐに湧いてこない、いわゆる安全スポットもそれなりの広さがある。
ならば? 2人分の浴槽を作ってしまえばいいじゃないかと。
「準備するからちょっと待ってて、アルカ」
「あーい」
さて、収納袋に入ってるお風呂、浴槽を取り出す。2つね。
以前作っておいた物に加えて、最近新たに作ったので、今じゃでっかい浴槽が2つも収納袋に入ってる。
何回も思うんだが、このサイズの物体がなんで出し入れできるのか不思議でしょうがない。
なぜ破れないのだろうか……?
……ま、考えないようにしよう。
当然シャワーも必要なのだが、これも各自必要なので2つ。
そして、一番大切なのがこれ、ついたてである。
着替えるにしても湯船に浸かるにしても、これがあればへっちゃらだぜ。
ここが苦労したところなんだが、フェノメクションを駆使して、過去に見た景色を金属板に投影することに成功したのだ。
これを……
山↓_↓海
┏━┳━┓
┣①┃②┫
┗━┻━┛
こんな感じで複数の板で囲むことで、ダンジョンにいながらにして、浴槽①②からそれぞれ別の景色を眺めながらお風呂を楽しむことができるのだ。
……
…………
「はぁー……今日も気持ちいいな、アルカ」
「うん……海の景色が見れるのもいいね!」
「こっちは山と川だ。こっちもなかなか……ふはぁ」
あぁー……ダンジョンって最高だなぁ……




