一方その頃・・SIDE 欲望の坩堝①
━━━━カズヒトが疲労による爆睡を決め込んでいた頃
「それじゃ、クソカットの追放を祝して━━乾杯!」
「かんぱーーーい!」
「乾杯ですわ!」
リーダーのブルの乾杯の音頭に、パーティーメンバーのサキとデルティアは応じる。
ここはギルド併設の酒場。
カズヒトはあまり好きではないのであまり近付かない場所であるが、欲望の坩堝の面々は誰もが好んで利用していたため、今日も当然のように訪れていた。
「いやー……長かったな……」
「ほんとよね!」
「ええ……」
3人揃ってしみじみとした空気となっている。
「アイツがいたせいでマジで俺達生きた屍になってたよな」
「奴隷と言っても過言ではないわね」
「ですわねー……」
「なんで俺らが稼いだ金を自由に使えねぇんだっつうの!まだまだこんなにあんのによ?溜め込むだけ貯めて使わなかったらなんの意味もねぇだろうが」
「しかもアイツろくにダンジョンで役に立ってなかったじゃない!あたしたちがコツコツ敵を倒してる間にせっせと魔石やアイテムを嬉々として回収したり」
「後は食事も作ってましたわね。」
「まぁメシはまぁまぁだったけどよ……ほとんど野菜じゃねぇか?」
「貧乏ったらしくて嫌だったわね! 味はそこそこだったのが余計腹が立ったわ!」
本人がいないのをいいことに、口々に理不尽なことを口走る。
会話の合間に高級エールを口にする3人。テーブルの上には今まで見たこともないような豪華な料理が並んでいた。
表面は香ばしく焼いてあるが、断面が生であることを示す真っ赤なお肉。基本的にこの街で提供される肉類はダンジョン産のものが多い。
生に近い状態で食べると、尋常じゃないくらい腹を壊すのだが、新鮮な物となると話は別だ。
ダンジョンで倒してすぐの肉を素早く高級な収納袋に保管して運ぶことで、新鮮なまま食べることができるが、その難易度と労力のため、当然お高い。
(魔物であることが多いが、なんと、どれも大半が食用可能!しかも味もよいものが多い。)
「うっめー……肉汁が口からこぼれでちまうぜ!」
キラキラした宝石のような小ぶりの卵。透明なガラスに7つほど盛られているそれらも、もちろんダンジョン産の一級品。
「なぁにこれ? プリプリしてるのに弾力もあって、でも口の中で弾けたと思ったらなくなっちゃった……濃厚な旨味がたまらないわね……」
サキは気付いていないが、今の1口はなんと約4000ドゥルルである。
「これも美味しいですわ……」
甘党のデルティアは、食事もそこそこに、早くもデザートに手をつけている。
「とろけますわぁ~~」
ココヤーシの実からふんだんに取れるミルク状の液体に、ゼルイースの実を加工して作られた少々酸味のあるゼリィをスプーンで掬って食す。もう言うまでもないが当然お高い。
「んじゃま、そろそろやるか!?」




