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海の家・・

「そろそろお腹空いてきたなぁ。チャリーンちゃんは?」


「私もお腹すいたわぁ~ 浜辺に戻りましょうか?」


「そうだね……おっと、そうだ! フェノメクション」


 デートプランを思い出し、フェノメクションで2人乗りのボートを生み出す。


「へぇ、ボートね? こんなのも出せるのねぇ~」


「まぁね。チャリーンちゃんどっちがいい? 前? 後ろ?」


「せっかくだし、前に乗ってみようかしら」


「おっけー!」


 海にボートを浮かべ、2人で慎重に乗り込む。


「いくよー」


「いいわよー」


「お? お?」


「ん、けっこう難しいわね」


 うまく直進できず、微妙に右回転しながらくるくると回転する。


「あははははは、回転し始めた」


「うふふ、変な感じねー? バランスを……っと」


 2人して試行錯誤すると、ようやくボートがまっすぐ浜辺に向かい始める。


「おお、なんかうまくいくと楽しいね」


「風が気持ちいいわ~」


 おお、ボートを漕ぐのに夢中で全然気付いてなかったが、後ろからだとチャリーンちゃんのうなじが見えるな。

 普段は綺麗な金髪のロングヘアで隠れてるけど、今日はポニーテールにしてるからうなじがしっかり見える。うなじまで素敵だなんて、チャリーンちゃんに隙が無さすぎてヤバいぜ。



「さ、着いたわ」


「おっと」


 チャリーンちゃんのうなじを注視してたらあっという間に浜辺に着いてしまった。


「もう着いたか、やっぱ泳ぎと違ってボートだと早いね。フェノメクション」


 すかさずボートを消滅させる。運ぶのもめんどうだしね。


「じゃ、行きますか」


「そうねぇ……でも海の家たくさんあるわよ? どのお店がいいのかしら……」


「うーーん……確かに迷うくらい多いね。なんか名物みたいなものがあればいいんだけど」


「色々推してる物が店によって違うわねぇ」


 くっ、しまった……海の家のチョイスに迷うとは! あらかじめ下見をしておけばよかったぜ……不覚!


「あ、カズヒト、見てあれ!」


「ん? 何々? うっわ!? なんだあれ」


 焼きそばを焼いている人がおり、非常に芳ばしいソースの香りが漂ってくる……のだが、気になるところはそれじゃない。


「や、焼きそばが空を飛んでいる!」


「す、すごいわね」


 熟練の職人さんだろうか?


 おっちゃんがコテを巧みに操り、具材投入→炒め→麺投入→ソース投入を流れるように行い、さらに、ふわりと宙に舞わせながら焼きそばを均等に混ぜている。


「ね、ねぇ」


「ああ」


「あそこにし「よう」ましょう」


 満場一致であの海の家に決定!


 看板を見ると、


「海の家 イェイイェイイエ」


 と書いてある。


 ん? ……どっかで見たことあるような名前だな? どこだったか……うーん、忘れてしまった。

 まぁいつか思い出すだろ。


「人、すごいね」


「人気ありそうだものねぇ~ のんびり並びましょう」


 パッと見、30人くらいは並んでいる。海の家だから回転率は早いはずなのにこんなに並ぶなんて、すごいな。


「具材も色々選べるみたいだよ」


「へぇ……豚、海鮮、変わり種でニワドルなんかもあるのねぇ」


「どれにしよっかな……俺はやっぱ海鮮かなあ」


「私も。やっぱ海の近くだし、海鮮が食べたいわよね」


「後は飲み物……はやっぱり」


「超生エールよね」


「だね。まだ泳ぐし?1杯だけにしとこっか」


「そうね」


「あ、ホタホタ貝串ってのもいいね」


「いいわねぇ 色々買って半分ずつ食べましょ」


「いいね! お、半分くらい進んだかな」


 列が少しずつ進んでいく。

 いつもは待つのに苦痛な行列だが、焼きそばのパフォーマンスも楽しいし、何よりチャリーンちゃんが横にいるからずっと楽しい。


「よう、そこのにいちゃん」


 デートを満喫してるなぁ……


「おい! 聞いてんのか?」


 チャリーンちゃんと海の家で食事……あーんとかしちゃおうかな


「てめぇ無視してんじゃねぇぞ!」


「はい?」


 あ、俺に話し掛けてたのか。なんだ? 3人組の男が話し掛けてきている。これはもしかすると……?

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