しばしの休暇・・②
「あ、カズヒト~ 見てたわよ?」
「やぁ、チャリーンちゃん、久しぶり。見てたって?」
「冒険者に絡まれてて撃退してたじゃないの」
「あ、やっぱ見えてた?」
「あんだけ近くでワイワイやってたらね~」
「はは…… まぁ最後はアルカの握力で解決したんだけどね」
えへん、と胸を張るアルカ。
「あの人、知らなかったとはいえ、Sランク2人にケンカ売るなんて、おバカさんねぇ~」
「まぁ、パッと見だとね。アルカは見た目幼女だし、俺もそんな強そうに見えないだろうし」
「そんなこと……あらぁ? 気のせいかしら? なんだかカズヒトの肌キレイじゃない?」
(おおっと!?)
「そ、そうかな? 最近新鮮な魚とか食べてるからかな~? あ、これ今回の魔石ね」
「ん~? って量多いわね!」
「けっこうダンジョン潜ってたからなぁ」
「アルカちゃんも一緒だったんでしょ? 大変じゃなかった?」
「ま、そこはほら、ね。」
「カズヒトと一緒のダンジョン楽しかったー」
「へぇ~ よかったわねぇ」
「カズヒトの作るご飯おいしい!」
やっぱ褒められると嬉しいね!
「あら、私も食べてみたいわねぇ~」
「今度作ってあげるよ!」
「うふふ、楽しみにしてるわぁ」
「あとね、カズヒトとお風呂にも入った!」
あれ? 俺なんかまた新しい魔術覚えちゃった?
時が止まってるように見えるんだけど?
「カズヒトー?」
「あ、動いた」
「アルカ、飴食べるかい?」
「うん!」
嬉しそうに飴を舐めている。うんうん。やっぱ飴が好きなんだなぁアルカは。ハハハ。
「カズヒト」
「やっぱ小さい子って飴好きだよね? チャリーンちゃん」
「カズヒト」
さっきより多きな声で俺を呼ぶ声がする。
なぜだろう。チャリーンちゃんのほうを見ることができない。
アルカは……飴を舐めてご機嫌だな。
ってあれ? なんか今日のギルド、人少なくね?
ってか人いなくね?
まぁ、時期によって人の量も全然違うし、あ、そうか。
この時間はみんなダンジョンに行ってるんだろうな。
「やっぱみんなダンジョンにいってんだねチャリーンちゃ……ひぃっ!?」
チャリーンちゃんに話しかけながら後ろを振り返ると……
鬼神が降臨していた。
「カズヒト、誰と、何をしたって?」
「あばばぶぁばばばごごふぉ」
チャリーンちゃんってサキュバス族だよな?
鬼神族だっけ? 鬼神族とかあるのか?
「カズヒト」
ひぇっ! 名前を呼ぶ圧がすごい!
焦るなカズヒト、冷静になれ、ここで選択を誤ると終わる。
「ち、ちち違うんですよね。まずはちょっとチャリーンちゃんに落ち着いて頂いて……」
「私ならずっと落ち着いてるけど?」
あああああああ
なんかいつものチャリーンちゃんじゃない!
けどぉ~? みたいな伸ばす感じじゃなくなってるうううう
「あ、いや、そのお風呂ね。ダンジョンの素材で、ダンジョン内にお風呂作ったんだよ! オシャレでしょ? 泊まりの探索で身体がヨゴレているし、やっぱ2人ともお風呂入りたいなってなるじゃない? お風呂作って入った、それだけ!」
めっちゃ早口で一息に喋る。
「でも一緒に入ったんでしょ?」
「もちろん2人共水着は着てたよ!?」
「アルカ、裸になったよ?」
「アアアアアアアアアルカさぁぁぁぁあん!」
なんで間はしょっちゃうのおおお!?
「カズヒト?」
チャリーンちゃんが人を殺しそうな目をしている。
「ち、違くてね、アルカが裸で入ろうとしてね? さすがにまずいって思って水着渡したの! ほんとよ!?」
焦って口調なんかおかしくなった……
「ほんとなの? アルカちゃん」
「ほんとだってぇぇ……」
「カズヒトは黙ってて」
「ハイ」
うう……
「ほんとだよー。水着渡されたー」
「そう……本当なのね?」
「うんー」
ほっ……なんとかなり
「でも裸も見られたよ」
「ああああああああああああああどうしてえええええええ」
「カズヒト」
「う、後ろ、後ろしか、背中だけだって」
「お尻もだったと思うよ」
「……」
無言で近付くチャリーンちゃん。
その後、必死の説明で誤解を解くカズヒトであった……。
……
…………
「そう、ほんとに水着で一緒にお風呂入っただけなのねぇ~」
「だから最初からそう言ってるじゃない……」
「ふぅん?」
「イイエ、ナンデモナイデス」
「そう」
「俺はチャリーンちゃん一筋だし……」
「!?」
バッとうつむくチャリーンちゃん。
「それじゃ、またくるよ」
「ばはーい」
「え、ええ またのお越しをお待ちしております」
(もう……ずるいんだから)
しばらく顔の赤みが引かないチャリーンであった。




