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チャリーン・フォーリンティーラ・・③

 冒険者ギルド センリョウマンリョウ


 その受付嬢であるチャリーン・フォーリンティーラ


 その内面の、奥手で内気な性格を隠すように、

 サキュバスっぽさ全開の仮面を被り、今日も元気に仕事に励む。


 ━━━━━━


「またのお越しをお待ちしておりますぅ~」


 ふぅ……


 今日はまた一段と人が多いわねー。いつ波が途切れるのかしら。


 ……今日もカズヒトさんは来てくれるかなぁ。


 妖艶なサキュバスをイメージして接客を行う傍ら、カズヒトのことを考えている乙女なチャリーン。


「エンティアさん、お先にお昼頂いてきますねー」


 同僚のドワーフの女性に声を掛ける。


「はいよー」


 自分の受付カウンターに 「別のカウンターへ並んでください」 の札を立てて、食事へと向かう。


 休憩所へ向かい、弁当を取り出す。


「いただきまーす」


 チャリーンの本日のメニューは……


 ・一口サイズのサンドイッチ

 ・ニワドル肉のミートボール

 ・ふんわりと仕上げたオムレッツ

 ・トゥメイトゥのレモーニ漬け


 全てチャリーンの手作りである。


「うん、今日も美味しくできてる……ふぅ……カズヒトさんにも食べさせてあげたいなぁ……」


「カズヒトさんがなんだって?」


「ひゃっ! エンティアさん……まだ仕事残ってたんじゃ……」


「チャリーンと一緒に食べようと思って急いで片してきたんだよ! それより……へぇー? ほぉー? やっぱりこないだの冒険者と……そういう関係だったんじゃーん」


「ち、違いますよ……私とカズヒトさんはまだそんなんじゃ……」


「まだ、ねぇ」


「! もう……早く食べちゃわないとお昼休みなくなっちゃいますよ!」


「はいはい」


 顔を赤らめながらパクパク食べ始めるチャリーン。


「今日も来るといいね? カズヒトさん?」


「ゴホッ! ゴホッ! いくらエンティアさんでも怒りますよ!?」


「ゴメンね!」


 片目でウィンクしながら返す。


「むぅー……」



 ……


 …………


 お昼休みも終わり、また仕事に戻る。


(今日も人多いなぁ……あ、)


「はぁい、次のお方……カズヒトじゃな……い?」


(カズヒトさんと……誰だろう? 見たことない女の子と一緒にいるけど……)


「や、やぁチャリーンちゃん」


「その子、だぁれ? カズヒトの子じゃないわよねぇ~?」


 カズヒトさんにそんな顔向けたくないけれど、思わず険しい顔になっているのを自覚する。


「あーー……えっとね、話すと長いんだけどね。30階層まで行って、


(30階層!? カズヒトさん最下層到達したの? とてもすご)


「アルカね……初めてだったのに……このお兄さんに……」


(え……?)


「アルカさん!?」


「…………」


「私……嫌だったのに……延々見せられて……」


「カズヒトが……いきなり入ってきて……」


「万全の状態だ! って……」


「私……すごく痛くて……」


「カズヒト? こんな幼い女の子に?」


 私の冒険者時代の本能が甦る。


「ち、違うよ!? いや違くないんだけどさ!」


「ちょっと待って、やめてって言いたかったのに無理やり……執拗に何度も何度も何度も……グスッ」


 目の前の女の子……アルカちゃんという名前らしいが、涙を流し始めた。


「アルカさん!? いやアルカ様!? ちゃんと説明してって言ったよね? お願いだから説明してぇぇえええ」


 アルカちゃんの肩を揺さぶりながら呼吸が浅く荒くなっていくカズヒトを見て。


「カズヒト」


 彼の名を呼ぶ。


「はひい!」


 …………


「あ、あの、釈明の機会を与えて頂けないでしょうか。」


「事務所」


 そして、事務所へと案内する。


 彼を殺して、私も死のう……









 いや? ……冷静になってみると、カズヒトさんが女の子を無理やり、なんてのは考えにくい。

 ギルドに来た時も私のむ、胸をしょっちゅうチラチラ見てるし……べ、別に嫌じゃないけど……あと、腕を抱いた時だって慌ててたし、こないだキスした時だって……!!


 顔が赤くなりそうになり、慌てて真顔を作る。そうだ、ハゲマスだ。ハゲマスへ殺意を向けて表情を作ればいいんだ!


 ふぅ……よし。


 それで、やっぱカズヒトさんがあの女の子……アルカちゃん? に何かしたのは間違いはないんだろうけど、きっと私が思ってるようなことではないはず。


 たぶん、私と一緒で、彼も異性とそういう経験をしたことはないはずだから……。


 とりあえず、30階層に到達したって聞いたし、ハゲマスのところへ2人を連れていきましょう。


 信じてるよ……カズヒト。

※ハゲマス

ギルドマスターの事です。ハゲてるので皆から裏ではそう呼ばれてます。

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