第7話
「おらっさっさと食え、役立たずにかける時間なんかねえんだよっ」
なぜ、こんなことになってるんだろう。
天宮寺に鑑定されて茫然している間に相良に連れてこられた場所は中庭だった。いつもなら昼休みに多くの学生で賑わい、仲良く昼食を食べる場所だったはずだ。
しかし、場所の中央にある檻のせいで異様な光景に様変わりしていた。なぜこんなものがと思わずにはいられなかった。
(あぁ、これも"スキル"か、)
そう思うと諦めがついた。目の前の檻と状況を見るとこれから何をされるかは簡単に予想ができた。きっとスキルの存在を知る前なら抵抗しようと思っただろう。だが抵抗してもどうもならないと悟ってしまった。
檻に鍵を閉める音がする。
「じゃあな、お前にはお前の役割があるらしいぜ。せいぜい存在だけでも役に立つんだな」
ここまで連れてきた相良が要領を得ないことを呟く。だが俺はすぐにその意味を知ることとなった。
◇◇◇◇
"見せしめ"
そんな言葉が今の俺にはぴったりだろう。
「なんでお前みたいな無能が生きているんだ。あいつの代わりにお前が死ねば良かったんだ」
「お前に生きてる価値はねえ」
「最弱スキルごときが俺たちと同じ飯を食えると思うな」
「あなたは私たちと違うんです。言葉を喋るな、家畜風情が」
俺が何をしたんだ
俺はただスキルが弱かっただけじゃないか
ーーーあぁ、、、スキルが弱いからこんなところにいるのか
涙が頬を伝って落ちるのが他人事のように感じた。
ここまで命がけで辿り着いてこの結果。
支離滅裂な言葉でさえ、心の深いところに傷をつける。
(これが、、俺の役割か、、)
そう理解するのに大した時間はかからなかった。
◇◇◇◇
ここに入ってからどれぐらい経ったのだろうか。最後に口にしたものはなんだったろう。
どうでもいい、もうなんでもいい。食べることも、寝ることも、生きることももうなんでもいい。
傷つくことなんかない。傷つくことすらできなくなっていた。
「ねえ、あなたの母親はどんな人だった?」
やめろ、それだけは許さない
鈴の音を鳴らしたような綺麗な声が聞こえた。だがそんなことはどうでもいい。こいつは一番触れてほしくないところにふれようとしている。
「黙れ」
自分でも驚くくらい憎しみが込もった声が出た。
目線で殺せやしないかと考えながら薄っすらと目を開けた。
ーーー 満月の夜だった ーーー
空に満月が浮かんで、その下にこの世とは思えないほど綺麗な容姿の少女が佇んでいた。
満月の光を反射する銀髪を揺らして少女は笑った。