表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/11

第2話

「ーーーてる、----ーて」


 ふわふわとした頭で目の前で女性が何かを訴えている。何を伝えたいのかはわからない。


 ーーザザーーザッーーー


 ノイズが混じってよく聞こえないのに、その言葉を渇望している自分がいる。何か足りないようなもどかしい気持ちに決着をつけたい、そんな感情だった。

 焦燥感に駆られ、少しでも近づこうと手を伸ばす、、



 目が覚めた。

 頬につたう涙に戸惑う。夢の影響かと思い、思い出そうとするが思い出せない。寂しく残った焦燥感を忘れるようにベッドから出る。


 ふと南鳥島でなにが起こったか思い出し、慌ててスマホの電源を付けた。


「緊急事態宣言が発令されています。国民の皆様はただちに近くの避難所に移動してください。繰り返します。緊急事態宣言が発令されています。国民の皆様はただちに近くの避難所に移動してください。」


 大音量のアラームが鳴る。スマホが言うには今僕はとても危険な状態にあるようだ。だが、何が危険か分からないと行動できない。まずは情報収集が必要だ。迷わずスマホに打ち込もうとして何を調べればいいか分からないことに気づく。


「すーはー、落ち着け、、おれ」


 あえて独り言をして心を静める。

 落ち着いて調べようとしたはずの内容をスマホに打ち込む。


 [太平洋 新大陸]


 半信半疑で調べると驚きの結果が返ってきた。



『≪太平洋に未確認の新大陸発見!!?≫

 2020年4月15日大量の海水の存在する太平洋の大部分が巨大な大陸によって失われた。また日本に直接面しているわけではないが、大西洋にも新たな大陸が確認されている。現在主にアメリカ、中国、ヨーロッパ諸国などの国々が調査を開始しているが、調査は難航している。4月15日に起こった謎の大規模通信障害によって人工衛星の行方が分からなくなったことが原因ではないかと考えられる。また、一部関係者によるとアメリカ空軍の調査隊が連絡が途絶え未帰還であることも未開の大陸に関心が寄せられている理由の一つでもある。

 この謎の大陸が最近頻発している、世界を揺るがす大事件の中心にあることは間違いない。』



(俺が見た大陸は存在したのか?ならなんであの時あいつらは見えなかったんだ?あえて嘘をつくのは意味がないし、無理だろう)


 記事を見ると疑問が溢れてくる。が、興奮していることを自覚し冷静になる。今しなければならないことはなにか、必要な情報はなにかを考え意識を画面に戻す。

 今見ている画面の下の方に≪4.15衝撃の大事件 生物が次のステージに?≫のようなチープな記事名が載っている。迷わず表示されているリンクに飛ぶ。

 画面画面内が更新されると同時にある動画が再生される。


「fire ball」

「ピギイィィッ」


「う、嘘だろ、、」


 画面に映された映像は人類が積み上げてきた物理法則を覆すものだった。

 おそらく欧米系の青年と前歯が鋭く発達したネズミが対峙していた。ネズミの歯があのように伸びることはないはずなのに、などと考えていると衝撃の映像が流れていた。

 青年が片手を前にかざし、英語である言葉を呟く。すると青年の30cm手前に直径20cm程の炎の玉が生まれ、真っすぐネズミの方へ飛んでいく。ネズミはなすすべなく炎の玉にぶつかり、その身を焼き絶命した。


 冷静になるとこんなものCGか何かでどこかの大学生が遊びで作ったものだろう。中二病が治らなかったら将来こんなことを続けてしまうんだ、気をつけようと目を背けようとした。

 だが、それではこれだけの記事になっている説明がつかない。

 微かな興奮を覚えながら記事を読み進める。



『以上の動画を見てもらうとわかると思うが、4月15日に起きた異変は動物だけではなく人類にも大きな影響を及ぼした。通信障害が起きた日から異変が起きたことから、特有の電波が生物に干渉したという説が主流となっている。

 生物学の専門家によると突然変異を起こした生物はまだ一部だが、これからほぼ全ての生物が突然変異を起こすだろうとの見解を示している。そして、この影響は我々人類にも影響を及ぼした。

 これを読んでいるあなたも気づいているとは思うが人類には総じて同じ能力を得たようだ。

 今回感知された未知の物質を以後魔素と呼ぶ。≪体内に存在する魔素に干渉する能力》、この体内に存在する魔素を操作すると身の回りにある魔素が反応し連動する。これを利用することで人類は手も触れずに実物に干渉する術を得た。

 しかし、この能力を発現しただけでは先程の青年が使った≪魔法≫は使えない。あれは特殊能力らしく、発現したものにしか使えないらしい。らしいというのは私自身も扱えないからだ。本人によると普段から魔法を使ってみたいと強く願っていたそうだ。事実特殊能力の発現は若者に多いらしく発現条件からはあながち離れていないのではないかと考えている。』



「、、ははっ、まじか、」


 思わず口角が上がってしまう。高校3年生とはいえまだ子供。一度でいいから魔法を使ってみたいという欲求は消えてはいなかった。

 動画の中で青年がやっていた様に片手を前に突き出す。


「ファイアーボール」

「・・・・・・・・」


『発現したものにしか使えない』、その言葉が体中に染み込んでいった。


(はぁ、そんな訳ないか)


 我に帰り、興奮していた頭が冷えていく。もし魔法が発動していたら、火事になっていたことにも今更気づいた。

 冷静になって起きてから感じ続けていた違和感に注意を向ける。魔素が体中を駆け巡る感覚は違和感でなく、前からあったように感じる。それ以外で違和感を感じていたのだ。

 見慣れたはずの自分の部屋にいるはずなのに、視界が違う。強いて言えばこれまで17年間見てきた目が別のものになってしまったとでも言うべきか。


 自分の体が確実に以前のものと変わっていることにある程度の拒絶反応を覚えるものの冷静に自己分析を始める。

 まず、大きな変化である目だ。鏡で見てみるが見た目に関しては変化はない。先程から気づいてはいたが変化しているのは視界だ。普段見ているものに加えて謎の光が見えている。空気中、冷蔵庫、電子レンジ、布団、そして自分の体など見えるもの全てが謎の光に包まれている。といっても視界を遮るわけでもなくいつも視界に一つ情報が加えられているっといった感覚だ。


 ふと気づく。見えている光は魔素なのではないか。当たり前のように体内の魔素を動かしてみる。体に循環している魔素を試しに指先に集めてみる。すると、指先が光に包まれているように見えた。

 やはり、この光は魔素の分布を示すようだ。自分の体に目を向けると周りとは比べものにならないほどの魔素があることが分かる。


 指先の周りに魔素が集まっていて離れるほど魔素の濃度が薄くなっていることが分かる。なんとなくだが指先の魔素に影響されている魔素は動かしたり集めたりできる感覚がある。

 試しに半径1mの魔素をぐるっと渦上に回してみた。すると魔素が動いた通りに風が起きた。


「これって風魔法じゃね?」








面白いと思った方は拡散してくれたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ