第1話
「まもなく南鳥島、南鳥島に到着致します」
アナウンスのせいで少々不快な睡眠から目を覚ます。今、俺が座っているエコノミークラスの座席はとても睡眠に適したものだとは思えない。
「さっきの放送の通りそろそろ準備しろよー、あと出発前にも散々注意したことを忘れるな」
気だるげな声の担任の指示に従い、机の上に置いていたペットボトルを片付け荷物をまとめる。機内では暑くて脱いでいたパーカーを着て身支度を済ませた。
南鳥島には一般人はおらず、島に住む人は軍関係者や限られた人のみだ。本来は俺たちのような高校生が来ていい場所ではなく、一般人は立ち入ることすらできない場所だ。
そんな島になぜ向かっているのか、一言でいうとお金に物を言わせた課外授業だ。うちの学校は私立高校だが、こんな事はたかが1私立高校にはできない。しかし、天宮寺高等学園の理事が日本有数の天宮寺財閥で相当な権力を持っていれば話は別だ。それにしても南鳥島への課外活動など頭がおかしいとしか言えないが…
「なんで高校3年の春にこんなところにこなきゃいけねーんだよ」
「別に観光地でもないとこに面白みもなにもないよね」
クラスの反応もこんな感じだ。行く人が行くと相当恵まれた状況とも言えるのだろうが、高校生如きがその価値を感じれるわけがない。さらに南鳥島に近づくにつれて目の奥をえぐる様な頭痛が強くなっていた。
(めんどくさい。。)
高校に通うのも3年目になるが、こうした課外活動は何度もあった。きっと今回もいつもと同じように退屈な時間を過ごすだけだろうと考えていた。ましてやこれが世界を変える運命の引き金になるだなんて、この時は思いもしなかった。
「以上で当施設の説明は終了となります。これから実際に施設の見学していただきますが、途中で南鳥島の最東端となる場所がございます。ぜひご覧ください」
この説明はこの中の何人が聞いていたのか疑問に思うが、最後の説明に少し興味をそそられた。
日本は最東端に位置する国だと言われてきた。地球は丸いが昔の人が見た世界の果てというものを見るのは感慨深いものがある。
そんな感傷に浸りながら職員の人の後に続く。
「こちらが日本最東端の地です」
(、、、??)
この職員はふざけてるのか、と思い周りを見渡す。三者三様な反応だが常識の範囲内の反応だ。
段々強くなる頭痛と共に背中に冷たい嫌な汗が流れる。
「先生、、、あれ見えますか?」
俺は痛みに耐えながら異常を指差し聞く。先生は怪訝な目を、周りにいる奴らは冷たい目線をこちらに向けてくる。俺は昔から人に見えないものが見えた。そのおかげで今のこんな状況が出来上がっている。
(あぁ、またか、、)
そんな失望と共に強烈な頭痛に襲われ、俺は意識を手放した。
日本の最東端に位置する南鳥島から東に見える太平洋、そこに浮かぶ巨大な大陸をその目に写しながら、、