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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
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98話 VSコルデューク【3】


 コルデュークに首を刎ねられるも、謎の黒い糸束が体と結合し再生したポロ。

 その糸はポロの全身に巡り、斬られた体をも縫い付け修復した。


「ポロ……ちゃん?」


 瞬時に復活したポロを、パルネは呆然と眺める。

 だがポロは目覚めた途端、普段彼が口にしないような言動でコルデュークを睨みつけるのである。


「わしの義弟に手を出した罪は重いぞ、小僧」


 突然の豹変ぶりに、コルデュークは理解が追い付かず。


 ――口調が変わった? いや、それよりも……なんで生きている? スキルを鑑定した時【自動復活オートリバイバル】は持っていなかったはず。


 次々と疑問が膨らんでゆく。


 ――鑑定不可のスキル欄にあったのか? だが謎なのは、復活してからさらにステータスが上昇していることだ。……これはなんのスキルなんだ?


 そう思い、コルデュークは再びポロに向けて鑑定スキルを発動すると。

 コルデュークだけに映るポロのステータス表記に、見慣れない文字が表示されていた。


 ――『魔人憑依中:女王蜘蛛(アラクネ)』? こいつ……まさか。


 コルデュークは戦う前に鑑定した際に表記された、『霊魂吸収』と『魔人融合』というスキルを思い出した。

 そして導き出されるは……。


「お前、犬ガキじゃねえな。そいつに魂を食われた魔物の思念だろ?」


 コルデュークはポロを指差し問う。


「魔物……か。貴様らからすればそうなのじゃろうな。無知な劣等種め」


 すると、ポロに憑依したアラクネは不機嫌な様子でコルデュークを睨む。


「貴様ら人族は元々、我ら魔人族から生まれた下位互換であるとも知らずに、我が物顔で世界を支配し、始祖である我らを魔物呼ばわりする……。無礼極まりない振る舞いぞ」


「あ~そういう知識はいらねえんだよ。そもそも『住んでた世界』が違うんでね。俺にお前らとの血縁関係は存在しねえよ」


 アラクネの言葉を軽く流しながら、コルデュークは再び剣を構え、闇魔法を付与する。


「大体犬コロに狩られた挙句、死んだ後もそいつに魂を縛られ力の糧とされる哀れな奴隷に、敬意を示せって言うほうが無理あるぜ?」


「縛られてはおらぬ、わしが好きでぼんの中に居座っているだけじゃ」


「そうかよ、なんでもいいさ。俺はその本体が気に食わねえから殺すだけ。共に心中したけりゃ好きにしな」


 と、コルデュークが剣を振り上げると。


「【鉄の網(アイアンネット)】」


 斬るよりも速く、アラクネは手の平から網状の蜘蛛糸を放ち、コルデュークを雁字搦めにした。


「あ? この野郎……!」


 コルデュークの自由を奪うと、アラクネはポロの背中から八本の蜘蛛足を模した黒い影を生み出す。


「坊が受けた切り傷、貴様にも味わわせてくれる!」


 その足先はやがて鋭く湾曲した刃となり、コルデュークに向け連撃を放った。


「【数多の鋼刃(ミリアド・エッジ)】!」


 八本の刃が高速で振るわれ、身動きの取れないコルデュークはアラクネの網ごと体を切り刻まれた。


「ぐがああああああ!」


 全身に深手を負い、コルデュークはその場に倒れる。


「くそがっ! 魔物の分際で調子に乗るなよ!」


 自身の【自動回復オートリジェネ】によって徐々に傷が塞がるが、受けたダメージは予想以上に深かった。


 剣を支えにしながら立ち上がると、剣先から闇魔法のオーラを出し横に薙ぐ。


「【邪悪なる獣(エビルビースト)】!」


 すると、斬風から複数体の黒い獣が生まれ出で、アラクネに向かって襲い掛かった。

 その時。



「アラクネ、あんただけ出しゃばんないで」



 ポロは再び口調が変わり、同時に背中に生えた蜘蛛の足は、八匹の黒い蛇へと変貌した。

 そして、コルデュークが放った魔獣を一体ずつ黒蛇が捕食し相殺する。


 ――こいつ、また雰囲気が変わりやがった。


 ポロの異変を察知したコルデュークは、彼の底知れない力に戦慄した。


「私のほうがこの子と長い付き合いなんだから、トドメはもらうわよ?」


「おいエキドナ、いきなり主導権を奪うな! 貴様とはほとんど変わらんじゃろ」


「一日と数刻、大きな違いよ。それに、私のほうが弟思いだもの。いいから引っ込んでなさい」


 と、一人二役の芝居をしているかのように、ポロの体で言い合いをする二人。


「おい、俺をシカトしてんじゃねえぞ!」


 自分を無視して言い合いをする魔人達に激高し、剣を大きく振りかぶると。

 エキドナは手をかざし、コルデュークに向け背中の蛇を放った。


「【毒蛇の乱牙(ヒュドラ・レイド)】」


 ポロの背中に生まれた蛇達は首を伸ばし、一斉にコルデュークに噛みつく。


「あがっ……これは……毒、か?」


「ええ、触れただけで死する猛毒。いくら身体強化スキルを付与しても無駄よ」


「あ……が……か……」


 その言葉と共に、コルデュークは泡を吹きながら絶命した。




 同時にポロの背中から蛇が消滅し、エキドナは片膝をつく。


「……そろそろこの子の魔力が尽きそう。アラクネ、戻るわよ」


 と、ポロの意識を本体に返そうとした時。


 突如、その場で絶命したはずのコルデュークがビクリと仰け反り、そしてゆっくりと起き上がった。


「なっ……どうして!」


 戸惑うエキドナに。


「悪いな……【自動復活オートリバイバル】を持ってんだよ……。一回殺されたくらいじゃ俺は死なねえよ」


 弱々しく笑いながら中指を立てる。


「このままやり合ってもいいが、本気でやったらこの研究所がぶっ壊れちまう。目的だけ果たして俺は退散するぜ」


 コルデュークはパルネに視線を向けると、一瞬にして彼女と距離を詰め、腹部を思い切り殴った。


「あぐっっっ!」


 突然の攻撃に対処出来ず、パルネはそのまま意識を失い。

 コルデュークは彼女を抱えて【空間の扉(ポータル)】を生み出す。


「じゃあな。お前らの相手は別に用意しとくからよ。生きてたら今度こそ俺が殺してやる」


 そんな捨て台詞を吐き、コルデュークは空間の彼方へ去っていった。


「しくじったわね……魔力を温存しておけば……よかっ……た」


 そしてポロ自身の魔力も底を尽き、エキドナの思念はポロの中で眠りにつく。


「おいガキ、しっかりしろ!」


 鉄格子の向こうで倒れるポロにリノが呼び掛けるが、返事はなく。

 ピクリとも動かない本体の内側で。

 意識の戻らないポロは、まどろみの中で夢を見ていた。



 とても、懐かしい夢を。





ご覧頂き有難うございます。


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