表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
98/307

97話 VSコルデューク【2】


 暗がりの通路に連なる、鉄格子の部屋。

 そこには主に凶暴な魔物が収容されており、中には人族も混ざっていた。


「ここは……収容所?」


 ポロは首を傾げると。

 パルネは途端にポロを床に降ろし、血相を変えてとある一室へ駆ける。


「リノ! みんなも! どうしてここに?」


 鉄格子に手をかけながらパルネは叫ぶ。

 その部屋にいたのは、狐型獣人の女性リノ。

 そして仲間と思われる者達が三人。

 女達は皆手枷で拘束され、部屋の壁に磔にされていた。


 リノは前方に映るパルネを見ながら弱々しく口を開く。


「あんた……もしかして、パルネ?」

「ええそうよ! 待ってて、今ここから出してあげるから」


 そう言うと、リノは「馬鹿!」とパルネを叱咤する。


「グラシエの姉御が命がけであんたを逃がしたのを忘れたの?! 自由の身になったのに、どうしてまたキメラ研究所に来たんだよ!」


 リノの一言に、パルネは委縮しながら答えた。


「それは……アスピドの研究施設を破壊して回るテロが起きたから、五年前に逃げ遅れた人達が心配で……」


「だからってあんたがノコノコやって来て、またあのゲス野郎に捕まったりしたら姉御の苦労が全部無駄になるんだぞ!」


「私はただ……みんなを助けようと……」


「それが迷惑だって言ってんの!」


 と、パルネに強く当たる中。

 二人の口ぶりを聞いて、ポロはキョトンとしながらパルネに尋ねる。


「パルさん、もしかしてこの人達がパルさんの探してた知り合い?」


 パルネはシュンとしながらも。


「正確には違います……。彼女達がここにいることは想定外でしたので。ですが、私はこの人達も助けたい」


 拒絶されてでもリノ達を救おうという意志を見せる。


「とにかく今ここを開けるから。それからリノ、メイラーを見てない? もしこの研究所にいるなら彼女も助けてあげたいの」


 パルネがそう言うと、リノは激高しながらパルネに怒鳴りつけた。


「ふざけんな! あいつのせいであーしらが捕まったんだぞ!」


「ど……どういうこと?」


「あいつはもうゴルゴアの飼い犬だ。あいつにハメられて姉御が……」


 ギリギリと歯を食いしばりながら、リノはメイラーに深い憎しみを抱く。


「パルネ、さっさとここから出ろ。あんたに守れるものは何もない」


「待って、せめてみんなを解放してから……」


 とパルネが鉄格子の施錠を壊そうとした時だった。



「追いついたぞクソ犬。なぁに裸の女共を眺めて発情してんだ? 童貞犬がよ」



 下の階から怒りを露わに、コルデュークが近づいてきた。


「戦闘中に見ヌきとは余裕じゃねえか。なあ?」


 殺気に満ちた男を前に、ポロは動じず。


「この人達を捕まえて何をしようとしてるの?」


 コルデュークの煽りを軽く流しながら尋ねる。

 男は「ちっ」と舌打ちしながら。


「お前ら地下水路を通ってきただろ? あそこは『欠陥個体の放逐場』っつってな、不要になった魔物や合成実験に失敗した被検体を処理する場所なんだ。そして、あそこにいる肉食獣の餌として、ここにいる奴らが使われる。一度研究所を脱走したキメラも例外じゃねえ」


 と、説明し、まるで物を見るようにリノ達を指差した。


 リノはコルデュークを睨みつけながら問う。


「おい、あーしらはグラシエの姉御を御する為の人質なんだろ? 簡単に殺しちまっていいのかよ?」


 すると、コルデュークは愉快気に笑い出した。


「くひひ、用が済めば処分するのは当たり前だろ。どうせお前らのリーダーがその事実を知るのは、死んだ後だからな」


 リノはガチャリと拘束具を引っ張りながら、コルデュークに叫ぶ。


「ふざけんなよ! ふざけんな! 姉御がどんな思いでやりたくもない仕事を引き受けたと思ってんだ!」


「知るかよ、お前らの『お父さん』にでも聞け」


 そう言いながら、コルデュークは再び闇魔法を剣に付与し。


「だからお前らがいつどこで消えても、なんら問題はねえんだ。なんなら今でも構わねえんだよ」


 巨大な黒き刃をリノ達に向け放った。


「【奈落の剣(アビスソード)】!」


 鉄をも切り裂く斬撃が彼女らに接近する直前。


「【半人半蛇の鱗(エキドナ・スケイル)】」


 ポロはエキドナの防御壁を体に付与し、真向から斬撃の壁となった。


「うっ……!」


 しかし、強化スキルで威力を上げたコルデュークの一撃は、防御壁を破りポロの皮膚に切り傷を浴びせた。


「くひひ、お前、無抵抗の奴に危害を加えるのは許さないとか言っちまうタイプか? 偽善者ぶってっと寿命を縮めるぜ? 俺は面白いがな」


 回避が出来ないポロの反応を見て、気分を良くしたコルデュークは次々とリノ達に向け斬撃を放った。


「ほらほら、避けねえとお前が死んじまうぞ?」


 自分をコケにした獣人をいたぶる快感。

 そんな歪んだ欲に酔いしれる男は、徐々に防御壁が弱まり深手を負うポロを存分に痛めつけ悦んでいた。


「おいガキ、あーしらのことはいいから逃げろ!」


 と、リノは叫ぶがポロはその場から動かず、しかし反撃も出来ない。

 パルネはポロを集中的に攻撃するコルデュークに向け魔法で応戦するが。


「ポロちゃんを傷つけないで! 【風の衝撃波(エアロバスター)】!」


 螺旋状に渦巻く突風をビームのように放つと。


「くひひ、【方向転換ベクトルチェンジ】」


 コルデュークに当たる寸前、男は指をポロの方向に向け、パルネの魔法を受け流した。


「っっっ!」


 そして強力な風魔法を直撃したポロは、エキドナの防御壁が完全に破壊され、その場に膝まづく。


「そんな……ポロちゃん……私……」


 自分の一撃で瀕死の状態にしてしまったと、パルネは自責の念に襲われる。

 無抵抗となったポロにコルデュークは近づき。


「終わりだ……犬ガキ」


 そして、手に持った剣でポロの首を刎ね飛ばした。


「いやっっ! ポロちゃん!」


 見たくない現実を突きつけられ、その場に蹲るパルネ。


「さて、あとはあの鳥女をゴルゴアのところまで連れて行けば…………ん?」


 と、コルデュークが一息吐いた時。

 刎ね飛ばしたポロの首元から、黒い糸のようなものが無数に現れ、ポロの体に結合してゆく。


「あ? なんだ、これ」


 そして再びポロの体が修復されると。

 ポロは静かに立ち上がり、コルデュークに向け言い放つ。



「貴様……わしの可愛い義弟に何をした?」





ご覧頂き有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ