表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
93/307

92話 水路の先でまみえる脅威


「はあ……もういないわよね?」


 地下水路にて、リミナは息を切らしながら討ち取った暴食ワニ(グラトンガビアル)を見やる。


「ああ、ようやく殲滅したようだ」


 周囲を警戒しながら、サイカも呼吸を整え剣を鞘に納めた。


 数にして三十以上。軍の中隊が揃ってようやく討伐出来る熟練者エルダー級の群れを、たった四人で相手取った為、さすがに体力の消耗は激しい。

 一同はペースダウンしながら通路を進んでゆくと。


 サイカは前方を窺い、道が二手に分かれていることに気づく。


「ここに来て分かれ道か……」


 どちらが地上へ繋がっているのか、選択を誤れば大幅なタイムロスになる。


「ねえポロ、あんたの鼻でどっちが正規のルートか分からない?」


「無茶言わないでよ、ただでさえ鼻が利かない場所なのに、城に繋がる匂いなんて分かるわけないじゃん」


 リミナの無茶ぶりに異を唱えるポロだが。


「ん……? んん……?」


 ふと、ポロは自身の犬耳をピコピコ動かし、何かの違和感を察知した。


「なんだろ……奥から音がする」


 それは皆にとって都合の良いものではない、不穏な音だった。

 やがてその音は明確に彼の耳に入り、体中から寒気を感じた。



「みんな走って! こっちのほうから水が流れてくる!」


 と、皆をもう一方の通路へ向かわせると。

 反対の道から凄まじい勢いで激流が押し寄せてきた。


「ちょっと、この量まずいんじゃないの?」


 直撃を回避した一同だが、通路一面を覆う程の激流は、逃げたほうの道へも浸食してゆく。

 危険を感じたリミナは「こっちへ」と皆に指示を出し駆け抜けるが。


 一方、サイカはその場に留まり激流に向けて両手を構える。


「サイカっ! 何やってるのよ、早く!」


 そして深く息を吐き、流れ込んでくる激流に向けて氷魔法を放った。


「【氷晶の壁(クリスタルウォール)】」


 通路全体を塞ぐように、サイカは巨大な凍りの壁を生成し激流をせき止める。


「ふぅ……水を利用すれば最小限の魔力で事足りるな」


 と、安堵する彼女に、リミナはヘナヘナと腰を下ろした。


「ヒヤヒヤさせないでよ……助かったけどさ」

「ああ、だが、片方の道は完全に塞がってしまった」


 もはや引き返すことは出来ない。

 選択肢のなくなった四人は、当たりかどうかも分からない一方通行の道を進むこととなった。


 だがそれは、ポロ達を監視していた研究員による、人為的な誘導である。


 当然皆もその予感はあったが、逃げ道がない以上前へ進むしかない。

 逆に迷いのなくなった彼らは、より一層警戒しながら歩を進めた。











 しばらく進むと、前方に鉄格子が設置された場所が見え、そこで道が途絶えていた。


「見て! あそこ!」


 側面を見ると、上に繋がっているであろう階段があり、ようやく一同は安堵の溜息を吐く。


「とりあえずこのジメった場所からは出られそうね」


 やれやれと体を伸ばしながら階段へ向かうと。

 突然、目の前の鉄格子がギリギリと錆びた音を立てながら上り、奥から猛獣のような唸り声が辺りに轟いた。


「何……この声……」


 ずしりと響くその声に、嫌な予感が掻き立てられる。

 警戒しながら奥を覗くと。


 そこに現れたのは、異様な姿をした化け物だった。


 女性型の上半身に、六頭の犬がくっついたような下半身。

 そして魚のような巨大な尻尾を生やした歪な魔物……。


「まさか……六頭犬の女帝(スキュラエンプレス)……?」


 それは通常の魔物階級で最も危険視される、統治者アーク級の魔物だった。


 かつて魔人の伝承に記された怪物、スキュラ。

 その姿に酷似しているが為に同名で呼ばれている魔物である。


「だから……なんで城の地下にこんな魔物がいるのよ……」


 頭を抱えながら現実を直視出来ないリミナを他所に。

 その化け物に取り付いた犬の一体が、口から高熱の火球を放った。


 標的は四人の誰かではなく、上に通じる階段付近。


 天井に放たれた火球は強固な壁を崩れさせ、瓦礫の山を作り入口を塞いでしまった。


「こいつ……アタシ達の進む道を妨害した? 意思を持っているの?」


 的確に抜け道を塞ぐあたり、魔物と言えども状況を理解する知能があるように思えた。


「……戦わねば、先へ進めぬというわけだな」


 サイカは魔力を高め、目の前の魔物と向き合うと。


「【氷晶の庭園(クリスタルガーデン)】!」


 辺り一面に無数の氷剣を生み出し、スキュラエンプレスの元へ駆けていった。





ご覧頂き有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ