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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
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90話 地下水路に潜む肉食獣


 アスピドの空港にてひと悶着あった頃。


 その一方、テティシア城の一室から暗闇の底へ落とされたポロ達は。



 足場用に生成したポロの【暗黒障壁ダークプレート】を乗り継ぎ、皆は着々と下降していった。


「あっ、底が見えてきたわよ!」


 リミナは携帯ライトで底を照らし、ようやく終わりが見えたことに安堵する。


「ずいぶん深い所まで来たな。……あの給仕の女、確実に殺す気ではないか」


 と、サイカは先程のキメラらしき女性を思い出し、再び憤りを感じる。










 地面に到着すると、皆の荷物ごとすべてを落とされてしまった彼らは、各々雑に落下した私物を確認する。


「ふう~、水が流れてなくてよかった。荷物袋は無事みたいね」


 底が海の流れる水路だった場合、武器もアイテムもすべて流されていたところだが、一先ず荷物袋が無事だったことにリミナは一息吐く。


「う~ん、ポーション類は全滅か……こんなことならガラス瓶じゃなくて粉末の薬持ってくるんだった」


 と、リミナは荷物袋の中で割れたポーションの破片を振り落としながら、周囲を見渡した。


 弱々しいが、かろうじて通路に『発光石』が設置されており、ライトがなくともぼんやりと辺りは窺える。

 おそらくここは、城の真下に位置する地下水路のようだとリミナは予想した。


「……見た感じ城に繋がってそうな下水路だけど、全く整備されてないわね」


 じめじめと生ぬるい気温、そこかしこから漂う磯とカビが混合した匂い。

 その場にいるだけで気分が悪くなりそうな環境である。


 そんな中、リミナの横でポロは鼻を押さえながら呟く。


「う〜……それにしても酷い匂い……。カビやヘドロに混じって何か別の腐敗臭も漂ってくる」


 獣人であるポロは人一倍匂いに敏感であり、彼にとってこの空間は耐え難い地獄だった。


「あ、そっか、あんたにはキツイかもね。なんかあるかな……」


 と、リミナは自分の荷物袋を漁り、鼻を押さえられる物を探していると。


「なら、これをお使い下さい」


 パルネは自身の巻いていたスカーフをポロの鼻と口に覆い、マスク代わりに優しく巻き付けた。


「これで少しでも軽減されれば良いのですが」

「んふ~、だいぶマシになったよ、ありがとう」


 布を巻いたことで多少の悪臭は塞げるようになり、「パルさんのいい匂いがする」と尻尾を振りながらパルネに喜びの感情を見せるポロ。


「それにしても……ここから城へ戻れるでしょうか?」


 奥の見えない下水路にパルネは不安を募らせる中、サイカは迷いなく通路を歩き始めた。


「悩んでも仕方あるまい。姫様の安否が気になる、皆、出来るだけ急ぐぞ」


 そしてサイカ先導の下、一同は出口の見えない通路を進んでゆく。











 しばらく歩を進めると、あちこちに動物の骨が散乱しているフロアへたどり着く。

 大概は四足歩行の魔物らしき骸だが、中には人族らしきものの骨まで散らかっていた。


「これ……人の骨? もしかしてアタシらと同じように落とされて、飢え死にしたのかな?」


「どうだろうな」


 後味悪そうに見つめるリミナに、見慣れた様子で歩くサイカ。


「亡くなった者達のことは残念だが、ここで彼らにかまっている場合ではない。一刻も早く上に戻らなければ……」


 と、ドライな素振りで淡々と進む。


 だが、ふと前方に視線を向けると、地面に倒れる骸の周りを覆うように、複数の甲殻系の人食い虫が群がっている様子が目に映った。


「ひゃぁああっ! 虫!」


 途端、サイカは乙女のようにビクリと後退し、後ろにいたポロを抱きかかえ彼の背中に顔を埋める。


「……僕を盾にしないでよ。相変わらず虫が苦手なんだね」


 ぬいぐるみのような扱いに不満を漏らしながら、ポロは群れを成す昆虫に目を向ける。


「巨大な具足虫ぐそくむしだね。ここで亡くなった動物の死骸を食べているのかな?」


「いやだ~帰るぅぅ、もう帰るぅぅぅ」


「帰る為には進まないと……」


 視界に入れるのもはばかりたいサイカは、子供のようにポロにすがりついていた。


「あ~、じゃあアタシが駆除するわね」


 動けないサイカの代わりに、仕方なくリミナは携帯式ハルバードを取り出すと。


「待って下さい」


 そう言って、パルネは彼女を止めた。

 そして虫の群れに近づき。


「お願い……ここを通して」


 そっと虫達にお願いするのだ。


 すると、それまで夢中で死骸を食らっていた虫達は、彼女の言葉を理解したように一斉に辺りへ散って行った。


「あなた……何したの?」


「ジズの能力に、すべての生物と意思疎通出来るスキルがあるので使用しました。無益な殺生は避けたいので」


「へぇ~便利ね」


 パルネの能力があれば魔物との戦闘も避けられるのではないかと、リミナはその利便性に関心する。


「たまたま彼らが温厚だったので上手くいきましたが、好戦的な肉食獣などには効果はありませんけどね」


 と、パルネが解説していると。



 その直後、奥から獣のうねり声が聞こえると同時に、重みのある足取りで近づいてくる複数の影が現れた。


「あれ……まさか暴食ワニ(グラトンガビアル)?」


 リミナの頬に冷や汗が伝う。


 際限なく獲物を食らう巨大なワニの魔物暴食ワニ(グラトンガビアル)

 熟練者エルダー級の危険度で知られる肉食獣が、群れを成してポロ達に向かい来る。


「パルネ……こいつらも話し合いで何とかならない?」


「もうすでに私達を餌と認識してますので無理かと……」


「だよね~……」



 地面に転がる骸の数々は、おそらくこの魔物達が捕食したのだと理解し。

 嫌々ながらも、一同は戦闘準備を整えた。





ご覧頂き有難うございます。


明日、明後日は休載致します。

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