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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
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87話 一方その頃地上では【1】


 ポロ達と別れ、ハイデルに先導されながら城内を歩くアルミスは。

 煌びやかな内装から歩を進めるうちに、だんだんと薄暗くなる廊下に違和感を覚えた。


「あの……ずいぶんと離れの場所までゆくのですね」

「申し訳ございません。間もなく到着致しますので」


 と、ハイデルは申し訳なさそうに返す。


 しかし、先程の客間があった廊下と比べると、明らかに客を招くような場所ではないことをアルミスは察していた。


 あまり整備がされていないような地下へ行く為の階段を下り、下水路のような場所へ向かってゆくハイデル。


 そこはかび臭く、磯臭い。


「あの……すみません、従者の者に伝え忘れたことがございまして……一度皆の所へ戻っても構いませんか?」


 不安になったアルミスは、適当な理由をでっち上げその場を去ろうとするが。


「それは困ります。ここにいることを城の者に見つかると面倒なので」


「……どういう、意味でしょうか?」


 ゆっくり、一歩一歩アルミスは後ずさると。


 ピタッ、と、突然自身の肩を掴まれる感触に慌てて振り返る。

 そこには気配もなく、いつの間にいたのかも分からない青髪のエルフが背後に立っていた。


「……あ、あなたは?」


 恐る恐るエルフの女性に尋ねると、女性はニコリと笑い。


「初めまして、アルミス様。……ふんふん、たしかに、噂通りの魔力量ね」


 エルフの魔力感知能力で、アルミスの体内に眠る魔力量を覗き見る。


 するとアルミスを間に挟んで、ハイデルは女性に催促する。


「おいメイラー、あまり時間がない。さっさとお連れしろ」


「申し訳ありませんハイデル様。良質な魔力に思わず見惚れてしまいました」


 と、軽めな謝罪をするエルフの女性、メイラーは。


「それでは王女様、これからしばらくの間、私達の為にご助力願いますね」


 アルミスの額に指を当て睡眠魔法をかけた。


「……な、何を……?」


 薄れる意識の中で、ハイデルは耳元で囁く。


「突然のご無礼を許し下さい。あなたに私怨はございませんが、私が王維継承権を得る為の礎となって頂きたい」


 邪気に満ちた笑みを向けながら。


 ――サイカ……みんな……。


 そして、アルミスの意識は途絶えた。












 ハイデルの企てにより、現在ポロ達が危機的状況に陥る中。

 アスピド内の空港に停泊する飛行船の中では。


「夜ご飯、買ってきましたよ」


 女性船員の一人が買い出しから戻ると、船内に匿ってもらっているバルタとナナに食料を渡した。


「好きなの選んで下さい」


「わりいな、飯まで買ってきてもらって。ナナ、お前どれにする?」


 と、数種類のパンや総菜をナナに選ばせるが。


「バルタが、選ばなかったほう、食べる」


 特に好物があるわけでもない彼女はバルタに優先権を譲る。


「相変わらず飯に興味ねえのな……。じゃあこれとこれな」


 そんなナナを不憫に思いながらも、適当に栄養価の高そうなものをナナに与え、自分は残り物のサンドイッチを頬張る。


 その近くでふと、メティアは空の色を眺めながらバルタに尋ねた。


「そろそろ日が沈む頃だけど、どうするんだい? 一泊するなら仮眠用のベッドを用意するけど」


 するとバルタは笑いながらメティアに返す。


「はは、最初は面倒くさそうにしてたのに、ずいぶんと優しいのな」


「今でも面倒だよ。けどもう匿った時点で同罪だし、今更一つも二つも変わらないだろ。それに、途中であんたらを狙う刺客に殺されたとあっちゃ寝覚めも悪いしね」





 魔導飛行船に二人を招いてからしばらく、メティアは二人に事情を尋ねた。

 そして知ることになる、思いの外大事件を起こしていたという事実。

 ここ最近の研究所を狙った爆破テロは二人の仕業だった。


 それは世間に公表出来ないような違法の研究、合成生物の実験を裏で行っていた為、その禁忌に触れる実験施設を消したいからだという。


 しかしここまで大々的にニュースに取り上げられてしまった以上、国も黙っているわけもなく、総力を挙げて二人を捕えようと必死になっていた。


 故に、ここ数日は腕利きの賞金稼ぎ(バウンティハンター)なども雇われ、徐々に二人の正体が割れてきた為、細々と町で身を潜めていた頃にメティアに出会ったのだった。






 そんな経緯を語られた手前、メティアも二人をないがしろにする程薄情にはなれず、咎人とはいえ出来る限り協力してやりたいと思うようになった。


 何だかんだ面倒見の良いメティアに「そうかい」と一言返し。


「気持ちだけ受け取っておくぜ。もう少し町が静かになったらここを出るつもりだ。調べたいことがあるんでね」


「そう。まあ気をつけな」


 そう言って、メティアは煙草に火を点けようとした時。


 ドンドン、と、搭乗口から強めなノック音が鳴り響いた。

 そして近くにいた船員はメティアに状況を伝える。


「メティアさん! 搭乗口の前で女性がしきりにノックしてくるんですけど……」


 一瞬、メティアはバルタとナナに視線を向け、そして搭乗口にいるであろう人物を警戒した。


 ――旅客機でもないこの船に、半ば強引に押し掛ける女……。


 国の者か、二人を狙った刺客か。


「二人とも、一応隠れてな」


 そう言うと、メティアは腰に短剣を差し、いつでも戦闘出来る心構えで搭乗口へ向かった。





ご覧頂き有難うございます。

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