表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
87/307

86話 テティシア城の一室で


 ハイデルに案内されること数分。

 一同は、城の入り口からずいぶんと離れた一室へ招かれた。


「従者の皆様はこちらでおくつろぎ下さい。アルミス様はディナー用にお召し物を用意致しましたのでこちらへ」


 と、ここで再びアルミスと別れることに。









 客間のソファーに腰かけると、給仕の女性は皆に紅茶を注ぎ、簡単な茶菓子を用意してその場を去ってゆく。


「それではごゆるりと」


 そして身内だけになった瞬間、リミナは脱力したようにソファーへ身を預けた。


「はぁああ~滅茶苦茶疲れた……」


 大の字に体を伸ばし、隣で茶菓子をつまむポロの膝に足を乗せて無駄にかまうリミナ。


「んむんむ……ふぁひ(何)?」

「王族や貴族の前で必要以上に気疲れしたの~。ちょっとその耳モフらせなさい」


 と、消耗したメンタル補給に、くすぐったそうにするポロの犬耳をしきりに撫でる。

 そんなストレス発散に興じるリミナに、サイカは不満そうに返した。


「おい、姫様も王族だし、私も一応貴族なのだが……」


「あんたらは勝手知ったる仲だからいいの。……それより、どうなの? 王子様の評価は」


 先程から不満気な表情を浮かべるサイカに問うと。


「まず顔が好かん。整った容姿であるが故に自分に自信を持っている様子がひしひしと伝わってくる。押しの弱い姫様なら簡単に言いなりになってしまいそうだ。あと結婚が決まったわけでもないのに気安く姫様の手に触れる軽率さが気に食わん。もう自分のものになったつもりでいるのか知らんが私は認めん!」


「ええええ……」


 と、プラスに思える王子の長所を真っ向から否定した。


「逆にどんな男なら許容出来るのよ?」

「知らん!」


 もはやこのお見合い自体が彼女にとって納得のいかないイベントなのだと、リミナは口にせず心に留めた。


「やはり今回は友好条約だけ結び、相手の尊厳を貶めず、やんわりと断る方向に持っていくのが無難だろう」


 と、サイカは不満を露わに、目の前の紅茶に口をつけようとした時。




「それを飲むのはやめたほうがいいよ?」




 突然、茶菓子をつまむポロはサイカに忠告した。


「……どういうことだ?」


「お茶の中から薬物の匂いがする。もしかすると毒かもしれない」


 と、軽い口調で告げるポロの言葉に、サイカは静かにカップを戻す。


 するとリミナは、ポーチから温度計のような棒状の検査機を取り出し、先端を紅茶の中に沈めると。


「……ホントだ。睡眠薬が混じってる。それも結構強めなやつ……」


 反応した色で識別した結果、紅茶の中に薬物が入っているという事実が証明された。


「……いや待て、仮に睡眠薬だとして、何故我々にそれを飲ませる必要がある?」


「アタシだって分からないわよ。国の陰謀? いやでも恨みを買うようなことした?」


 様々な疑問が浮かび上がるリミナと。


「はっ! 姫様!」


 ふと第二王子に連れていかれたアルミスを思い出したサイカは、途端に自分の剣を手に取り客間の扉から飛び出そうと駆けだした。


 その時――。


 扉の外から察したのか、サイカよりも早く扉が開かれ、先程の給仕の女性がレイピアを構えサイカの眼球を狙い刺突を放った。


「くっ……!」


 貫かれる寸前でサイカは体を捻り回避すると。

 女性は静かに扉を閉め、皆を部屋から出さぬよう立ち塞がる。


「そこを退け! 他国の従者に手を出したとあらば、国際問題に発展するぞ!」


 居合の構えで給仕の女性を捉え、脅し文句で警告するサイカ。


「お父様に命じられましたの。あなた方を海の底へお連れしろと」


 が、女性はサイカの警告にピクリともせず、ただ簡潔に要件を伝えた。


 すると突如、女性の背から植物の枝のような物が幾本も生え出し、その枝は部屋の天井に根を張ると、女性はそのまま蜘蛛のように張り付いた。


「あなた……まさかキメラ?」


 その異様な姿を見て、パルネは自分と同じ混ぜ物の体なのだと気づく。


 女性はパルネの問いには答えず、ふと前掛けのポケットから小型のリモコンを取り出すと。


「四名様、『欠陥個体の放逐場』へご案内致します」


 その言葉と共に女性はリモコンのボタンを押した。


 すると突然、部屋の中央から真っ二つに床が開かれ、その場にあった家具ごとポロ達は落下する。


「っっっっ!」


 足場の無くなった彼らはそのまま地の底へ落ち行くが。


 その瞬間、ポロは下方一面にアラクネの糸を飛ばし、黒いハンモックのような緩衝材を生成。そして落下する皆を拾いあげた。


 同時にパルネは自身の翼を広げ彼女の元へ飛び立つが。


「それでは皆様、ごきげんよう」


 給仕の女性はリモコンのボタンを押し、パルネが接近するより早く、再び開いた床を閉じてしまった。


「くっ、そんな……」


 パルネは閉じられた床を力一杯叩くがビクともせず。


 他国の給仕に油断した彼らは、突如として光なき地の底へ招待された。


 日夜飽くなき生物実験を行う、テティシア領地下研究施設の一角。



 不必要とされた個体を処理する為の、失敗作の掃き溜めに……。





ご覧頂き有難うございます。


追記しますが、明日から2、3話程別サイド、メティア達の話となります。

申し訳ございませんが、ポロ達の続きはもう少々お待ち下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ