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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
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83話 暇つぶしのビーチで、懐かしき顔


 魔導飛行船の搭乗口を開けると、そこにはテティシア国の者と思われる兵士が複数人と、一歩前に出て丁寧に頭を下げる役人がアルミスを出迎えた。


「お待ちしておりました、アルミス様。この度は遠路はるばるお越し頂き恐悦至極に存じます」


 と、物腰柔らかに挨拶を述べる役人は、この国の大臣である。


「さあ、聖堂でアデル様がお待ちでございます。馬車をご用意致しましたのでこちらへ。お連れも方もどうぞ」


 そして大臣は王族が乗るような豪華な馬車へ誘導する。


「それでは皆さん、行ってきますね」


 留守を預かる兵士と飛行士達に一礼すると。

 アルミスと指名された付き人達は、待ち合わせである聖堂へ向けて馬車を走らせた。











 アルミス達を待つ間、自由行動を言い渡された一同は、各々町の観光へ出かけて行く。

 そんな中、メティアはミーシェルを連れ、ビーチの見えるカフェで一服をしていた。


「お〜すごいすごい、まるで魚が空を泳いでるようだね」


 煙草を口に咥えながら、他ではまず見ることはないドーム状に町を覆う海の壁を眺め。

 その幻想的な空の景色に呆けながらも心を打たれるメティア。


 そんな中、近くでミーシェルは不機嫌気味に念話を飛ばす。


『メティア、ミーシェもご主人と一緒に行きたかったニャ』

「いや、さすがにダメだろ。王族の顔合わせに小動物は場違いだよ」


 テーブルの上でゴロゴロ転がりながら不満を漏らすミーシェルを、面倒くさそうになだめるメティア。


「あとミーシェル、あんたは私とポロ以外普通の猫で通っているんだから、あまり外で念話を使うんじゃないよ?」


 そう言うと、ミーシェルは気まずそうに答えた。


『……すでにリミナにバレたニャ』


「何やってんだい! あんたが魔法で作られた人工精霊だってバレたら、物珍しさに悪用する輩がいるかもしれないっていつも言ってるだろ!」


 呆れたようにミーシェルを叱るが。


「……けど、まあ、あの子なら大丈夫か」


 ある程度信頼を置いているリミナに、多少なりとも寛容になる。


『ちニャみに正体は明かしてニャいけどタロスも勘付いているニャ。表情には出さニャくとも、ニャカマ内で隠し事をされていることに若干凹んでいたニャ』


「う……まあ、タロスには今度謝罪と共に打ち明けてもいいか……」


 気まずい事を聞いたと、溜息の煙を吐きながらビーチを眺めていると。


 ふと、ローブを羽織った旅人らしき人物が二人、真っ直ぐ彼女の元へ近づいてきた。


「ん? 何、あいつら……」


 メティアとミーシェルは、見知らぬ者の接近に警戒していると。


 彼女の眼前まで来た男は人目を窺いながらフードをとった。

 すると。


「あんたっ! たしかSランク冒険家の――」


 言いかけたところで、男は「しっ」とメティアの言葉を静止させる。


「よう、メティアだったか? この間は世話になったな」


 歯をむき出し笑う男の正体は、以前『黒龍の巣穴』で共闘した竜人ドラゴニュート、バルタだった。


「ポロは元気か? 免停を食らったって聞いたが?」


「もう解除されたよ。今は別行動だけど仕事で一緒に来てる。あんたこそ、ここで何してるのさ? 余所余所しくローブなんか羽織っちゃって」


 するとバルタは「あ~」と言い辛そうに頬を搔き。


「あまり表沙汰に出来ないような事、だな。こいつと一緒にやらかしちまってよ」


 と、フードで顔を隠した少女の肩を叩きながら笑い話で済まそうとするバルタ。


「何してんの? せっかくのキャリアに傷付いたら仕事なくなるよ?」


 メティアは再び煙草に火をつけながら、心配そうにバルタへ返すと。

 バルタはそんな憂いを蹴り飛ばすかのように笑うのだ。


「うはははっ! 構わねえよ。俺は俺が正しいと思った道を進む。その先で無一文になろうと無残な死を遂げようと、そこに一切の後悔はねえのさ」


 彼の堂々たる発言に、メティアは「そりゃご立派で」と、溜息混じりの煙を吐く。


「ま、それはそれとして、お前ら魔導飛行船で来てるんだろ? 実はちょっと頼みがあるんだけどよ」


「おい、咎人発言した直後で私に片棒担がせるな」


 悪事を働いているらしい男からの頼みをばっさり切るメティアだが。


「いやいや、何かしろってわけじゃねえよ。ただ身を隠すのに飛行船の中を使わせてくれって話」


「罪人を匿う時点で悪事に加担してるんだけど?!」


「いやホント頼む! 日が沈むまででいいからよ!」


「…………」


 今しがた切った啖呵はなんだったのかと思う程に、バルタは合掌しながらメティアに必死に懇願する。



 結果、食い下がるバルタに押し切られ、なし崩し的に二人を匿うことになった。


「どんだけヤバいのに追われてんのよ……。国からの依頼で来てるんだから面倒事には巻き込まないでよ?」


「おう、任せろ! 恩を仇で返すような真似はしねえよ」


 と、根拠のない自信でバルタは返す。




 仕方なく二人を飛行船へ案内しながら。

 メティアは後ろを歩くバルタの連れ、ナナに背筋が凍る程の圧を感じていた。


 ――なんなの、この子。魔力感知無効スキルを使っているんだろうけど、それでも異常なくらい膨大なマナが漏れてる。


 魔力感知に敏感な黒エルフだからこその圧し潰されそうな感覚に、メティアは平静を装いながらも寡黙に自分の後ろをついてくる少女に一種の恐怖を覚えた。


 ――ポロォォォ……早く帰ってきて~。


 彼らが出かけて早々、心の中でポロの帰りを待つメティアであった。





ご覧頂き有難うございます。

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