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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
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79話 思惑と困惑


「えええ〜パルさん二十五なの? 外見は僕と同じくらいなのに、ずっとお姉さんじゃん」


「子供の頃にキメラ手術を受けたので、それ以来外見が変わらないのです」


 あの後、勝手に帰ったノーシスに憤るサイカをなだめ、一同は休憩がてら繁華街のビアガーデンにて食事を楽しんでいた。


「なんかリミナみたい」

「リミナ?」


 パルネが疑問を抱いていると、メティアは酒瓶を片手にポロへ注意する。


「内々の話をしても分からないだろ……。あ~、知り合いに年も見た目もあなたと同じくらいの子がいるのよ。Sランク冒険家のね」


「へえ~一度会ってみたいですね。しかもSランクの冒険家だなんて」


「まあ、リミナも国を転々としてるからね。次はいつ会えるか……」


 と、メティアは遠い目をしていると。


「呼んだ?」


 突然背後からの声に驚きメティアは振り返ると。

 串焼きを頬張りながら、もう片手に発酵ビア(エール)を持ったリミナがキョトンとした表情で立っていた。


「リミナ? あんたまだこの国にいたの?」


「王様に引き留められたのよ。あなた達、アルミスの送迎でアスピドに行くんでしょ? その護衛の依頼を頼まれたの」


 おそらくは見知った顔であり、なおかつ実力の面でも信頼があるからこその依頼なのだとメティアは納得する。


「それで、アタシがなんだって?」


 と、先程の話を聞いていたリミナは、自分の名が挙がったことに興味をもつ。


「あ~その、今回私らの船にこの子も同乗するんだけど……えっと……」


 メティアはコンプレックスを持っているリミナに言い辛そうにしていると、代わりにポロが続きを話した。


「リミナと同じ幼女体系で歳もリミナと同じくらいなんだよ。すごい偶然だよね」


 オブラートも何もなく直球で告げるポロに、リミナはテーブルにあった串焼きの束をポロの口にねじ込んだ。


「幼女体系で悪かったな!」

「ほふぇんはあい!(ごめんなさい)」


 キャパオーバーに口内へ詰められた肉を少しずつ処理するポロを他所に、リミナはパルネと目が合うと。


「あなた……その翼天然ものじゃないわよね? もしかして、キメラ?」


 と、一目見ただけで彼女がキメラだと見抜いた。


「っっ! 分かるのですか?」


「まあ……ね。アタシの元パーティーメンバーにも一人いたから」


 そして、リミナは少し寂しそうな表情を浮かべた。


「その人は今どこに?」


「いないわ、もう。魔物からアタシ達を逃がす為に囮になって、そのまま……」


「……そうですか」


 パルネは触れ辛い話だと察し、それ以上聞こうとはしなかった。


「そう言えばあの子も出身はアスピドだったわね。………もしかしてあなたが向かう理由とも関係しているの? キメラ関連で」


 パルネは言い辛そうに「はい」と小さく返答し。

 それを察したリミナは質問をやめた。


「そう……。深くは追及しないけど、もしアタシに出来ることがあったら言ってね。力を貸したげる」


 彼女との繋がりはないが、パルネを見てかつての仲間を思い出すリミナ。

 これも何かの縁なのだと思い、リミナは彼女の手を取り、出来る限り助けになろうと誓う。


「ありがとうございます。けれど、これは私の問題なので極力自分の力で成し遂げてみせます」


「そっか」


 口いっぱいに肉を頬張るポロ及び飛行士の面々そっちのけで、二人の間に友情らしきものが芽生えた瞬間だった。











 一方その頃、セシルグニムの城内にて。

 騎士団長、レオテルスは見回りに行く為通路を歩いていると。

 突然懐から小型の魔道具が振動した。


「…………」


 それは遠く離れた者と会話が出来る、携帯電話に近い魔道具である。

 そっと人目の付かない一室に隠れ、レオテルスは魔道具のボタンと押す。


『レオテルス、近況報告がしたい。今は大丈夫か?』


 その声の主は先程までポロ達の元にいたノーシスだった。


「あまり大丈夫でないさ。業務中だ、手短に伝えろ」


『……君に魔術の素養があれば念話でやり取り出来るのだがね』


「それは悪かったな。なら次からは俺の部下にでも頼むか? その際第三者に俺達の素性がバレるがな」


 皮肉に皮肉で返すレオテルスに、ノーシスは魔道具の向こうで軽く息を吐きながら話を続けた。


『……報告だ。現在バルタとナナが六つ目の研究所を破壊した。が、やはり最後の一つは未だ発見出来ずにいるようだね』


「表沙汰に出来ない研究だからな、上手く隠しているのだろう。地中、海中、魔物の腹の中……テティシア領は入り組んだ場所が多い。何かを隠ぺいするにはこの上ない優良地帯だ」


『隠ぺいね……。まあ、ここまで探して見つからないのであれば、やはり国の誰かが関与しているのだろう』


「ああ、だから姫様と王子の顔合わせに紛れて調査をするんだろう? お前が連れてきた協力者はすでに王の許可が下り、彼らの魔導飛行船に同乗出来るように手配してある」


『だろうね。綿密に偽装した資料だ、簡単にバレないだろう。おたくの副団長様は良く見もしないで駆けて行ったからね。欺き易い都合のいい女だよ。それを信用する王も程度が知れる』


 と、ノーシスの言葉に、レオテルスは軽く歯を食いしばる。


「……おい、あまり舐めるなよ。サイカも、陛下もな」


 それは自分でも無意識に出た言葉だった。

 彼にとってセシルグニムという国は単なる足掛け、他国からの情報を共有しやすいという理由で入隊した上辺の顔。


 この国に情などあるはずがないと思っていた。

 だからこそ、自身の口から出た言葉に困惑したのだ。


『……らしくないな。長く国に滞在して情が湧いたのか?』


 ノーシスの問いが的を得ていて、誰にでもなく自身に憤りを感じるレオテルス。


 と、その時彼の近くから足音が聞こえ、レオテルスは急ぎめに通話を遮断した。


「人が来た。一度切るぞ」


 そして魔道具をしまい、何事もなかったかのように廊下を歩き出す。すると。


「レオテルス? めずらしいですね、今の時間は外回りの最中では?」


 鉢合わせたのはアルミスだった。

 レオテルスは微笑を浮かべ。


「姫様がまたお城を抜け出さないか、たまに見回りをしているのですよ」


 冗談交じりで彼女に返した。


「もうっ、ちゃんとじいやの講義を受けています!」


 意地悪気に言うレオテルスに、アルミスは頬を膨らませ不機嫌な様子を露わにした。


「ふふ、ええ、分かっておりますよ。『黒龍の巣穴』から帰還して以来、姫様の勤勉さは見て取れます。さぞかし陛下もお喜びでしょう」


「分かっているならいじわる言わないで!」


 と、アルミスは不満気にレオテルスの横を通り過ぎる。

 その後ろ姿を追いながら。


「姫様……、此度の縁談、国としては大変喜ばしいことでしょう。ですが、将来を共にする者を選ぶ権利はあなたにあります。不要な心配かと思いますが、どうか後悔だけはなされませんよう」


 そんなお節介を口にした。

 アルミスは振り返り、ニコリと笑みを浮かべると。


「ありがとう。けれど、私は国にとって最善の選択をしたいの。私の気持ちはその後……」


 そう言って、決意したように堂々とした足取りで彼の元を去っていった。


 レオテルスは一人、自分の口にしたことに再び疑問を抱く。


「姫様の身を……案じているのか? 俺が」


 笑えない冗談だと、自己嫌悪に浸る。


 知らぬ間に芽生えたこの感情が何なのか、貴族王族を否定し続けてきた彼には分からぬまま。





ご覧頂き有難うございます。

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