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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
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78話 キメラの少女、パルネ


 外見はポロと大差ない程の子供体形の少女。


 ひょっこりと飛行船の陰から現れた少女は、周囲の視線が気になるのか、ノーシスの背に隠れながらじっとポロを見つめる。


「……その翼、もしかして鳥人? ん、でも……何か混じった匂いがするような……」


 少女の背に生えた翼を見ながら、しかしどこか普通の鳥人とは違う匂いに違和感を抱くポロ。


「さすが獣人の鼻は伊達じゃないね。たしかに見た目は鳥人だが、厳密には違うよ。……さあ、自己紹介してごらん」


 と、ノーシスは少女を前に誘導し挨拶をさせた。


「……パルネです。その……元は人間です」


「もとは?」


 ポロはそんな疑問を向けると。


「私は科学実験により肉体改造を施された合成生物キメラ。太古の昔に存在した怪鳥、ジズの遺伝子を埋め込まれてこのような姿になりました」


 そう言うと、メティアは驚いた反応を見せる。


合成生物キメラって……昔から禁忌とされている違法の生物実験じゃないか! 何、今でもそんな研究がされているの?」


 他生物を合成するという行為は、この世界では宗教的、人道的観念から元来タブーとされている。

 その合成生物キメラ本人が目の前にいるということは、未だに禁忌の生物実験が存在しているということ。


 パルネは静かに頷き。


「表立って公表はしないでしょうが、今も昔も生物実験の研究は進められていると思います」


 と、さらっと裏話を暴露した。


「私がアスピドに行きたい理由は、かつて同じ研究所にいた仲間の安否を確認したいからです。……近頃研究所を狙ったテロが頻繁に起きていると聞きまして……」


 不安そうに告げるパルネに、サイカは「ふむ」と一言。


「やはり非人道的な実験を行っているという噂は本当だったか。……これが国絡みでないと願いたいが……」


 これからアルミスを連れて向かう町に不安が重なるサイカ。

 そしてサイカは、ポロ達の船に同乗したいというパルネを見つめ。


「パルネと言ったか? 理由は分かったが、私はお前の素性をよく知らん。今回は王の命を受けての移動である為、あまりイレギュラーな事態は避けたいのだ。せめて自身が安全である証拠のようなものがほしいのだが」


 と、やんわり断る方向に持っていくと。

 ノーシスは「ではこれを」と、分厚い資料をサイカに渡した。


「なんだこれは?」


「彼女のこれまでの経歴を書き記したものです。と言っても五年近く人里離れた森に隠れ住んでいたので目立った経歴はありませんが、しかし周辺の村人などの証言を元に書いた資料ですので彼女の証明書代わりにはなるかと」


 サイカは文字だらけの資料に「う……」と眉をひそめる。


「……これを読めと?」


「彼女は元々孤児でして、身分を証明する物がないのです。ですからせめてこれを生きた証としてご閲覧頂きたい。我がギルド長から直筆のサインももらっているので」


 淡々と言い寄るノーシスにサイカはたじたじ。


 口論になった際の相性はすこぶる悪いだろうと、口には出さずとも皆心の中で呟いた。


「……分かった。しかし王に確認を取ってからだ。私の一存では決められんからな」


「ならば早々に返事を頂きたい。僕としても時間を無駄にはしたくないので。無礼でなければ僕が直接謁見しに向かいますが?」


「いや、いい。私が確認を取る。お前はそこで待っていろ」


 と、足早にサイカは去っていった。

 ポロとメティアはその後ろ姿を眺め。


「マウント取られそうになったから逃げたね」

「セールストークに弱そうな子よね」


 たまに見せる彼女の弱みに可愛げを見出だした二人は、微笑みを浮かべながらしみじみと手を振った。


 ノーシスは眼鏡の位置を整えると。


「そういうわけで、僕は今回仲介役として来たんだよ。僕が送ってあげたいところだが、なにぶん仕事が溜まっていてね。そちらまで手がいかないんだ」


 と、ポロに金の入った小袋を渡す。


「先に依頼料を渡しておくよ。副団長が戻るまで時間がかかりそうだから、僕はここで失礼する」


「えっ、サイカに待っていろって……」


「代わりに確認を取ってもらえるかい? ギルド長お墨付きのサインをもらっているんだ。わざわざ彼女をアスピドに送るだけの用事で、ロアルグ王が断るとは思えない」


 そう言って、ノーシスはパルネの肩を叩き。


「僕の仕事はここまでだ。後は君がどうするか……君自身で決めてくれ」


「……はい、お世話になりました」


 軽く挨拶を交わした後、ノーシスは手を振り去っていった。


「極力無駄を省く性格は相変わらずだな~ノーシスは」


「あんたとは対照的だね。でも、ポロが船長で良かったよ。ノーシスの部下だったら息苦しくてやってられないだろうね」


 と、去り行くノーシスを思い思い勝手に評価するポロとメティア。

 そしてポロは再びパルネに目を向け。


「それじゃあ、短い間だけどよろしくね、パルちゃん」


 ニコリと笑い友好的に手を差し出す。


「はい、よろしくお願いします」


 と、同い歳そうな見た目の先入観で親近感が生まれ距離を詰めるポロだか、彼女のほうが一回りも歳上だという事実はまだ知らない。





ご覧頂き有難うございます。

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