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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第一章 世界の支柱、『黒龍の巣穴』攻略編
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6話 国王陛下と謁見


 謁見の間

 赤じゅうたんが目立つ大広間、横並びで剣を立てる騎士の壁。

 その中央で、サイカに連れてこられた三人は、彼女と並んでその場に跪く。


 目の前には玉座が二つ。

 そこにはロアルグ・レアロード・セシルグニム国王陛下と、並びには王妃であるリースライト・フレイヤ・セシルグニム陛下。


 人間の王と、エルフの王妃である。


 他種族同士でのカップリングは王族ではめずらしく、様々な情報が飛び交う飛行士の間でも有名だった。


 純潔な血筋を重んじる者達からの反発はあれど、二人の絆は種族間での争いを無くす平和の象徴として、多くの者から称賛の声が上がる程に、世界からは重要視されている。

 その両陛下から向けられる視線は一介の飛行士達には慣れない機会であり、とくにメティアは冷や汗が止まらない。


 そして、長い間があり、ようやく王は口を開いた。


おもてを上げよ」


 一同は真っ直ぐ王に視線を移す。


「此度の『浮遊石』の提供、改めて礼を言う。これで我が国に今しばらくの安泰が約束された」


 と、王は気にかかる言葉を言った。


 ――今しばらくとは?


 王は続ける。


「そなたらを今日ここへ呼んだのは、一つ頼み事を引き受けてもらいたくて声をかけたのだ」


 そして再び告げられる王直々の依頼。


「……あまり声を上げて言えないのだが、今この国はある問題を抱えていてな」


 三人はある程度予想していた。

 今回の依頼にも関係のある事態だと。


「知っての通り、我が国は地中に眠る『浮遊石』おかげで今まで空中都市として栄えていた。…………だが、ここ数年で『浮遊石』の魔力が著しく減少しているのだ」


 そもそもこの大地自体が巨大な『浮遊石』に支えられている為、本来ならばわざわざ他国から『浮遊石』を輸入する必要などない。


 にも拘らず、他でもない王からの依頼で受けた今回の運搬。それはこの国にとって重大な問題を抱えているのではないか、と。


 かくして三人の予想は当たった。


「今は他の魔鉱石から抽出した魔力を地中にある『浮遊石』に注ぎ効果を維持しているのだ。加えてそなたらのような飛行士に魔鉱石の輸入を依頼しどうにか凌いではいるが、これも長くはもたぬ。近い将来、セシルグニムは地上へ落ちるだろう。事前に民を避難させたとしても、失うものは大きい」


 命あっての物種とは言え、この国を拠点に生活していた者にとって、土地という財産を失うのは大きい。


 今すぐにではないにせよ、いずれ大地が落下する未来が訪れるならば、逃げる暇もなくその天災に巻き込まれる人も少なくない。


 そうなれば事実上、この国が滅びる運命は避けられないのだ。


「そこでそなたらに頼みたいのは、セシルグニムの『浮遊石』と同等の魔力を持つ魔鉱石を運んでもらいたいのだ」


「えっっっ!」


 思わずメティアは声を上げた。


「お、お言葉ですが陛下、私達は名も実績もない末端の飛行士にございます……。世に流通している魔鉱石であるならともかく、セシルグニムと同等の物の手配となると、私達ではコネクトがございません……」


 と、緊張気味に訴えると。


「もちろん、一般経路で取り寄せる事は不可能だろう。よって今回は、我が国の管轄下にある土地での採掘が目的だ。その為の送迎をそなたらにお願いしたい」


 分かっていると言わんばかりにメティアに返す。


「と、言いますと?」


「『世界の支柱(せかいのしちゅう)』と呼ばれる場所を知っているかね?」


 一同はピクリと固まった。

 王の言う『世界の支柱』とは、この世界に四つ存在する魔の迷宮、ダンジョンと名の付く危険地帯の総称である。


 ダンジョンがある場所には必ず光の柱が上空へ立ち上り、その光は絶えず止まず輝き続けることからそう呼ばれていた。


「今回はそのうちの一つである『黒龍の巣穴(こくりゅうのすあな)』、ここが我々の自由に立ち入れる土地だ。その最深部にある魔鉱石の回収を手伝ってもらいたい」


 しかしダンジョン内部は凶悪な魔物の住処となっている。腕の立つ冒険家が十数人、何日もかけてようやく攻略するような場所。それこそ一介の飛行士では縁のない話である。


「ご無礼を承知で申しますが……さすがにその仕事は私達には荷が重すぎます。フリングホルンの飛行士の中には軍事用に戦闘訓練を受けた者もおりますので、その者にお声がけ頂いたほうがよろしいかと……」


 メティアがそう言うと、王は「ふむ」と一呼吸置き。


「時にメティア、そしてポロよ、そなたらは以前冒険家稼業をやっていたそうだな」


「っっ!」


「そしてタロス、そなたは昔、グリーフィル王国に仕える子爵家で傭兵を務めていたと聞き及んでいる」


『…………』


 一同は口を閉じた。


「……すまない、少しそなたらの過去を調べさせてもらった。その実績もな。そのうえで今一度頼みたい。今回は並みの冒険家程度では手に負えない場所だ。当然ダンジョン周辺にも危険な魔物が生息している。ならば移動の要である飛行士も、ある程度戦闘経験を積んだ者に任せたいのだ」


 王は調べ上げていた。彼らの経歴を。

 彼らの強さを。


「もちろんこちらから王国騎士を数人派遣し、腕利きの冒険家にも声をかけてある。だがあの迷宮の危険度は未知数だ。もしもの場合、即座に撤退出来るように臨機応変に動ける者が良い……だからこそそなた達を推薦したのだ。分かるかね?」


 この流れでは断れない。そもそも王直々に命を下されたら断れるはずがない。

 一仕事終えてようやく気が休まると思ったのも束の間、メティアは新たな不安を抱えることとなった。


「王様、一つよろしいですか?」


 と、皆が畏まる中、ポロは変わらぬ口調で王に尋ねる。


「この依頼を達成したあかつきには、報酬は如何ほど頂けるのでしょうか?」

「かっっ…………!」


 メティアは凍り付いた。


「き、貴様、国王陛下の前でなんたる無礼を!」


 近くにいたサイカは腰に下げた剣を構えるが。

 王は高笑いで返し、サイカに向けて「よい」と一言。


「そうだな、命がかかわる仕事だ、それ相応の報酬はやらねばなるまい。私の財で収まるものならば、そなたの望むものを与えよう」


「かしこまりました。ではお引き受け致しましょう」


 こうして、一介の飛行士達は『世界の支柱』攻略の任を受けた。





ご覧頂き有難うございます。


それと、ブックマークして下さった方に多大なる感謝を!

本当に有難うございます!

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