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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第二章 妖精達の楽園、アルマパトリア編
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66話 VSアルベルト【3】


 突然人型に姿を変えたミーシェルにリミナは困惑した表情を浮かべる。


「え……あの子誰?」


 気配もなく現れた獣人をまじまじと見つめ、そう呟くリミナ。


「ミーちゃん……ダメだよ……離れて」


「お断りですニャ。ミーシェの役目はご主人を守ることニャンだから」


 ポロの静止に首を振るミーシェルは。


「差し当たっては……その物騒な光を奪わせてもらうニャ」


 アルベルトの指先から放たれようとしている光線を見ると、突如ミーシェルの体が黒く染まり、彼に向けて吸収魔法を放つ。


「【吸魂の黒猫(グレイマルキン)】!」


 彼女の口から渦巻く球体が生まれると、その球体に吸い込まれるようにしてアルベルトの体からみるみると魔力と体力を奪ってゆく。


「む……これは……」


 痛みはないが、体から何かが抜けてゆく感覚に違和感を覚えるアルベルト。

 打撃、斬撃、魔法攻撃とは違う、吸収攻撃であるが故に、反射魔法も効果がない。


 指先に充填した熱光線は瞬く間に彼女の養分となって消える。


 今まで受けたことのないスキルに困惑しながらも、魔力の質と、人族とは違う気配に、アルベルトは彼女を見て妖精族だと認識する。


「その魔力、その成り、あなたは……ケット・シー、ですかな」

「正解♪ ご褒美にこれをあげるニャ」


 そう言ってニヤリと笑い、手をクロスさせると。


「【超刃爪術イクシード・タロン】!」


 吸収した全ての魔力を注ぎ、ミーシェルは巨大な爪の斬撃を飛ばした。

 爆風のような風圧が巻き起こる中、アルベルトは地を引きずりながら吹き飛ばされる。


 そして強力なスキルを放ったミーシェルは、体から黒い色素が抜けると同時にその場に膝をついた。


「ミーちゃん……無茶しすぎだよ。内包する魔力量がゼロになると消えちゃうんでしょ?」


「ふ……ニャハハ、これくらいなら許容範囲ニャ。それよりもあのおじい、ミーシェの全力スキルでも切り裂けニャかった」


「うん、でも僕が回復する時間は稼いでくれたよ。ありがとう」


 体のバネを生かして飛び起きると、深くえぐれた胴体を晒すアルベルトを見ながらポロは手に持っていた武器をしまう。


「おじいさん、ここまで戦っておいてなんだけど、一度休戦して、話し合いで解決する気ない?」


 突然のポロの提案に、アルベルトは疑問に思う。


「いかがされました? 武力では私に勝てないと知り、話し合いでこの場を切り抜けようとでも?」


「勿論それもあるんだけど……おじいさん、一度も殺気を見せてないよね」


 アルベルトはピクリと、無言で反応した。


「攻撃してはいるけれど、そのどれもが致命傷にならないよう加減されたものだった。僕達を殺す気がないように思えてね」


「何を言うかと思えば。ずいぶんと都合の良いように解釈なされたものだ。仮にあなた方に手心を加えたとして、先程の妖精達を殺めた事実は変わらないというのに」


 すると、痛む体を起こしながら、リミナはポロの発言に強く反論した。


「そうよ……こいつはアニス様達の仇なの! ここで倒さなくちゃならない相手なのよ!」


 リミナの言い分に静かに頷きながらも、ポロはアルベルトの目を見て真意を探る。


「本当にシルキーさん達を殺めたの?」


 その現場を見てはいない。そしてアルベルトの視線の揺らぎを見て、わずかに動揺している素振りが窺える。


 ポロの洞察眼からは逃れられないと知ったアルベルトは、軽く息を吐きながらその重い口を開く。


「……私は」


 と、言いかけた時。



「あなた達、ここで何をやっているの!」



 突然松明のような明かりが照らされると、奥からリミナの母親、エスカが複数の兵を連れて現れた。


「リミナ……それにアルベルトさんも……」


 カボチャに宿った火の精、ジャック・オ・ランタンに前方を照らさせ、エスカは今の状況に困惑する。


「ピクシーからの伝言を受け取って来てみれば……これは一体どういうことなの? リミナ、その傷は?」


 すると、アルベルトはエスカに弁解した。


「おたくのお嬢さんが契約に反して『紅炎石』を持ち去ろうとしましてな、正当防衛で抵抗させて頂きました」


 エスカはリミナに視線を合わせ、娘の行動に疑問を抱く。


「リミナ、どうして……」


「たしかに本当の事だけど、この男との契約を守る義理はないわ……。こいつは、アニス様を殺したのよ!」


「えっ……?」


 リミナの言葉に、エスカは固まった。


「そんなわけ……ないでしょ。この人は『妖精の森』で名の知れた薬師なのよ。自分から地位を落とすようなことするわけないでしょ。ねえ?」


 と、物騒なことを言う娘を否定し、アルベルトへ同意を求めるが。

 アルベルトは何も言わず、視線を逸らしたまま。


「それに……アニスは『吸血妖精バーバンシー』よ? 血があれば死ぬことはないんだから。リミナ、あなたは誤解しているのよ」


 そうであってほしいという願いが含まれた、自分に言い聞かせる気休め。

 何かの間違いだろうと、じっとアルベルトに視線を向けると。


「その件に関しての真偽がどうであれ、お嬢さんの契約違反は明らか。ともすれば、なんらかの形で処罰を受けるのは道理でございましょう」


 そう告げるアルベルトの言葉にさらに不安に駆り立てられる。


「否定、なさらないの?」


 恐る恐るアルベルトに尋ねると。


「今更の虚偽は不要でしょう。すべてはあなたの娘さんが招いた結果でございます。リミナお嬢さんが『紅炎石』を求めてこの町に来ることがなければ、誰も血は流れず、エスカ様との契約も円滑に進んだことでしょうな」


 原因はリミナにあるとアルベルトは主張する。


 エスカはリミナを見つめながら、なんと言えばいいか分からず複雑そうな表情を向け、アルベルトへの返答を決めかねていた。





ご覧頂き有難うございます。

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