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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第二章 妖精達の楽園、アルマパトリア編
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65話 VSアルベルト【2】


 圧倒的な硬度をほこる転生者、アルベルトは、かすり傷でも自身にダメージを負わせたリミナに期待し、さらなる一打を求む。


「さあ、休んでいる暇はございません。何せ私はあなたの恩人の仇なのですから」


 疲弊するリミナに煽るアルベルト。


 ――やっぱり……アニス様もワルターも……シルキーも……。


 もういない。目の前の男にやられてしまったのだと理解した。

 再び怒りがこみ上げ、消耗した体に鞭打ちながらリミナは立ち上がった。


「絶対に許さない……アタシが、あんたを……」


 そしてハルバードを構え、思い切り突進する。


「それではダメだ。まるで気が練られておりません」


 と、中途半端な攻撃にダメ出しするアルベルトは、彼女が接近する直前、彼女と間合いを詰め、額に目掛けてデコピンを放つ。


「っっっ!」


 単なる指弾きであるはずの攻撃は、思わぬ強打に脳を揺さぶられ、リミナは宙を舞いながら地面に転がり落ちた。


「ぐっ……くそっ! ……?」


 態勢を立て直し起き上がろうとするリミナだが、突然体が鉛のように重くなり、呼吸が苦しくなる現象に見舞われる。


「な……これは……」


「失礼、私の体には数十種類の魔鉱石が仕込んでありまして、これはそのうちの一つ、『重荷石』の力でございます」


 自身にかかる重力負荷は徐々に増していき、地面に亀裂が入る程の力に押し潰される。


「がっ……あっ……」


 上体を起こせないリミナはその場でうつ伏せに倒れ、飛びそうな意識を必死に保つ。


 ――動けない……こんなところで……。


 みしみしと骨が軋む音に恐怖が駆り立てられ、抗う気力を失ってゆく。


「これはペナルティーです。半端な攻撃を向けたあなたへのね」


 リミナを見下ろしながら、さらに負荷をかけてゆくアルベルト。


 と、その時。油断していたその男の首に向けて高速の斬撃が振るわれた。


「【双剣の牙(クロス・ファング)】」


 不意を突いたポロの双剣の一撃は、アルベルトの外皮を斬り、鉱石が詰まった内部にまで届いた。


「からの……【螺旋の牙(スパイラル・ファング)】」


 さらにバランスを崩したアルベルトの体に回転を加えた斬撃を浴びせる。


「むう……?」


 深手にはならずとも、ポロの連撃はアルベルトの内部にダメージを通したことで、リミナにかかっていた重力負荷が解けた。


 その威力に男は歓喜する。


「これは見事、ここまで私に刃を通すとは……。さすがはオニキス君が一目置くだけある。怒りに任せた単調な攻撃じゃないのも評価出来ますな」


 先程までの緩い視線から一変、冷静に獲物を狩る獣の目をしたポロに、アルベルトはこれまでで一番の期待を向けた。


「オニキス君って、もしかしてあの金属使いの人?」


「左様。我々転生者は、元よりこの世界を有利に生きれるよう固有能力を頂いております。ですがあなたは我々のアドバンテージをものともせず、対等に渡り合える数少ない人物だと聞き及んでいます。いや、実に楽しみですな」


 表情は変えぬまま、しかしどこか高揚した様子でポロを称賛するアルベルト。


「……それは違うよ。あの時はサイカが先に戦って、体力を消耗させてくれたから勝てたんだ。僕個人の力じゃない」


「ご謙遜をなされる。私にこれ程の傷を付けられるのですから、誇って良いですぞ」


「それもこの武器のおかげさ。狼王フェンリルの牙、この切れ味が無ければおじいさんに刃は通らない。……けど」


 話の途中でポロは瞬時にアルベルトの懐へ潜り。


「みんなに支えられてるから、僕は強くなれる!」


 アルベルトの顎に目掛けて斬り上げた。


「【烈波殲牙スラッシュファング】」


 至近距離からの斬撃でアルベルトを浮かせると、ポロはそのまま飛びかかり自身の足に闇魔法で黒き尾を生成し。


「【半人半蛇の尻尾(エキドナ・テイル)】」


 かかと落としで尻尾をしならせ、脳天に黒い鞭を叩き付けた。


「ぬぐっ……」


「まだだよ……【幻影分身ファントムアバター】」


 直撃を受け仰向けで倒れるアルベルトへ、さらに追撃でポロは影の分身体を生み出し。


「【双頭犬の牙(オルトロスファング)】」


 高く飛び上がり、落下スピードを乗せ、片方ずつ剣を構えたポロと分身体はアルベルトに強力な刺突を放つ。



 すると。

 アルベルトに剣先が触れた瞬間、凄まじい衝撃波がポロに浴びせられた。


「うっっっ!」


 骨の髄にまで衝撃が伝わる波動によって、ポロは胃液を吐きながら宙に吹き飛び、分身体は一瞬にして搔き消える。


 受け身を取れずに落下したポロは、痙攣する上体を無理やり起こし、何が起きたのか分からぬままアルベルトを見上げた。


「失礼、『反引石』による【自動反射オートカウンター】が発動したようです。気を緩めると勝手に反応してしまうじゃじゃ馬でしてね、私も扱いに困っているのですよ」


 まるでダメージを負っていない様子で立ち上がるアルベルトは、残念そうに自身の付与効果を嘆く。

 人工皮膚が剥がれ、体中に埋め込まれた魔鉱石がむき出しになる胴を見ながら。


「ふむ、大変惜しい結果ですな。あなたならもしやと思いましたが、やはりダメでしたか」


 溜息を吐きながら、アルベルトは自身の皮膚に治癒魔法をかけ修復する。

 その姿に、未だ地面に伏せるリミナはその場で打ちひしがれた。


「そんな……ただでさえ異常な硬度を持っているのに、反射魔法に治癒魔法も使えるなんて……」


 この男に抗う術はなく、抵抗するのは無駄なあがきでしかないのか。

 そう思う中、しかしと、リミナは思考する。


 ――あの体が魔鉱石で出来ているとして、物体を引き離す『反引石』を取り込んでいるのなら、どうして他の鉱石と喧嘩せずくっついていられるの?


 必死に頭をフル稼働させ、相手の弱点を見定める。


 ――考えられるのは、反発する魔力を無視して物体を繋ぐ『融合石』が体内に埋め込まれているから……。


 そう思いながらも、実際アルベルトの体の中から魔鉱石を取り出すのは極めて困難だと理解していた。


 ――せめて相手を弱体化させる魔法でも覚えていれば……。


 と、そんな後悔を抱いている間に、アルベルトはポロに人差し指を向ける。


「どうやら、あなた方でも役不足だったようだ。もう終わりにしましょう」


 そして指先から熱光線の光が照らされ、動けないポロは死を覚悟した。


 その時、ポロのそばにいたミーシェルが突然宙へ飛び上がり。


 眩い光と共に、人型へと変貌した。



「ご主人はやらせニャい。ミーシェが守るニャ」



 リミナよりもさらに幼い姿で変身した獣人のような少女は、ポロを庇うように前に立ち、鋭い眼光でアルベルトを睨み付ける。





ご覧頂き有難うございます。

もう2話程アルベルト戦が続く予定です。

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