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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第二章 妖精達の楽園、アルマパトリア編
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63話 紅炎石の眠る祠


「ご到着~『くれないほこら』入口でございま~す」


 ここは『妖精の森』の一角、ハルチェット家が所有する区画、『紅の祠』。

 陽気なドライアドに引っ張られ、ポロとリミナは強制的に『紅炎石』のある場所へ転移させられた。


「うぇ……やっぱり気持ち悪い……」


 慣れる気がしない転移酔いに気分を悪くするポロの肩で、ミーシェルがさり気なく治癒魔法をかける中。

 リミナは暗い表情を浮かべながら俯いたまま動かず。


「リミナ……気持ちは分かるけど」


「分かってる。ここで目的を果たさなければ、シルキーの行為が無駄になるって」


 皆まで言うなとポロを静止し。


「けどね、シルキーもそうだけど、ワルターとアニス様はアタシの恩人なの。母様と喧嘩して、家出したアタシに生きる術を教えてくれたのよ」


 やるせない気持ちを胸に、恩人を巻き込んでしまった自分を責める。

 そして昔を懐かしむようにリミナは語った。


「冒険家になると思い立ってから、小さい頃から良くしてくれた妖精側の領主、吸血妖精バーバンシーのアニス様に頼み込んで、戦闘の仕方やサバイバルの知識を授けてくれたの」


「妖精の領主さんとも知り合いだったんだ」


「両親と会談しに、よくアタシの実家に来ていたから。それに、アタシが小さい頃難病に侵された時、アニス様の治癒魔法で一命を取り留めた過去があってね、あの方は命の恩人なの」


「難病?」


 ポロが問うと。


「父様の死因と同じで、寿命が急激に早まる病気。突発性の病でね、死ぬ間際だったアタシに、アニス様は身体的寿命を止める術を施したのよ」


 そしてリミナはくるっと一回転し、自分の体をポロに見せつける。


「アタシの体が成長しないのもその魔法の影響。不死ではないけど不老なの。ずっと子供の体なのは不満はあるけど、助けてくれたアニス様には感謝してる」


「……そっか」


「だから……恩を仇で返す形になった自分が許せない」


 再び自己嫌悪に浸るリミナに、ポロは彼女の両肩をポンと叩く。


「それじゃあ魔鉱石を回収したら助けに行こう。あのおじいさんの手に魔鉱石が渡る前にどこかに隠してしまえば、遠慮なく戦える」


 ポロの提案に、リミナはわずかながら心の仕えがとれた。


「うん、力を貸して」


 そしてお互い合意の上、二人は早々に魔鉱石の回収に向かった。











 祠がある入口付近にて。


「っっ! リミナお嬢様、お戻りになられたのですか?」


 深夜の警備兵に鉢合わせると、リミナはコクリと頷く。


「『紅炎石』を回収しに来たの。通してくれるわね?」


「しかし……『紅炎石』は昼間に売却の契約をされたはずでは?」


「ええ、だから代わりにアタシが届けに行こうと思ってね」


「え? そのような話は聞き及んでいないのですが?」


「いいから、ちょっと通るわよ」


 困惑する警備兵を他所に、リミナとポロは堂々と中へ入って行った。


「……こんな深夜にお嬢様が……。エスカ様に報告したほうがいいのだろうか?」


 奥へ向かう彼女の背を見ながら、警備兵は近くの妖精に伝言を頼んだ。











 それからしばらく、二人は所有地の森を歩いていると。


「へえ~、ここら辺、色んな魔鉱石が落ちてるんだね」


 興味津々に、道行く先に転がる魔鉱石の欠片を拾うポロ。


「ここは『妖精の森』の中でも特にマナが豊富だからね。何もしなくても魔鉱石が自然発生するのよ」


 そんなポロに、リミナは道端に埋まっている魔鉱石を指差し説明した。


「あれは凍土のマナを内包する『氷結石ひょうけっせき』、それは周囲に重力負荷をかける『重荷石おもにせき』、後は物体同士を反発させる『反引石はんいんせき』ね」


「ほぇ~、どれも武器の材料になるやつじゃん。これを売ったら結構なお金になりそう」


 と、キラキラした目で見つめるポロに、リミナは暗い表情で返す。


「昔はそれで生計を立ててたんだけどね、今はこの町自体が観光地になったから、母様がツアーガイドの斡旋やらお土産品なんかの販売を始めて観光客から金をふんだくってるわけよ」


「言い方悪いよ……自分の家の事じゃん」


「別に、父様の頃とはずいぶん手法を変えたなって思っただけ。どうせあの人はお金の事しか考えてないんだから」


「……さすがにそれだけじゃないんじゃない?」


 と、よく知らない彼女の母親をフォローしながら、その話を聞く気のないリミナの後に続き黙々と歩く。




 すると、前方にポツンと佇む小さな祠が見えてきた。


「この中よ。さっさと回収してシルキーを助けに行かなきゃ」


 そして、人間の子供サイズの御殿に施された、特殊な魔法陣の封印を指先でスライドしながら解錠し、その小さな扉を開けると。


「待ってリミナ! 誰かいる」


 途端、周囲に気配を感じたポロは茂みの奥に視線を向けると。



「おや、さすがは獣人ですな。五感が優れていらっしゃる」



 突然現れたアルベルトに二人は戦慄する。


「わざわざ鍵を開けて頂き感謝致します。エスカ様からパスコードを聞く手間が省けましたよ」


 折れた掃除用モップを片手に、アルベルトは二人に近づく。


「それ……シルキーの……」


 無傷でアルベルトが立っている事、そしてシルキー愛用の武器が折られている事から、リミナは体を震わせながら男に問う。


「彼女を、どうしたの?」


 男はアゴ髭を擦りながら。


「あなたの想像にお任せしますよ。悪い意味でね」


 挑発するように彼女に返した。


 直後、リミナの身体中から溢れんばかりの闘気がほとばしる。





ご覧頂き有難うございます。

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