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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第二章 妖精達の楽園、アルマパトリア編
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50話 新たな旅立ち


『世界の支柱』のダンジョン攻略から数カ月。


 空中都市セシルグニムのとある公園にて。


「ん~、ミーちゃんは今日もいい匂いだねぇ~」


 青空の下、『浮遊石』が埋め込まれた空中椅子エアロチェアーに腰掛け、愛猫を抱きかかえながらスンスンと匂いをかぐポロ。


 すると、その猫は突然ポロに向けて念話を放った。


『ご主人、いくらミーシェが魅力的だからって、女性の体臭を嗅ぐのは失礼ですニャ』


 彼女は猫の妖精ケット・シーである。


 普段は猫の姿で人の暮らしに溶け込んでいるが、いざという時は獣人のような人型に姿を変えて契約者を守る、珍しき妖精。


 彼女がケット・シーであることはポロとメティア以外は知らず、他の者達は普通の猫と認識している。

 名をミーシェルという。


『さてはご主人、姉君の残り香で甘えん坊だった昔を思い出し、ノスタルジックな気分になっていますニャ? このシスコンめ!』


 などと冗談めかしてポロをからかうが。


「ミーちゃんがクル姉の使い魔だったのはもう何年も前でしょ。匂いなんて残ってないよ」

『まじめに返されると反応に困るニャ……』


 彼女の冗談に乗っかる元気のないポロに、ミーシェルは心なしか心配になる。


『ご主人、仕事がお休みになってから少し元気がないニャ』


「そんなことないよ、何もしなくても国からお給金が出るし、宿もタダ。暇なら冒険家ギルドで適当なクエストを受けられる。……こんなに自由な暮らしが出来るんだから毎日が幸せだよ」


 などと口では言うものの、ミーシェルは気づいていた。


『処分を受けたこと、気にしてますニャ?』

「…………う~ん」


 はぐらかすように、ポロはミーシェルの背に顔をうずめる。


『あれはご主人のせいじゃないニャ、だから気にすることな……ニャハハ、くすぐったいニャ! 鼻先を擦りつけるニャ!』


 慰めは不要だと言わんばかりに、ポロはミーシェルをくすぐりながら。


「……失敗は失敗だからね。魔鉱石を運搬するのが僕の仕事だった。理由がどうであれ、それが出来なかったのなら、魔導飛行船の船長として責任を負うのは当然。それに関しては受け入れているよ。だけどね、その汚名を返上する機会がないのは……少しモヤモヤするかな」


 飛行士として運搬の仕事を請け負いこの国に貢献したいものの、免許停止処分を受けている為仕事を受けられない。

 そんなやるせない思いを抱きながら毎日を過ごしていた。


 と、そんな時。


「あっ、やっと見つけた。お~い!」


 空中椅子エアロチェアーの真下から声がした。

 ポロがちらりと目を向けると、そこには以前共闘したSランク冒険家、リミナが手を振り呼びかける姿。


「リミナ?」


 ポロは手すりにある紋章に手の平を乗せ、自身の魔力を注ぐ。

 すると空中椅子エアロチェアーはポロの意思に呼応するように、リミナの元まで下降していった。


「久しぶりね、元気にしてた?」

「毎日ぐ~たらした生活を送っているよ。そっちは?」


 気さくに話かけるリミナに惰性的な返しをするポロ。


 ちなみにミーシェルはリミナが来たことにより念話をやめ、何事もないように普通の猫を装う。


「怠けてるわね~。アタシは拠点にしていたグリーフィルに戻って、組んでいた冒険家パーティーを一時離脱してきたの」


 と、リミナの発言にポロは驚いた。


「どうして? Sランク冒険家ならたくさん仕事をもらえるんじゃないの?」


 勿体ないと、ポロはリミナに疑問を抱く。


「まあそうなんだけど、この間のダンジョン攻略で、自分の不甲斐なさを痛感したのよ。だから一度Sランクパーティーを離れて、フリーの冒険家として一から鍛え直そうと思って」


 Sランクのブランドを失うということは、それだけで様々な国からの仕事の依頼がなくなる。

 今まで契約していたスポンサーも解消される為、自分で一からクエストを受注しなければならない。


 しかし、リミナはどこかスッキリしたような表情を向けていた。


「それで物は相談なんだけど……一度アタシとパーティーを組んでみない?」


「え……僕が?」


 キョトンとしながらポロは見つめる。


「ほら、あんた今休職中で暇でしょ? だったらアタシと一緒に仕事しましょ? もちろん報酬はきっちり山分けするから」


「それは構わないけど、どんなクエストを受ける予定なの?」


 するとリミナはニヒっと笑い。


「今回はアタシ個人の依頼。アタシの実家がある町まで飛行船で連れてって」


 ひょいとポケットから取り出した鍵をポロに投げる。


「これは?」


「以前アタシが個人購入した、自家用船のエンジンキーよ。運送ギルドとして仕事をするなら罪に問われるけど、個人的に実家へ向かう分には飛行士の免許は生きてるでしょ?」


 よく買う金があったなとポロは軽く息を吐きながら、その鍵を握りしめた。


「まぁね。……それで、行き先は?」


 などと平静を装うポロだが、久々の空の旅に彼は内心うずうずしていた。

 どんな場所なのかワクワクしながら尻尾を振り、気になる詳細をリミナに問う。



「人と妖精が共存する町、アルマパトリア」



 そのポロの様子に微笑を浮かべながら答えるリミナ。


 こうしてリミナを仲間に加え、ポロ達の冒険は新たな幕を迎える。





ご覧頂き有難うございます。


ブックマークと評価を下さった方、本当に有難うございます。毎日の励みにさせて頂きます。




話は変わり私事なのですが、先日会社の異動で他県に引っ越し致しました。


……それに伴い、新生活の準備などで更新日が変動するかもしれません。

出来るだけ平日は毎日投稿を目指しますが、間に合わない場合もありますことをお伝え致します。


コロナ禍ですが、皆様体調には十分お気をつけ下さい。

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