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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第一章 世界の支柱、『黒龍の巣穴』攻略編
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4話 空中都市セシルグニム


 ショウヤ達一行を助けた後、魔導飛行船は再び運転を再開する。


「ホントにいいの? 近くの町までなら送ってあげられるけど」


 ポロはショウヤに尋ねると。


「いいんだ。せっかくだから自分の足で世界を回ってみるよ」


「移動は馬車だけど?」


「そこはいいんだよ! それにほら、こいつらも故郷に送ってやりたいしな」


 元奴隷だった少女達を見ながら、これが自分に出来る最善だとショウヤは思った。


 はじめはポロの飛行船で少女達を安全な場所へ送ってもらうつもりだったが、少女達は奴隷から解放してくれたショウヤに恩返しがしたいと懇願したことにより、一人で旅をするつもりだった彼の計画は頓挫した。


 そしてショウヤは彼女らの意志を汲んで、共に旅を続けることにしたのだった。


「さすがにあんたらにそこまでしてもらうわけにはいかないからな。後は自分の力で生き抜いてやるさ」


「そっか」


「あ~この礼は、いつかセカンドライフが軌道に乗って大金を手にした時に必ず返すから」


「そうだね、その時は金貨十枚で手を打ってあげるよ」


 と、ポロが冗談めかして言うと、ショウヤのそばにいた少女達は皆血の気が引くような、真っ青な表情を浮かべた。


「き……金貨、じゅうまい?」

「私達……返せるのかしら……」


 なお、金貨一枚の価値は、ショウヤの世界で言うところの約五万円。

 この世界の平民が半月働いてようやく貯まる額である。

 故にその十倍、階級の低い貧民層ではなかなかにハードルの高い額だった。


 だが、その価値を知らぬショウヤはケロッとした表情で返す。


「? ああ、任せろ、約束は守る!」


「えっっっっ!」


 開いた口が塞がらない。

 少女達にとってポロの愛玩動物のような笑顔は、この時ばかりは悪魔のように見えたことだろう。


「ふふ、期待しないで待ってるよ。それじゃあね!」


 そう言って、ポロは飛行船に乗り込んだ。


「おう、あとダークエルフの姉さんと……人形? の人もありがとな!」


 そしてメティアとタロスにも別れの言葉を添えると。


「黒エルフよ。次ダークエルフって言ったらダガーで切り刻むぞ」

「…………あ、すいません」


『俺の種族名はゴーレム、そして元人間だ。安易に見た目で人種を決めつけぬことだな』

「…………ホント、すいません」


 素で怒られた。


 こうしてポロ達はショウヤと別れ、本来の目的であった空中都市へと進路を戻す。









 空中都市セシルグニム。


 空中都市と名の付く通り、町全体が巨大な大地に支えられながら浮遊する、世界的にも有名な都市国家である。


 町の中心部には、重力を無視して浮かび上がる『浮遊石』という鉱石が埋まっているとされ、その大きさは城の面積をはるかに凌ぐという。


 そんな膨大な魔力のこもった魔鉱石に支えられ、この国は幾百年栄え続けていた。


 空を渡る乗り物がなければ入国出来ない場所ではあるが、その人気は衰えず、今でも観光名所として世界各国から旅行客が殺到している。




 あれから二時間程飛行したのち、ポロ達はようやく目的地へと着いた。


「うあぁ~ここがセシルグニムの中心地か……すっごくおっきいね~」


 入国手続きを済ませたポロ達は、1トンはあろうかという浮遊石を小分けにし、国専用の荷馬車複数台で城までの道中を進む。


「ここは世界三大都市で有名だからね。よく貴族や王族なんかもお忍びで観光に来るんだとさ。だからポロ、あまりはしゃがず目立った行動はしないようにするんだよ?」


 念を押すメティアだが。


「ねえメティア、仕事が終わったらちょっと観光してこうよ。僕炙り骨付き肉が食べたい」


 メティアの膝に顔を乗せ、足と尻尾をバタバタさせる姿は子供そのもの。


「はしゃぐなっつの……もう」


 と言いながらもメティアは母性を刺激され、無意識にポロの頭を撫でる。


『やはり、お前もポロには甘いな』


 対面の席に座っていたタロスはボソッと呟いた。


「うっさいわね! 私はこれから城に行くってだけで滅茶苦茶緊張してんのよ。せめて今だけはこのモフモフを愛でて気を紛らわしたいんだよ!」


『王族に会うのは初めてか?』


「そりゃあね、あいにく社会的地位が高い者と交流がなかった下民なもんで、マナーなんてものを勉強する機会がなかったのよ」


 タロスは『ふむ』と一息置いて。


『ならば報酬などの対応は俺がやろう。幸い俺は貴族に仕えていた時期がある。それにこの体に換えてからは感情が希薄でな、今のメティアよりは落ち着いて話せると自負している』


 無機質な魔導生物は善意でその仕事を請け負う。


「え、そんな喋り方で大丈夫なの? あんたの口から敬語なんて聞いたことないけど」


『無論、問題ない』


 面倒ごとを担ってもらえるのは有難いが、余計不安は募るメティアであった。


「ポロ、本当はあんたが代表してやるもんなんだからね。タロスに感謝しな」


「うん、子供っぽくて威厳のない船長でごめんね」


 と、メティアの膝を枕代わりにしながら眠たそうに返答する。


「…………」


 メティアはその姿に内心悶えながら、紛らわすようにポロのアゴをコチョばした。





ご覧頂き有難うございます。

明日、明後日はお休みさせて頂きます。

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