47話 突然の戦闘
突然現れたコルデュークと名乗る転生者に、ショウヤは無意識にライラを庇おうと彼女を自分の後ろに誘導する。
「くひひ、紳士だね~、自分の女に手は出させねえって?」
ショウヤの行動を面白そうに見やるコルデューク。
「安心しなよ、俺はただ、新しくこの世界にやってきた転生者の面を見に来ただけさ」
と言いながら、男はショウヤの顔をまじまじと見つめる。
ショウヤは警戒しながら馬車を降りると、コルデュークに近づき睨み返した。
「……この間、ルピナスっていう女性が訪ねてきたが、あんたの仲間か?」
異世界生活を始めて間もない頃、ショウヤの元にルピナスが現れ、組織への勧誘を勧められたが。
その際、ショウヤは元奴隷達を安全な場所へ送り届ける最中だった為断っていた。
「ああ~あの女か、俺はいつだって仲間だと思っているが、どうも向こうには素っ気ない態度を取られるからな。仲はあまり良くはないだろう」
だろうなと、ショウヤは思う。
雰囲気からして、目の前の男はルピナスとは住む世界が違うと、外見から窺えた。
「そうそう、まさにそのことで言いたいことがあったんだ」
と、思い出したようにコルデュークはショウヤに問う。
「彼女に仲間にならないかと誘われなかったか?」
「誘われたよ。……断ったけど」
「どうして? 仲間になれば、自分の固有能力をもらえると言われなかったのか?」
「言われたよ、この世界で新たに自分の名前を決めることで、特殊な力を授かるとかなんとか……よく分からんゲームのチュートリアルみたいな話をされたさ」
「ならば尚更だ、勿体ないことをしたよ君は。嘘でもいいから一時的に仲間になれば、この世界を有利に生きる権利を与えられたものを……」
コルデュークの話に、ショウヤはつまらなそうに溜息を吐く。
「興味ないんだ。別に今のままでも不自由はないし、やる事や覚える事が多すぎてあんたらと行動を共にする暇がないからな」
すると、コルデュークはショウヤよりもつまらないと言った表情を露わにし。
「……欲の無さは要領の悪さに比例するものだ。がめついくらいの積極性がなければ、守れるものも守れないぜ? こんなふうに」
突然、コルデュークは前方に手を向ける。そして。
「【魔石柱】」
そう唱えた直後、ショウヤの背後に突如として巨大な石柱が地面から飛び出し。
その先端は、馬車を貫通してライラの脇腹を打ち付けた。
衝撃音に振り返ると、丁度ライラが宙を舞っている光景。
「ライラっっ!」
突き飛ばされた彼女が地面に倒れる直前、別の石柱が地面に触れる位置から飛び出し、追撃で彼女の頬を思い切り叩き付ける。
あばらと顔面を骨折したライラは、血を垂らしながら地面に転げ落ちた。
「あ…………あっ……ライ……ラ」
ショウヤは気が動転してまともな言葉も出ず。
ただ、遅れてやってくる怒りの感情がこみ上げて、コルデュークを睨み付ける。
その彼の表情に、コルデュークは満足気な笑みを浮かべた。
「なっ? 感知スキルの一つでも覚えていればその女を守れたかもしれないのに、無意味な平和主義者が正義だって勘違いするからこうなるわけだ」
「てめえええ!」
頭に血が上ったショウヤは、体内の気をありったけ練り込み、力のままコルデュークへ殴りかかる。しかし。
「くひひ、遅えよ」
コルデュークはショウヤの拳をひらりと躱し、カウンターで彼の腹部を思い切り蹴り飛ばした。
「ごはっっ!」
胃液を吐きながら、ショウヤは半壊した馬車に叩き付けられる。
「ショウヤ……さま……」
その姿を目で捉えるライラだが、自身もまともに体が動かず、伸ばした手は決して彼に届かず。
「黙ってろよ奴隷女、転生者がこの程度でくたばるわけねえだろ。お前ら有象無象のNPCと違って、元のステータスが違うんだからな」
そう言うと、コルデュークは主人を心配そうに見つめるライラの元へ近づき、その頭を踏み付ける。
「おい、見てるか新入り君、さっさと起き上がらねえと、君の大事な奴隷が潰れたトマトになるぜ?」
徐々にライラを踏む力が強まり、彼女は声にならない声を出す。
無慈悲な暴力が一人の人間を殺めようとした、その時。
全壊した馬車の屋根が急に吹き飛び、木屑の残骸からショウヤが顔を出した。
「……その足を退けろ」
「くひひ、どうかお許しくださいと懇願しながら俺の靴を舐めるなら、考えてもいいぞ」
彼の怒気に満ちた表情を実に愉快だと思い、コルデュークはさらに煽りをかける。
……だが突然、コルデュークから笑みが消えた。
それは目の前にいるショウヤから、予想外の魔力が溢れていた為。
「……なんだ、その魔力は……」
思わず呟いたコルデュークを睨み付けながら立ち上がり、ショウヤは魔法を唱える。
「【聖戦武器召喚】」
すると、突如空間から剣や槍など様々な武器が現れ、ショウヤを取り囲むように浮遊する。
「退けろって言ってんだよ、ゴミ虫」
ショウヤが向けるその力は、上級魔法をはるかに凌ぐ魔力量。
取るに足らない遊び道具だと思っていた新人転生者に、その時初めてコルデュークは戦慄した。
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