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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第一章 世界の支柱、『黒龍の巣穴』攻略編
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43話 決着、そして帰還


 静まり返る広間に、仰向けで倒れる巣穴の主。

 今後は不意打ちでも騙し討ちでもない、言い訳の出来ない完膚なきまでの一本。


 黒龍の腹の上で見下ろすポロと、彼を脇に担ぐバルタは地面に倒れる黒龍に問う。


「どう? 黒龍さん。まだ僕達を認めない?」

「ご覧の通り、俺達は今誇り高き黒龍様の上に乗っかっているわけだが?」


 黒龍は長い空洞の外から見える空を仰ぎ見て。


『異を唱えるつもりはない。…………我の負けだ』


 疲れたように、潔く自分の負けを認めた。


『ただ言い訳をするならば、ルールは日が昇るまでの間と言ったはずだ』


 黒龍の言い分通り、勝負の最中にはすでに日が昇っており、その影響で黒龍の弱体化が起き勝敗が左右された。だが……。


「それを言うなら、さっき僕が逆鱗を攻撃したことも当たり判定にカウントしてもらいたいところだね」


『……はは、そうだな、つい頭に血が上ってしまったが、あれもたしかに一本だ』


 先にルールを破ったのは黒龍のほうであり、彼らを責めることは出来ない。

 苦笑しながら、黒龍は自身の腹に乗るポロとバルタに告げる。


『見事だ、人の子よ。約束通り、そなたらを地上へ帰そう』


 黒龍の言葉で、周囲に歓声が沸いた。

 何度も死ぬ思いをして、生きた心地がしなかった兵士達に、ようやく心にゆとりが生まれる。


 すると、アルミスは黒龍に駆け寄り。


「じっとしていて下さい。【高速治癒ラピッドキュアー】」


 負傷した彼に治癒魔法を唱える。


『娘、何故我に治癒魔法を?』

「争う理由がないなら、手当てしても問題ないと思いまして……」


 純真無垢なアルミスを、黒龍はまじまじと見つめ。


『……光属性は少しピリピリするな』

「あ、すみません。やめたほうがいいですか?」

『いや、良い。続けてくれ』


 変わった人族もいるのだと感慨深く思う。


『長き時を生きてきたが、人に治療されたのは初めてだ』


 それは黒龍にとって心地の良い治療ではなかったものの。


『……存外、悪くはないものだな』


 どこか満足したように、黒龍はアルミスにその身を任せた。









 その後、アダマンタイトで封鎖された扉を黒龍の一撃で打ち壊し、中層で魔物の掃討を行っていたAランク冒険家の者達と合流。

 そして一同が広間に集結すると。


『我の暇つぶしに付き合った礼だ。皆、我の背中に乗るがよい』


 黒龍の計らいで、皆を空から送迎する事となった。


「えっ……でも竜が人を背中に乗せるのって……」


 と、リミナは黒龍の言葉に驚いた様子で聞き返す。


 気性の荒いドラゴンが人を背中に乗せるということは、信頼、もしくは服従の証と同等。

 その為名立たる竜騎兵(ドラゴンライダー)調教師テイマーでも、ドラゴンの扱いには細心の注意を払うのが常である。しかし。


『勘違いするな小娘。我は貴様らに屈したわけではない。これはただ単に、我の気まぐれよ』


 動揺するリミナに黒龍は念を押す。


『稀に見ぬ面白き者達だ。故に貴様らを殺すには惜しいと、そう判断したまで』


 そして『さっさと乗れ』と催促され、一同は鉱石よりもはるかに硬い黒き外皮によじ登り、ゆっくりと浮上した。






 巨大な翼によって上昇する感覚は、魔導飛行船とはまた違った、躍動的な乗り心地。

 頂上に出て、一体化する晴天の空を眺めるポロは、ゾクゾクと湧きたつ高揚感に思わず呟く。


竜騎兵(ドラゴンライダー)になった気分……」


 幼き頃に恋焦がれた、竜と共に空を駆ける夢。

 その夢が叶ったような気がして、自然と笑みが零れる。


 そんな彼の呟きに、リミナも微笑を浮かべながら。


「なら、今この瞬間だけ、あんたは世界最強の竜騎兵(ドラゴンライダー)よ。なんたって『原初の魔物(オリジンモンスター)』の背に乗っているんだから」


 冗談めかしてポロに返した。


 そして、彼らは飛行士達が待つ魔導飛行船へ帰還する。







「メティアさん、あれっ!」


 飛行船の甲板にて、飛行士の一人が遠眼鏡に映る飛行物体に驚いた様子で訴える。


「えっ、まさか、黒龍?! なんでこんな朝方に……」


 その巨大なフォルムにメティアは恐怖し、反応的に魔力を込め臨戦態勢を取るが。


「いえ、じゃなくて……その上です」

「うえ?」


 疑問に思い、メティアも遠眼鏡で黒龍の背を見ると。


 途端に、安堵の笑みを浮かべた。

 そこには黒龍の背に乗り、こちらへ向けて大きく手を振るポロの姿。


「…………もう、あの子、心配ばっかりかけて……」


 ほろりと涙腺から流れる雫を拭い。

 そして下降する黒龍を眺めながら、メティアは飛行船の外で彼らを迎えた。


 いの一番に自分の胸に飛びつくポロを、強く抱きしめて。





ご覧頂き有難うございます。

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