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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第一章 世界の支柱、『黒龍の巣穴』攻略編
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42話 決戦 気高き王者、黒龍【2】


 ポロの不意打ちにより、長らく感じていなかった痛みを受ける黒龍。


「よくやったポロ、今取ってやるよ。【物体吸引アトラクト】」


 と、バルタは黒龍の首元に刺さった短剣を吸引魔法で引き抜きポロへ返す。


『ごあっ……ぐっ、おのれ……』


 刺された箇所から大量の血が流れ落ち、次第に黒龍の目の色が変わる。


「約束通り、これで僕達を帰してくれますか?」


 そうポロは尋ねるが、黒龍は怒気に満ちた目をし、冷静さを欠いた態度へ変貌する。


『ふざけるな! よくも我の体に脆弱な刃を立ててくれたな小僧!』


 正気を失ったような素振りに、もはやルールなど頭に入っていない様子。


「ああ……やっぱり竜はみんな逆鱗に触れると激怒するんだね」


 話し合いもままならないと察したポロは、次の手を考えふと上空へ目を向けると。


 ――朝鳥の群れ……夜明けが近いのか。


 巣穴の空洞から見える野鳥を見て、疑問に思う。


 ――この広間に来てからせいぜい一、二時間程度しか経っていないと思っていたけど、いつの間に……。




 実は魔鉱石が眠っていた場所は特殊な空間であり、通常よりも時の流れが異なる。

 体感では一分程度の時間が、実際は一時間程に過ぎてゆく。


 ポロ達が滞在していた時間は数分としても、その間世界の時は目まぐるしく加速していた。

 その事実は、オニキス達ですら知り得ない。




 ともあれ、これを好機と考えたポロは、黒龍にある提案をする。


「なら黒龍さん、今度は僕と鬼ごっこをしよう。黒龍さんが鬼で、僕が逃げる役」


 荒ぶる黒龍に向け、さらなる挑発をするポロ。


『驕るなよ人族めがっ! 我を侮辱したこと、身をもって後悔させてくれる!』


 すると、黒龍は先程までの余裕な表情などなく、本気の火力でブレスを放った。


 ポロは上空へ跳躍しそれを回避すると、宙に【暗黒障壁ダークプレート】を展開し足場にする。


「こっちだよ。黒龍さん」


 そして、煽るように尻尾を振り、自分へ注意を向けさせながら外へ続く長い空洞を駆け上がってゆく。


『グルルアアアアア!』


 もはや理性を失った黒龍は、怒りのまま翼をはためかせ、ポロの後を追う。


「ポロ……何やってんの? 一人で戦うつもり?」


 岩壁を駆け上がり、【暗黒障壁ダークプレート】を駆使しながらさらに上空へ昇っていくポロを、リミナは心配そうに見つめる。

 一方、バルタはポロの行動を見ながら空を覗くと。


「うはは、マジかあいつ。博打にも程があんだろ!」


 愉快気に納得し、バルタも背中の翼を広げ。


「けど嫌いじゃねえ、俺も付き合うぜ!」


 そして黒龍の後ろを追って飛び立った。


「バルタまで……何? 囮作戦?」


 困惑するリミナに、サイカがぼそりと答える。


「……日の出の弱体化を狙っているのだろう」


 無茶をする二人に、呆れたような表情で。


「何故黒龍は夜間にしか活動しないか……それは奴自身が日の光に極端に弱いからだ」


「……それは聞いたことあるけど、まだ日が昇る時間じゃ……」


 そう言いかけ、上空を見上げると。


「え、うそ……空の色が変わり始めてる?」


 ポロと同じく、時間の感覚がおかしいことに疑問を抱くリミナ。


「……不可解な点はあるだろうが、どうやら私達は夜が明けるまで時間を消化していたらしい。ポロはそれにいち早く気づいたのだろうな。……とは言え、外へ出る前に追い付かれたらそこで終わりだろうが」


 一発でも攻撃を受ければ即死してしまう力の差を前にして、それでも臆さずポロは高く駆け上る。


 狂ったようにブレスを吐く黒龍に、ポロはその都度岩壁から障壁へ乗り移り回避し、尚も上空へ。


 だが、徐々にその距離は詰まっていった。


 ――このままだと追い付かれちゃう……。


 そう思った時、ポロの中にいたもう一つの思念が訴えかける。

 言葉ではない……魔力の躍動。


「……アラクネ」


 まるで自分を使えと言っているようで……。


 ポロは静かに頷き、その意志に従った。


「それじゃあ、力を貸して。…………【女王蜘蛛の糸(アラクネ・スレッド)】」


 そう唱えると、ポロは手の先から黒い糸が生まれ、頭上に蜘蛛の巣を展開した。


 粘着力はなく、代わりに伸縮性が増したハンモックのような糸。

 ポロはその上に飛び乗ると、弾力のある足場がバネとなり、通常の何倍ものスピードで上空へ跳躍した。


「うぉっ? すごい跳ねる……」


 自身の能力に驚きながらも、ポロは次々に蜘蛛の巣を生み出し加速してゆく。

 黒龍の咆哮に臆さず、ブレスを避けつつ。


 ――間に合えっ。


 高く……高く。

 黒犬の獣人は、空を駆ける。


 そして、最後のブレスを避け切った時、ポロは空洞を抜け山頂へと突き出た。


 外へ出た先は、地平線の彼方から眩い光が差し込む日の出の景色が広がる。

 一歩遅れて外へ出た黒龍は、猪突猛進で上空へ飛び上がり。


 そして、明るくなり始めた世界を見てようやく我に返った。


『ぬっ……しまった!』


 日の光を浴びた黒龍は、途端に体から発せられていた黒い霧が消え去り、悶えながら徐々に下降する。


 その隙にポロは黒龍の真上に【暗黒障壁ダークプレート】を展開し。


「行くよ。……【幻影分身ファントムアバター】」


 闇魔法で影の分身体を生み出す。


 そのタイミングでバルタもポロの元へ追い付き、手投げ斧(トマホーク)を構えた。


「間一髪だったなポロ。無事で何よりだ。……それじゃ、叩き落とすか」


 そう言って、バルタは武器にありったけの魔力を注ぐと、手に持っていた手投げ斧(トマホーク)から燃え盛る巨大な魔法剣が生成される。


「うん、頼りにしてるよ、バルタ」


 ポロもまた、分身体に双剣の一本を渡すと、障壁から飛び降り、バルタと同タイミングで勢いよく黒龍へ斬りかかった。



「【双頭犬の牙(オルトロス・ファング)】」


「【炎刃の剣(レーヴァテイン)】!」



 二人の決死の一撃は、弱体化した黒龍の体を貫き、隕石の如く山頂から広間まで落下していった。


『ぐぉおおおおおああああ!』


 慣れない痛みに絶叫する黒龍は、急速落下する巨体と共に地面に叩き付けられ。

 凄まじい衝撃と振動、そして巣穴には深く巨大なクレーターが生まれた。



 周囲にいた者達は、吹き荒れる砂塵を手で庇いながらその光景を見つめる。


「……ポロ、バルタ」


 二人の安否が気になるリミナは、ゆっくりと倒れる黒龍の元へ歩み寄ると。


 黒龍の胴からピョコっと犬の耳が見え、その後バルタがポロを抱えて起き上がる姿が映った。


 二人の無事を確認したリミナはその場にへたり込み。


「…………もう、心配させないでよ」


 微笑を浮かべながら、安堵した様子でそう口にした。





ご覧頂き有難うございます。


もうすぐ一章がクライマックスを迎えます。もしご覧頂けたなら幸いです。


ですがそんな中心苦しいのですが、明日、明後日はお休みさせて頂きます。申し訳ございません。

速筆出来るよう精進します。

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