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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第一章 世界の支柱、『黒龍の巣穴』攻略編
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35話 オニキスとの決着


 ポロとリミナが出方を窺う中、オニキスは瞬時に彼らの眼前まで距離を詰め。


「速っ!」

「うっ……!」


 二本の刃は躊躇なく二人の首元へ振るわれる。


 互いは寸前に武器で防ぐが、オニキスは体を捻り、力のまま二人を薙ぎ払った。


 ポロとリミナを同時に吹き飛ばすと、身動きの取れないサイカへ近寄り剣を振り下ろそうと構えるオニキス。


「させない……【突風穿ち(ガストペネトレイト)】!」


 その直前、飛ばされたリミナは瞬時に体勢を整え、全身に気を練ると、ハルバートを突き付けながら疾風の如くオニキスへ突進。


「【螺旋の鉤爪(スパイラル・タロン)】」


 同時にポロもリミナに動きを合わせ、回転を加えながらオニキスに飛びかかった。


「……ふぅ」


 するとオニキスは持っていた二本の剣をその場に刺し、溶解する。

 そして溶かしたアダマンタイトを再構築し、二人の進行方向に巨大な壁を生成した。


「なっ……!」


 二人の攻撃を壁で相殺すると、バランスを崩したポロとリミナに手をかざし。


「避けろ! そいつは金属を溶かすスキルを持っているぞ!」


 サイカの助言も虚しく、オニキスは二人の武器に触れ、瞬く間に溶解した。


「っ、ハルバートが……」


 そしてオニキスは無防備となったリミナを岩壁まで蹴り飛ばし。

 再び生成した剣でポロの頭へ振り下ろす。……と。


「【半人半蛇の鱗(エキドナ・スケイル)】」


 ポロは直前でエキドナの思念から力を借り、身体をコーティングするベールを纏った。


「アダマンタイトの剣が弾かれた? 奇怪なスキルだね……」


 予想以上の硬化スキルに驚くオニキスだが、ポロは彼に目も向けず、ただ溶かされた手甲を見つめていた。


「クル姉の形見が……」


 悲しそうな目でそう呟きながら。


 すると、突如ポロの体から魔力が溢れ出し、オニキスへ静かな殺気を向ける。


 膨れ上がる感情を察したオニキスは、ポロから距離を取りながら尋ねた。


「大事なものだったのかい? けれどそれは高価な物じゃないし、どんな武器でも使い続ければ劣化する。破損は仕方のないことだよ」


「分かっているよ。だからマスター、これは武器への執着じゃなく、ただ単に僕の八つ当たりさ」


 そう言いながら、ポロはもう片方の手甲も取り、その場に置くと。


「……悪いけど、少しだけ僕のわがままに付き合ってね」


 ポーチから二本の双剣を取り出し気を練ると。

 獲物を捉えた獣のように、オニキスに向けて斬りかかった。


「【双剣の牙(クロス・ファング)】」


 突然の強襲にオニキスはアダマンタイトの剣で防ぐと、ビリビリと伝わる気の波動がアダマンタイトに亀裂を生み。


「馬鹿なっ! その武器は一体……」


「『原初の魔物(オリジンモンスター)』、狼王フェンリルの牙で作られた剣だよ」


 そして、最高硬度の金属が折れる程の斬撃によってオニキスは吹き飛ばされる。


 数十メートル先の地面に打ち付けられたオニキスは、ポロに斬り付けられた胸に手を当てがい体勢を立て直すと。


「【半人半蛇の尻尾(エキドナ・テイル)】」


 すでに眼前まで距離を詰めており、ポロの追撃で、エキドナの尻尾の影を足先に生み出し、鞭のようにしならせながら一蹴した。


「ぐあっっ!」


 強烈な鞭打が直撃したオニキスは、地をバウンドしながらそのまま岩壁まで叩き付けられ。


 蓄積したダメージにより、オニキスはその場に倒れた。




 すると同時に、サイカを拘束していた金属は効果が弱まり、液状となって地面に浸み込んでゆく。

 自由になった身を起こし、ポロの元へ近寄ると。


「……すまない、ポロ。助かった」


 と、サイカが声をかけるも、ポロは未だオニキスを見据えたまま殺気を消さず。


「おい、ポロ、どうした?」


 二度目の呼びかけにより、ようやくサイカの存在に気付いたポロは、溢れさせていた殺気と魔力を押し殺し、普段の柔らかい表情へと戻った。


「ああ……拘束が解けたんだね、良かった」


 先程までの冷たい視線から一転、ニコリと笑う人畜無害な小動物へと変貌するポロに、憂いの目を向けるサイカ。


 ――こいつでも、誰かに殺意を向けることがあるのだな……。


 そう思いながら。


「それはそうとサイカ、初めて僕のこと名前で呼んでくれたね~」


「あ……なっ…………それは」


 ふと思い出した数秒前の自分に羞恥する。

 首を振りながら早々に話を変えるべく、サイカは倒れるオニキスに目を向けた。


「……死んだのか?」


「ううん、全力でやったけど致命傷は避けて攻撃したから、気絶してるだけだよ」


「そうか」


 戦場においてポロの行為は甘さである。

 しかし、正気を欠いても無情な殺戮者へならなかったポロに、サイカはどことなく安心していた。

 そんなしみじみとした気持ちでいると。


「サイカぁぁあああ!」


 遠くからアルミスが駆け付け、泣きながらサイカに抱き着いた。


「……姫様」

「ごめんなさい、私のせいで……本当にごめんなさいぃいい!」


 子供のようにわんわんと泣くアルミスに安堵の息を吐きながら、サイカは彼女の頭を優しく撫でた。


「もう良いのです。元はと言えばオーグレイが蛮行を働いたことが原因。だから、姫様がお気に病むことはございません」


 赤子をあやすように抱きしめている中、岩盤に叩き付けられていたリミナもようやく復帰し。


「あ~いてて、女相手に本気の蹴りを入れてくるとか、紳士の風上にも置けないわね」


 そして百合百合しい場面に青ざめながらポロの元へ避難する。


「……で、何この状況。アタシ同性愛者じゃないから、ああいうのちょっと引くんだけど……」

「感動の場面なんだからそっとしてあげなよ……」


 ポロにたしなめられ溜息を吐くリミナ。







 オニキスの脅威が消え、周囲に束の間の安息が訪れる。

 そして。


「では、黒龍が巣へ戻る前に、魔鉱石の回収を始めるぞ」


 広間に残った攻略部隊は、最後の仕事を開始した。




ご覧頂き有難うございます。

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