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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
最終章 星の楽園、偽神に抗う反逆者編
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298話 最終決戦【2】


 さらに力を増したイズリスとの戦力差が広がる中。

 ポロの元へ、オールドワンを倒した皆が集結する。


「ポロ、こっちに戻ってこい。一度態勢を立て直すぞ」


 と、ショウヤの言葉に、ポロはイズリスの放った【破滅メギド】を全て相殺した後。

 空中に展開した障壁を飛び降り皆の元へ戻った。


「ショウヤ、みんなも、無事で良かったよ」


「その傷でよく言うな。お前のほうが重傷じゃねえか」


 ショウヤがそう返すと、アルミスはポロに駆け寄り治癒魔法をかける。


「ポロちゃん、じっとしてて。……【高速治療ラピッドキュアー】」


 アルミスの治癒魔法によって、イズリスから受けた傷が急速に回復するポロ。


「ありがと、アルミス。魔鉱石から出られたんだね」


「うん、エリアスも無事にセシルグニムへ保護されたわ。私はサイカ達に無理を言ってここに残ったの。最後まで、みんなと戦いたいから」


 アルミスの言葉に、ポロはちらりとサイカとレオテルスに視線を送ると。


「……仕方なかったんだよ。王女は二人のうちどちらかが生き残っていれば血筋は繁栄するからと、私の説得も聞かなかったのだ、姫様は」


「実際、今の状況では治癒魔法を使える者が多いほうが助かるからな。まあ、姫様の護衛は俺が担うさ。ポロ船長は前線に集中してくれ」


 二人共やむ無しと言った様子でアルミスの参戦を了承したようだった。


「そっか、うん、とても心強いよ。これで僕は戦いに専念出来る」


 劣勢だった戦況を整え、戦闘は一旦の仕切り直し。

 そんな士気が高まる一同を、イズリスは上空から見下ろす。


「……どうしてこう上手くいかないのかしらね。私はただ、世界の秩序を正そうとしているだけなのに」


 ぼそりと呟くと。

 イズリスは魔法を唱え、自身の目の前に巨大な大剣を生み出す。


「【究極の斬刃(アポリュトクシフォス)】!」


 彼女の十倍はあろう大剣を遠隔操作し、真っ直ぐ『エドゥルアンキ』へ向け解き放った。

 その一撃が刺されば瞬く間に『エドゥルアンキ』は小間微塵に砕け、その地に立つ一同は全滅する。


「来るぞ! 【巨剣の氷刃(ギガス・アルマス)】!」


「合わせるぜ! 【炎刃の剣(レーヴァテイン)】!」


 一早く行動に出たサイカとバルタは、イズリスの放つ大剣に応戦して、武器に魔法を付与した剣技で彼女の攻撃を受け止める。


 が、二人の力では大剣の勢いを殺すことは出来ず、尚も彼らへ向けて切っ先は侵攻する。


「アタシも行く! 【憤慨の斬波(レイジングペイン)】!」


 そこでリミナも気の斬撃を飛ばし。


「……突風」


 ナナも無詠唱魔法で突風を生み出し大剣にぶつける。

 追随するようにメティアも飛行船の甲板から飛び降り、ナナの風魔法に複合するように突風を放つ。


「【暴風波動サイクロン】!」


 五人の力を以て、ようやく大剣の勢いは止み。

 サイカの振るった一撃で大剣は上空に弾かれた。



「ふん、それだけ数を使ってようやく……か」


 イズリスは自分の放ったスキルをギリギリで食い止める彼らに、力量の差を把握した。


「脆弱な地上人……なのに、私は彼らに計画を邪魔された」


 数の違いはあれど、立場は確実に自分が有利だったはず。

 それが、いつの間にか追い詰められているのは紛れもなく自分である。


「それもこれも……」


 呟くイズリスの元へ、魔剣に乗ったショウヤとポロが視線を向ける。


「全部あなた達のせいよ」


 イズリスは口角を上げたまま、二人を睨みつけた。

 この二人が現れなければ、今頃計画は最終段階に向かっていたはずだと、イズリスは静かな怒りを湧き立てる。


「そうでもねえさ。幾つもある別の世界線では、お前らのせいで世界が破滅した未来があったって、フォルトさんが言ってたぜ」


 被りを振りながらショウヤは告げる。


「正直あの人が未来を変えようとしなければ、俺達はお前に届く前に全滅していた。何より天上界の住人もここまで協力的にならなかった」


「あの人間に責任転換をするつもり?」


「違えよ。あの人が希望を捨てなかったからみんなが動いたんだ。そして、彼女を後押しするように……シャロムが俺の中で語りかけてきた」


「っっ!」


 その言葉に、イズリスは一瞬戸惑いを見せた。


「お前の言った通り、シャロムは俺達の側に味方してくれたよ」


「そう、でしょうね。……ねえ、彼女、何て言ってるの? 私のこと」


 かつての部下であり、可愛い愛弟子であるシャロムを思い出し。

 そんな彼女に敵意を向けられているのならば、その理由を聞いてみたいと、イズリスは人染みた、繊細な感情が浮き出た。


 躊躇い気味に問うイズリスに、ショウヤは溜息混じりに答える。


「……今でも普通に慕っているよ、お前のことを。恩師に敵対することに後ろめたさもあるみたいだ」


 その反面、自分に対しては容赦なくダメ出しを入れてくるシャロムに若干不服そうにしながら。


「でもな、自分達のやろうとしていたことは、人の生産性を奪うだけで、その後の発展も繁栄もなく、将来的にすべての世界を滅亡に追いやる行為なんだって、そう言ってたよ。だから取返しのつかなくなる前にお前を止めたいんだと」


 ショウヤが話し終えると、イズリスは「……そう」と感慨深く頷き。


「あの子の言い分は理解したわ。……けどね」


 それでも、彼女は納得する事はなく。


「現状維持が、最も愚かだって事も知っているのよ。私は」


 自身が再び奈落へ落ちるその日まで、決して己の意志は曲げないと。

 イズリスは尚も二人に殺気を向ける。





ご覧頂き有難うございます。

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