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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
最終章 星の楽園、偽神に抗う反逆者編
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297話 最終決戦【1】


 ポロとイズリスの空中戦は続く。


 先程よりも大幅に能力を強化したイズリスは、もはやポロを格下としてではなく、一人の敵として認識を改め。

 出し惜しみせず、後先を考えず、全霊を以てポロを殲滅対象と判断した。


「もう時間はかけないわよ。黒妖犬ヘルハウンドの坊や」


 そう言うと、イズリスは両手に持っていた剣を放り投げ。天を仰ぐように手を掲げると。

途端、イズリスから強い光が放たれる。


「【破滅メギド


 直後、一瞬にして晴天の空が赤く染まり。

 そして、上空から無数の巨大な隕石が落下する。


「あれはっ……!?」


「滅びの魔法よ。間もなく周辺の大陸は跡形もなく消え去るの」


 その射程範囲にはグリーフィル大陸も入っており。

 絶えず落下する隕石が直撃すれば、町の住民だけでなく、戦争で駆り出された世界各国の兵士達も巻き添えを食らう事となる。


「本来の力なら、これだけで世界を消滅させられるのだけれど、今の体じゃこれが限界。でも、十分よね?」


 一撃投下されるだけで何十人という命が犠牲となる死の魔法。

 射程範囲にいる者が回避する事は極めて困難である。


「当然この『エドゥルアンキ』もなくなるわ。世界の核であるアーティファクトが消えるのは惜しいけど、この中にいるあなたの仲間もみんな消えちゃうの。そして、核を失った世界は向こう数年で消滅するわ」


「そんなこと……!」


「残念だったわね。世界を守れなくて」


 ポロとの戦いを終えても、待っているのは天上界の住人との連戦。

 本調子でない今の体では、彼らには敵わないとイズリスは予想し。

 どのみち先のない未来ならば、せめてこの世界を道連れに、最後に巨大な爪跡を残そうと考えた。

 自身の描く理想を、天上界へ証明する為に。


「させないよ!」


 途端、ポロは空中に幾多の次元の穴を生み出し、投下されるすべての隕石を飲み込んでゆく。


「【超次元虚空ディメンションホール】!」


 高度な空間魔法に加え、広範囲に及ぶ連続使用。

 別次元から無限に魔力を供給出来るポロだが、その分精神的疲労は蓄積してゆく。

 生み出したホールに、少しでも指定した座標とのズレが生じれば、大惨事になりかねない。

 だが、イズリスがそれを黙って見過ごすはずはなく。


「【圧縮衝撃シンピエシ・ソック】」


 隕石の相殺に集中するポロへ、空気を圧縮した魔弾を放った。


「うぐあああああ!」


 魔法を使用している最中に、ガードも回避も出来ず直撃を受けたポロは。

 内臓にダメージを負い吐血しながら。

 それでも絶えず次元の穴を生み出し、隕石を別空間へ飛ばし続ける。


「頑張るわね。ならこれはどう?」


 と、イズリスはクイと指先を上方へ向けると。

 先程投げ捨てた二本の剣が浮遊し、一直線にポロの胴へ突き刺さる。


「ごはっっ!」


 腹部の激痛に歯を食いしばり、尚もポロは続行する。


「魔法を中断すれば簡単に躱せるでしょう? どうせここで坊やが防いだとしても、坊やが死んだらそこで終わりよ。あなたの行為は、微々たる延命にすぎない無駄な事なの」


「……無駄じゃ……ない……」


 そんな中、ポロの横を魔導飛行船から放たれるガトリング弾が通り過ぎた。


『あんた……ポロに何してんだ!』


 拡声器から怒号を飛ばし、イズリスに向けて全弾発射するメティア。

 イズリスは翼をはためかせ、連射されるガトリング弾を容易く空中回避する。


「はあ……あなたもそろそろ邪魔よ。その機体ごと消えてなくなりなさい!」


 そう言って、イズリスは指先で十字に空を切り、極大の光の波動を放った。


「【聖なる天罰(アギオ・コラステリオ)】!」


 それは『エドゥルアンキ』の外壁を粉砕し、ポロを外まで飛ばした高出力の魔法。


「メティアっっ!!」


 彼女に向って叫ぶも、魔法使用中のポロに彼女を守るすべはなく。

 無慈悲に直進する光の波動は、魔導飛行船を丸ごと包み込み。


 跡形もなく消し去ろうとした……その刹那。



「【天与の衣(エクステンドベール)】!」



 寸前のところで、魔導飛行船は巨大な防御結界に守られイズリスの攻撃を凌いだ。

 そして、飛行船を庇うように立つ少年は真っすぐイズリスを見上げる。


「……ギリギリ、間に合ったかよ?」


 挑発するように口角を上げ、イズリスと対峙する者。


「っっ! ……ショウヤ!」


 その瞳に、イズリスは奥歯を噛みしめる。

 ポロに続いてまた一人、厄介な邪魔者が現れたと苛立ちながら。


「ショウヤ……」


「ポロ、よく一人で耐えてくれたな。こっからは俺も……俺達も加勢するよ」


 そして、ショウヤを中心にして集まる仲間達。

 皆無事に生きてここまで来てくれたことに、ポロは安堵と心強さを感じ。

 心身共に疲弊していた体から、みるみると活力が溢れ出る。


 仲間がそこにいるだけで、こんなにも力がみなぎるのかと。

 ポロは心からそう実感した。





ご覧頂き有難うございます。

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