表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
最終章 星の楽園、偽神に抗う反逆者編
294/307

293話 決戦、オールドワン【2】


 魔王化により、人族の限界を超えた能力を得たオールドワン。


 彼に翻弄され、幾度となく薙ぎ倒される一同は、ルピナスの援護により辛うじて食らいついていた。


「【紅炎の不死鳥(フェニックス)】、皆に治癒を。【審判者ジャッジマン】、私達に手を貸しなさい」


 二体の魔物を召喚したルピナスは、紅炎の不死鳥(フェニックス)の力で即座に傷ついた者への治療を施し、審判者ジャッジマンに戦況を有利に運ばせるよう命令する。


 しかし、審判者ジャッジマンに至ってはただ頭上を浮遊するのみで一切動こうとせず。


「この……気まぐれのポンコツめ!」


 かの魔物は人の意志に呼応して恩恵を与える。

 しかしその基準は敵味方関係なく公平であり、ルピナスの意志がオールドワンに劣るようならば審判者ジャッジマンは反応しない。


 言わば気持ちの持ちようで審判者ジャッジマンに意を示すのだ。

 そして今の彼女の精神状態は、万全ではなかった。


「ルピナス、お前は今、精神が乱れているな?」


 オールドワンは言う。


「この制御室にお前の友がいないことに焦りを感じている。そうだろう?」


「……エルメルはどこにいるの?」


「もう手遅れだ。つい先程、イズリス様が復活なされたからな」


「っっ!?」


 と、ルピナスの精神を煽る。


「つまりはもう、彼女の体はイズリス様と同期したのだ。お前がここへ来た理由の大半は露となって消えたわけだ」


「……そんな」


 ルピナスは力なく手に持っていた杖を落とした。

 間に合わなかったと、彼女は絶望した。


「その精神では審判者ジャッジマンを制御出来まい。貴様らの力ではここにいるナナも、セシルグニムの王女も、何一つ救う事は出来んよ。これが貴様らの限界だ」


 言いながら、オールドワンは戦意喪失したルピナスへ剣を向けると。


「【一閃空波いっせんくうは】!」


「【一閃凍刃いっせんとうが】!」


 レオテルスとサイカは同時に地走る斬撃を飛ばし、オールドワンの攻撃を逸らした。


「下らん攻撃だ。まだ分からんか? 貴様らでは私に勝てぬと」


 二人の斬撃を弾くと同時に、レオテルスとサイカは左右に別れ、二方面からの刺突を放つ。


「「【一点突飛いってんとっぴ】!」」


 オールドワンはレオテルスの突きを大剣で防ぎ、サイカの突きを片腕で受け止めた。


「何度来ても無駄だ。私に傷一つ付けることは叶わん」


 すると、オールドワンを抑える二人にオニキスも加わり。


「無駄ではないさ、オールドワン。僕達は何度打ちのめされても立ち上がる。そして、いつかはあなたに刃が届くよ」


 先のゴーレム戦で得た白金の剣を両手に構え、オールドワンへ前進するオニキス。

 さらにショウヤも【聖戦武器召喚セイクリッドデバイス】を唱え、複数の神器を操り追撃。


「ああ。たとえ死んでも俺がみんなを蘇らせる。てめえの体力が尽きるまでな!」


 四人の剣士はオールドワンに一切の隙を与えず、ゴリ押しで攻め続ける。

 手数で攻めてきたショウヤ達に対抗する為、オールドワンも魔法で剣を生み出し。


「時間の無駄だと言っている。【円卓の騎士(ナイツオブラウンド)】」


 十二の魔剣を操作し四人へ飛ばした。


「イズリス様が復活された時点で貴様らは終わりなのだ。どうあがいても人が神に抗う事など出来ぬ!」


「それはどうだろうな!」


 オールドワンの魔剣を自身の魔剣で防ぎながら、ショウヤは告げる。


「あいつは偽の神だろ? なら、人の身でも勝機はあるさ」


「イズリス様を愚弄するな!」


「てめえこそ、ポロを見くびるな!」


 魔剣同士をぶつけ合い、二人は鍔迫り合いの中討論を交わす。


「あいつは負けねえんだ。何があってもな。……それに、追い詰められているのはお前らのほうだぞ?」


「……どういう意味だ?」


 ふと、ショウヤの言葉に疑問を抱く。


「シャロム・ティターニア……その名前を知っているだろ?」


 それは違和感に変わり。


「貴様……何故彼女の名を?」


「今俺の頭ん中にいるのはそいつだ」


 やがて焦りに変わった。


「……何故、シャロムが……」


「天上界の住人が絡んでいるんだよ。シャロムも今はそっち側だ」


「っっ!? 馬鹿な!」


 オールドワンに動揺が走る。

 シャロムの名前が出た事に加え、天上界の住人というワードをショウヤが口にした事にも焦りが隠せなかった。


 そして考察する。


 ショウヤの話が真実だったとして、シャロムが常にこの場を見張っているのだとしたら……。


「……まさか天上界は、『エドゥルアンキ』を起動させる以前から、私のことを監視していたのか?」


 そんな答えが導き出された。


「ああ、そうだよ。正確に言うと、俺がこの世界に転生してきた時からな」


 シャロムから全てを聞かされたショウヤは、隠すことなくオールドワンに告げる。


「タケバ・ショウヤ、貴様は一体……」


 ショウヤは真実を受け入れて。

 靄のかかった記憶の隅を明かされて。

 尚も彼は、自身の使命を全うする。



「俺は……天上界から送られた、お前らの監視役だ」





ご覧頂き有難うございます。


申し訳ございませんが、明日は休載させて頂きます。

代わりに明日はポロの過去編を投稿する予定でおりますので、よろしければ作者マイページからご閲覧頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ