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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
最終章 星の楽園、偽神に抗う反逆者編
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288話 イズリスとの対立


 ポロの背後で渦巻く魔力の粒子。

 それは徐々に人の形を成していき、やがてブロンズヘアーをなびかせた、長身の女性の姿へと変貌する。


「それがあなたの本来の姿なんだね。キレイなお姉さんだ」


 振り向きざまに素直な感想を述べるポロに、クスリと笑うイズリス。


「ずいぶんと脈拍が安定しているのね。この世界において、女神と謳われる私と対峙しているのに」


「ワールドスタンダードに囚われないタチなんだよ、僕は。だからあなたが女神だろうと、僕からすれば等しく世界の一部で、普通に魅力的なお姉さんって認識さ」


「ふふ、坊やの何百倍も長生きしている私にお姉さんねぇ……。評価してくれるのは嬉しいけれど、私、これでも怒っているのよ?」


 エルメルの器を引き剝がした事への怒り、ハジャを差し向けた事への怒り。

 笑みを浮かべながらも、静かな憤怒を抱き。


 イズリスは手の平を向け、ポロの範囲に空間爆発を巻き起こした。


「【虚空光弾こくうこうだん】」


 連続して発破する無差別な閃光がポロを襲う。


「っっ!」


 ポロはフロア中を駆け回り、予測不能の爆発を紙一重で回避しながらイズリスへ接近し。


「【烈波爪術スラッシュタロン】!」


『ミストルティン』で生成した猫爪手甲キャットクローを横に薙ぎ、気の斬撃を振るう。

 だがイズリスに刃が届く瞬間、彼女の魔法壁によって攻撃を防がれた。


「……ふふ、攻撃に迷いがなくなったわね」


「エルメルさんの体じゃないからね。それに、その体は魔法で作られた分身体でしょ? いくら攻撃しても死ぬ事はないよね」


「あはは、この私の命を心配するだなんて……優しさを通り越して、思い上がりも甚だしいわね!」


 好戦的に笑うイズリスは、再びポロに手を向ける。

 先程までとは違う、明らかな敵意を持った殺気。

 その威圧感に、ポロは戦慄した。



「坊やに耐えられるかしら……【聖なる天罰(アギオ・コラステリオ)】!」



 突如、彼女の手の平から放たれる巨大な十字の波動がポロを襲う。


 広範囲に渡る直線状の光は、空間移動も間に合わぬスピードで迫り。


「ぐっ……!」


 回避出来ぬの悟ったポロは、瞬時に魔法で自身の身を固めた。

 スキュラの魔法精度上昇、アラクネの黒鋼糸による防御壁、エキドナの鱗による硬化魔法を、波動を受ける直前に同時発動させたのだ。


 直撃を受けたポロはフロアの壁に吹き飛ばされ、その岩壁をぶち破り、勢いの止まぬ十字の光はポロをどこまでも追いやってゆく。


「獣人くん!」


 エルメルの叫びも波動の前にかき消されポロはそのまま場外へ飛ばされていった。


 速度を落とさぬままに直線状に放たれる波動は、壁にぶつかる度に岩が砕け、また別のフロアへ突き抜けてゆく。


 やがてポロは最後の壁にぶち当たり、『エドゥルアンキ』の外まで追い出された。


 ――ここは……外?


 ようやくイズリスの攻撃が止むと、視界には晴天の空が映る。


 ――こんなとこまで飛ばされちゃった……。早く戻らないと。


 と、ポロは背面に【暗黒障壁ダークプレート】を生み出し、障壁に足裏を踏み込み反動を相殺した。


 ポロはそのまま腰を深く落とし、自分が辿ってきた巨大な穴に目がけ直進しようとした時。


「焦らなくても私はここよ」


「っっ!?」


 足をバネに突進しようとした矢先に、突如目の前に空間転移してきたイズリス。


「さっきの一撃でずいぶんボロボロね。けれど、よく耐えたわ」


 言いながら、イズリスはポロの頭を掴み。

 そのまま『エドゥルアンキ』入り口付近の地面に叩き落とした。


 そして、土にめり込むポロの前にイズリスは降り立ち。


「これで私をあの子から引き剥がした件は許してあげる。そして、これは最後通告よ」


 浮遊魔法で無理やりポロを起こし、彼に問う。


「私の部下になりなさい。そして共に世界を導くの」


 ありふれた言葉ながら、壮大な言葉。

 この発言が許されるのは、真にその力を持つ彼女ただ一人であろう。


 先の攻撃で深手を負ったポロ。身体の修復にはまだ時間がかかる。

 そんな中、万全でない状態で、ポロは生か死の選択を迫る言葉に返答する。


「……お断りだよ」


 その問いにおいて、時間稼ぎなどで曖昧な答えを口にしたくなかった彼は、はっきりとイズリスに返した。


 真っ向からの、否定の言葉を。





ご覧頂き有難うございます。

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