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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
最終章 星の楽園、偽神に抗う反逆者編
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285話 ポロの中に眠る協力者たち


 ポロとの戦いに、依然として余裕を見せるイズリス。


「……ふぅ」


 傷の癒えたポロは体を起こし、呼吸を整えると。


「【次元渡り(ディメンションムーヴ)】」


 バハムートの力を借り、空間を移動する付与魔法を唱えた。

 そして空間移動により瞬時に彼女の背後を取ると。


「【半人半蛇の尻尾(エキドナ・テイル)】」


 片足に鞭のような黒い蛇の尻尾を生成し、イズリスの頭上目がけ回し蹴りをする。

 しかし、尻尾の先端が頭部に直撃するも、イズリスは微動だにせず微笑を浮かべているだけだった。


「また……手加減したわね」


 すると彼女は反撃とばかりに彼の生成した尻尾を片手で掴み。


「おしおきよ」


 そのまま体を軸にグルグルとスイングしながら魔法で作られた蛇の尻尾を引き剥がし、その反動でポロを壁際へと叩き付けた。


「ぶふっ!」


 顔面から激突したポロは、ズルズルと壁を流れ落ち地面に倒れる。


「いい加減にしなさい。この体はもう私の物なの。真面目に戦う気が無いのならそこで見ていなさいな。私の世界改変を」


 言いながら、イズリスはロープ状の光源体を生み出しポロへ飛ばす。


「【光の捕縛(フォースハイレイン)


 それは生き物のようにウネウネと躍動し、ポロの首と両手足に巻き付き、壁へ磔にした。


「考え直すまで、あなたはこのままよ」


「うっ……!」


 ポロは空間移動で拘束から逃れようとするが、光のロープに繋がれている体に全く力が入らず、魔力も効果を成さない状態だった。


 その間イズリスはフロアの中心に立ち、体内から魔力を放出する。


「この体、わりと不自由なく動けるけど、ちょっと貧弱なのよねぇ……」


 そして、突如彼女から空気を揺るがす程の強大な圧がほとばしった。


「【魔法最大化マギア・メギストス】」


 己の魔力の最大値を超える強化魔法を唱えると。


 同時に彼女の足元から石碑のような物体が現れる。

 そこにはキーパッドのようなボタンが幾つも配置されており、イズリスは慣れた手つきでそれを操作し始める。


「なにを……しているの?」


「ん~? 気になる?」


 含んだ笑みを浮かべながらポロに視線を向ける。


「これはねぇ、魔力を注ぐことでこの世界のあらゆる生物の情報が閲覧出来る装置なの。そしてこれのもう一つの機能は、世界の生物を好きなように消去デリート出来るのよ。とっても便利でしょ?」


 ポロは彼女が何をしようとしているのかを理解した。


「ちょ~っと時間はかかるけど、ちゃんと一人一人の個人情報を元に、生かすべき人を選別するの。だから安心しなさい。適当に選んだりしないから」


「……そんなこと、させない。……個人の一存で人類の運命が決まるなんて、絶対許さない」


 ジタバタともがくポロだが、拘束される体から力は出ず、一向に脱出出来る気配がない。


 と、そんな時だった。


 ポロの脳内で、アラクネの声が聞こえる。


『坊よ、バハムートの力を使えば拘束を解く事は出来るが、このままではジリ貧じゃ。あの女の言う通り、力をセーブしたままでは勝てんよ』


 ――けど、出来るだけエルメルさんの体を傷つけたくないんだ。あの人はルピナスさんにとって大事な人だから、どうにかして助けてあげたいんだ。


 すると、今度はバハムートが答える。


『上手くいくかは分からないが、一つだけ方法がある』


 ――っ! 教えて。


『彼女の魂は未だ体に縛られたままだ。ならば、私の次元干渉能力で、彼女の魂とイズリスの魂を分断させる。ただし成功する確率は低い』


 バハムートがそう言うと、ポロの精神の奥底で眠っていたハジャが告げる。


『では、私も手を貸そう』


 ――ハジャ……。


『イズリス様の気の波長は記憶している。私ならば確率を上げられるだろう』


 ――ハジャにとっては、あの神様が大事な人なんじゃないの?


『ああ、恩人だ。地上の世界で、不条理な迫害を受け憔悴していた私を導いて下さった恩人だよ』


 ――いいの?


『いいんだ。あの方を止めるのは、本来私の仕事だ。それに、私は自分の弟子に力を貸すと決めたのだ。たとえ過去に受けた恩を仇で返す結果になろうともな』


 そう言うと、ポロも静かに頷き。


 ――そっか。じゃあお願い、ハジャ。


 ここまで育ててくれた師に感謝を述べ。

 ポロは自身の中にいる仲間達の協力を仰ぎ、作戦を開始した。





ご覧頂き有難うございます。

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