25話 一方その頃攻略部隊【3】
話は戻り、最深部手前の絶体絶命真っ只中。
現在、二体の統治者級の魔物と対峙する攻略部隊。
不死の総称、アンデッドの中でも呪術を極めた白骨体、死神の親玉、死神皇帝。
そして昆虫型の魔物であり、上半身が人型、そして下半身が蜘蛛の姿をした女帝、女王蜘蛛。
二体共、かつて実在したとされる魔人の姿に酷似している事から同じ名が付けられた魔物である。
真偽はさておき、その力は記述で伝えられている魔人の脅威と同じだとされている。
「ちょっと……もうすぐ目的地だってのに……こんなことってある?」
未だに信じられないと言った様子で弱々しく呟くリミナ。
そしてバルタは前方の二体を交互に見ながら疑問を浮かべる。
「しかし妙だな、同等の力を持つ統治者級が同じ場所にいるなんて」
魔物の界隈では縄張り争いが激しい。
共存関係にない他種族の魔物は、基本同じエリアにはいないのが定石である。
しかし、縁もゆかりもない二体の魔物は、目的を同じくして攻略部隊の侵攻を食い止めようと共闘して立ちはだかっていた。
「パワーバランスおかしくねえか? このダンジョン」
「のん気に言ってる場合じゃないでしょ! ここは熟練者級までしかいないんじゃなかったの?」
バルタの緊張感のない態度に怒りを露わにするリミナ。
当のバルタは落ち着いた様子で戦略を練り始める。
「慌てんな、リミナ、お前と俺が主力だ。分担して戦うぞ」
「一体でも強力なのに、戦力を分けるって言うの?」
驚くリミナに、バルタは頷く。
「大丈夫だ。俺が蜘蛛女の相手をしている間、他の全員で骸骨を叩け」
「ちょっ……あんた一人で統治者級を相手にするつもり?」
「それが一番効率が良さそうだからな。そっちが終わったら手伝ってくれや」
ずさんな作戦に、リミナは良い未来を想像出来ない。
「そんな……」
「おらっ、敵さん方が動き出したぞ。お姫さんは周囲に【防御結界】をかけてくれ。皆のセーフティゾーンを確保したい」
「は、はいっ!」
バルタに言われ、アルミスは早々に広範囲に広がる【防御結界】を展開した。
そして、バルタは手投げ斧を両手に持ち、アラクネに向かい走って行った。
「ああもう! みんな、相手はアンデッドよ、聖水を持ってる人は体と武器にかけて清めて。光属性の魔法が使える人は積極的に攻撃を!」
リミナは皆に指示を出し、携帯式ハルバードを伸び開かせると、限界まで気を練り、宙に浮遊しているリーパーロードの元へ跳躍した。
そして空中でバッテン十字に飛ぶ斬撃を放った後、ハルバードの槍の部分で刺突を加え、地面に叩き落とす。
「【四閃斬撃】!」
聖水で清めた武器の攻撃により、リーパーロードの体は浄化作用で焼かれたような黒い煙を発した。
怯んだリーパーロードに、さらに追撃を仕掛ける……が。
その一瞬、リミナはリーパーロードの赤く光る眼光を見てしまい。
「しまっ…………」
相手に呪いをかける邪眼により、リミナは壮絶なる恐怖を植え付けられた。
「ひっ………これ、は……【永久的恐怖】……」
と、完全に呪いにかかってしまったリミナは、リーパーロードの姿を見た瞬間、その場で嘔吐した。
「はあ……はあ……うっ……」
恐怖で身がすくむ中、助けを呼ぼうと周囲を窺うが、近くにいた冒険家や兵士も恐怖の呪いを植え付けられているらしく、まともに動けそうにはなかった。
そしてゆっくりと近づく目の前の死神は、巨大な鎌を振り下ろそうと構える。
「あ、ああ……やめて……来ない、で……」
ガタガタと震えが止まらず、腰が抜けて動けない状態。
一秒、また一秒と死が近づいてくる。
と、その時、咄嗟にアルミスは光魔法を唱えた。
「【解呪の波動】!」
辺り一面に光の波動が広がると、リミナが抱いていた恐怖が嘘のように晴れ、ギリギリのところで死神の鎌を回避した。
「お姫様……」
「私も、お役に立てます。皆さんの力になれます!」
遠くから言い放つアルミスは、自らも戦う意思を示していた。
リミナはクスリと笑い、静かに頷く。
「呪い無効化魔法は使える?」
「はいっ! 【呪術拒絶】!」
アルミスがそう唱えると、周囲の者の体に光のベールのようなものが纏わりつき、相手の呪い魔法を反射する壁を作った。
「ありがと、アルミス」
「……今、名前で……」
「無礼だった?」
アルミスはブルブルと首を横に振った。
「いえ、嬉しいです。とっても」
お互いの士気が高まった二人は、武器を構えリーパーロードに目を向ける。
「あんたなんて呪い魔法が使えなけりゃただのスケルトンと変わらないのよ。さっさとここでくたばんなさい!」
そして攻略部隊は、リーパーロードに総攻撃を仕掛けた。
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