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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第五章 エルフの領地、冥界に蘇る幻夢編
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244話 導かれるフルコンダクター


『冥界の谷底』にて、ポロ達が始まりの転生者と別れた後。


 突如エルメルは呆けた様子で「行かなきゃ」とうわ言のように言葉を発し、空間転移でその場から消えていった。


「フォルトさん! エルメルが……」


「分かってる。場所も把握しているよ」


 取り乱すルピナスをフォルトはなだめ、そして難しそうな顔を浮かべる。


「エルメルちゃんは、近いうちに『海峡の裂け目』から現れる遺跡へ行こうとしているんだ」


「遺跡って……さっきフォルトさんが言ってた?」


「ああ、オールドワンが起動させた、『エドゥルアンキ』のもう一つの形態さ」


 ルピナスは力が抜けたように腰を落とし、愕然と地面を見つめた。


「予見した時間よりも早い……。未来が不安定になっているのかね」


 そんな事を呟くフォルトにサイカは問い詰める。


「おい、今はどういう状況だ? 何故急にあの女が去って行った?」


「誘われてしまったのさ、『世界の支柱』が放つエネルギーに」


 眉をひそめるサイカに、フォルトは続ける。


「『統一する者(フルコンダクター)』は『世界の支柱』に導かれる。その強い魔力と共鳴して、一つになりたがるんだよ。君の国の王女様もそうだっただろ?」


 その言葉に、サイカは『黒龍の巣穴』での出来事を思い出した。


 アルミスが言いつけを破り、ポロ達の魔導飛行船にこっそり侵入してでも近づこうとした、『世界の支柱』にある巨大な魔鉱石。


 彼女ら特別な力を持つ者は、その魔鉱石に誘われ、そして人柱として同化する。

 そんな伝承まであるのだ。


「四つの柱が一つになったんだ。純粋にその効力も四倍だろう」


 そしてサイカは、ある不安が脳裏をよぎる。


「っっ! 姫様!」


 アルミスの状態である。


 以前のように、彼女もまた『世界の支柱』に吸い寄せられているのだろうかと。


「そうだね、アタシの【空間の扉(ポータル)】を使いなよ。彼女の元まで送ってあげる」


 そう言って、一同はエルフの里へ空間転移していった。

 だが、時はすでに遅く……。










 数分前、エルフの里にて。


 グリーフィル軍の脅威が去った後、里のエルフ達は壊れた建物や亡くなった者の埋葬など、後始末に追われていた時だった。


 ふと、アルミスとエリアスは同時に遠くを見上げる。


「ん? アルミス、どうしたの?」


 不思議に思ったリミナが彼女に尋ねると。


「行かなきゃ……」


「なんて?」


「呼ばれているの。『世界の支柱』に」


 言いながら、アルミスはエリアスの手を引き、フラフラと歩き出す。


「ちょっ、ちょっと!」


 正気ではない彼女達の表情を心配していると。


「おい、ナナ、どうしたんだよ?」


 近くにいたナナまでもが、二人と同じ方向を向き歩を進める。


 心配したバルタは彼女の肩に手をやるが、ナナはその手を振り解き。


「呼んで、る。早く、行かなきゃ」


「ナナ……?」


 そう呟き、三人が同時に固まると、ナナは前方に【空間の扉(ポータル)】を生み出し。


「おい待てって! どこ行くんだよ?」


 バルタの問いには答えず、三人はそのまま空間転移で去って行った。


「……何なんだ、一体」


 理解が追い付かない一同の元に、一歩遅れてポロ達が到着した。


「姫様! ご無事で……」


 サイカが呼びかけた時には、【空間の扉(ポータル)】は閉じかけの状態であり。


「姫様っ!」


 彼女の声も虚しく、その扉は消えてしまった。










 その後フォルトは皆を集め、これまでの事を説明した。


「……というわけでね、彼女達は皆、オールドワンの元へ向かったんだよ」


 すると、急いた様子でバルタは尋ねた。


「なあフォルト、お前未来が見えるんだろ? なら、これからどうなるかもお前は分かるんだよな?」


「最悪の未来ならいつでもね。けど、軌道修正しようとすれば、少しずつズレが生じる。アタシ達はそのズレから新たな道を構築しなきゃならないんだ。多少の時間はかかるよ。つまりここから先は、直近にならないと予知出来ないのさ」


 と言うフォルトに、「んだよ、使えねえな」と愚痴を漏らす。


「はは、そうだね、『時の魔女』が聞いて呆れるよ。本当に」


 などと自虐で返しながら。


「けど、彼女達はまだ無事だよ。今は海底にある遺跡に向かったからアタシ達じゃ近づけないけど、一週間もすれば遺跡は地上から顔を出し、空へ浮上する。その時に乗り込めるはずさ」


 一先ずの身の安全をバルタに説いた。

 と、そこでルピナスも彼女に問う。


「フォルトさん。遺跡がまだ海底に沈んでいるなら、エルメル達も近づけないんじゃないの?」


 フォルトは「いいや」と一言。


「『統一する者(フルコンダクター)』は『世界の支柱』に導かれると言っただろ? あの海域に近づくと、自動的に転移されるシステムらしい。それも彼女達だけがね。今さっき未来を見た結果だから間違いない」


「それじゃあ……一週間は手出し出来ないってこと?」


「そうなるね。だからまずは……グリーフィルと連合国の戦争で、オールドワンがどう動くのかを予想しないといけない」



 近々起こる世界大戦で、オールドワンはどう動くのか。


 皆はそれぞれの思いを胸に。


 戦いは、最終章へ向かう。





ご覧頂き有難うございます。


今回で第五章は終わりです。次回から幕間を少し挟んだのち、最終章へ向けて物語は進んでいきます。

出来れば最後までご覧頂けると幸いです。

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