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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第五章 エルフの領地、冥界に蘇る幻夢編
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218話 遅れて到着


 冥人と別れ、ポロは下へ続く一本道を走っていると。


 突然、前方に【空間の扉(ポータル)】が現れ。

 中からエリアスと、彼女を抱えたアルミスが飛び出してきた。


「んむっ?!」


 突然襲ってきたアルミスの胸にぶつかり、ポロは彼女らの下敷きに……。


「いたた……、えっ、ポロちゃん!」


 空間転移先にばったり遭遇したポロにアルミスは驚いた。


「ふぁるひふ(アルミス)、ふぇりあふほ(エリアスも)」


「ふ、はは、ちょっと、くすぐったい」


 アルミスの谷間に挟まれながら、ポロは彼女達の無事に安堵し。


「ぷはっ……。二人共、どうしてこんな場所に? みんなは?」


 アルミスに現状を問うと、ハッとした様子で深刻な表情を浮かべた。


「それが……みんなでハジャを食い止めるから、私達は先に里へ避難しろって、サイカが……」


 ポロは何となく察した。


 サイカとしても、二人を守りながら戦うのは分が悪い相手だと悟ったのだ。

 彼女が強いのはポロも十分知っている。

 その他にバルタやグラシエ、ナナもいる。前回ハジャと戦った時とはメンバーが違うが、皆強い。


 だが、ハジャはそれ以上に強いことも知っているのだ。

 サイカもそれを危惧して、王女二人を先に逃がしたのだろう、と。


「そっか、話し合いをするって言ってたけど、下ではもう戦いが始まっているんだね」


「うん、メティアさんが、ポロちゃんをあの人に近づけさせたくないからって、先手を打ったの」


「メティアが?」


 彼女の動向が気になりつつも、ポロはアルミスの話に納得し。


「けどまあ、二人を逃がしたのは正解だよ。ハジャが相手だと最悪、国の王女様を死なせかねないからね」


 するとアルミスはポロに言った。


「メティアさんから、ポロちゃんも一緒に連れて戻ってと言われているの。ポロちゃんの過去の話はハジャに聞いておくからって」


「もう〜、それだと僕が来た意味ないじゃん。ノーシスもメティアも、そんなに僕がヤワだと思っているのかな」


 ハジャは体を乗っ取る為、自分を呼んだのだとノーシスは言っていた。

 だがポロとて、そう簡単に体をくれてやるつもりなど、さらさらないのだ。


「きっと、ポロちゃんを心配しているんだと思う。メティアさんも、ノーシスさんも」


「いや、メティアはともかく、ノーシスは違うよ。本気で僕の命を取ろうとしていたし」


「そうかな? ノーシスさんがポロちゃんを見た時、少しだけ、優しいマナを感じたよ。私、エルフだから魔力の性質を感じ取れるの」


 そうアルミスは主張した。


 たしかにノーシスは、後で蘇生させると言った。

 一度ポロを戦闘不能にしてでもハジャの元へ行かせたくなかった彼の真意。

 それが何なのか、ポロは考えても分からなかった。


「便利だね~魔力感知能力。でも、仮にそうだとしても、僕は行くよ。僕の事で、誰かが犠牲になってほしくないからね」


「ポロちゃん……」


「アルミス、エリアス、君達は族長さんの家で待ってて。必ずみんなを連れて帰るから」


 その答えを、アルミスは知っていた。そしてメティアも。


「やっぱり、止めても行くの?」


「うん」


 ポロは決めたことは必ず実行する。その性格は知っている。

 知っているからこそ、メティアはアルミスにも無理に連れて行かなくていいと頼んだ。


 代わりにメティアは、ポロが来る前に終わらせると決意し。


「分かりました。私はおじい様の家で待ってるわ。私がいると足手まといになりそうだから。だからポロちゃん、ちゃんと全員で帰ってきて」


「アルミスも、帰り道に気をつけて」


 アルミスとエリアスはポロに別れを告げると、再び【空間の扉(ポータル)】を開き空間転移した。


「さて……僕も急いだほうがいいな」


 そう呟き、『世界の支柱』が輝く場所を目指して走り出した。










 ようやく最深部へ到着したポロは、辺りの様子を見て状況を把握した。


「やっぱり、みんなボロボロじゃないか」


 ルピナス、ナナ、タロスはエルメルと交戦中。

 そしてサイカ達はバルタ一団と共にハジャを相手にしている。


「めずらしい組み合わせだけど、ハジャには勝てないか……」


 彼らの様子を眺めていると。


 ハジャもポロが現れたことに気づき、微笑を浮かべた。


「来たか、ポロ。では戯れはこの辺りにしておこう」


 そう言うと、ハジャは周囲を巻き込む波動を放ち。


「【破滅の波動(カタストロフ)】」


 近くにいた者達は皆、全身に走る衝撃に耐えきれず、その場に倒れた。


「おい……ウソだろ……こんな技も持ってるのかよ……」


 ギリギリ意識を保つバルタは、到底埋められぬ力の差に驚愕する。

 彼の横を素通りし、ハジャはポロに近づくと。


「ポロ、これは彼らが下した決断だ。私から始めた事ではない。それは理解してもらおう」


 無暗に争おうとしていたわけではないと弁解を付け加え。


「うん、分かっているよ。理由はさっき聞いたから」


 と、ポロも承知の事実だとハジャに告げる。


 だが次の瞬間、ポロは目にも留まらぬ速さで地を蹴り。

 ハジャに向かって、爪の手甲で切り裂いた。


「【烈波爪術スラッシュタロン】」


 マナ粒子で作られたハジャの分身体は真っ二つに両断され、地面に落ちる。


「それはそれとして、どんな理由だろうと僕の仲間に手を出したんだ。その事については怒らせてもらうよ」


 躊躇なく攻撃するポロを見つめながら、分身体がマナ粒子の粉塵となって消えると。


 再び奥から別の分身体が現れる。


「良い奇襲だった。やはりセシルグニムでの一件で、ずいぶんと学んだようだな」


 と、ハジャは不意打ちを食らったことに憤りは見せず。

 逆に元弟子の成長を、素直に称賛するのだった。





ご覧頂き有難うございます。

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