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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第五章 エルフの領地、冥界に蘇る幻夢編
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210話 ポロとノーシス、同僚の戦い


 ノーシスは気を纏わせた銃弾を躊躇なくポロへ連射し。

 対するポロは、獣の如き俊敏なステップで躱しながら接近してゆく。


 そしてポロの攻撃範囲内まで距離を詰めると、ノーシスは懐から手榴弾を取り出し前方へ投擲した。


「またさっきの重力爆弾?」


 ポロがそれを避けると、その弾が地面に落下した瞬間周囲の地盤が崩れ、円盤状にクレーターが生まれる。


 予想通り、先程ハジャに食らわせたものと同じ、周囲に重力負荷をかける魔導爆弾だった。


「同じ手は食わないよ」


「ああ、同じじゃないさ」


 ノーシスがそう言うと、崩れた地面から突然火花が飛び出し。


「え、まさか……」


 突如、地中から大爆発が巻き起こる。


「うひぃい……【暗黒障壁ダークプレート】!」


 咄嗟にポロは上空へ飛び上がり、空中に防御壁の足場を作って回避した。


 上から地面を覗くと、次々とライン状に連鎖しながら誘爆してゆく地中。


 おそらくは、あらかじめ周囲に地雷を仕込んでおり、重力負荷で地面を凹ませることで、地中に設置した地雷を着火させたとポロは考える。


「この辺一帯から火薬の匂いがすると思ったら……、ノーシス、僕を殺す気マンマンじゃないか」


 そんな愚痴を漏らしていると。


 ふと、地上から巻き起こる黒煙の中からノーシスが跳躍し、ポロの防御壁の上に飛び乗ってきた。


「空中に逃げるのはズルいぞ」


 そう言って、ノーシスはポロの腹部を蹴り上げる。


「ごふっ!」


 宙を舞いながら吹き飛ぶポロに、ノーシスは銃弾を放ち。

 回避の出来ないポロは体を捻り、手甲で銃弾を全て弾き返す。


 数発の銃弾を弾くとノーシスは弾切れを起こし、その隙にポロは新しく【暗黒障壁ダークプレート】を生成し足場を作った。


「ノーシス……さっきから躊躇いがないね。僕達運送ギルドに勤める同僚じゃないか」


「急に身内面をするなよ、ポロ君。でも心配するな、たとえ死んでも、あとでナナに蘇生してもらうからね」


「命が安いな……。じゃあこっちも手加減はやめるよ」


 すると、ポロは呼吸を整え。


「【空間移動テレポート】」


 瞬時に空間を移動し、ノーシスの背後に姿を現すと。


「っっ?!」


「【烈波爪術スラッシュタロン】」


 至近距離でポロは爪の斬撃を浴びせ、突然の空間移動に反応出来なかったノーシスは、背中に深手を負いながら地面に落下した。


「ぐあっ……!」


 鈍い音と共に地に打ち付けられたノーシスの元へ、ゆっくりとポロは歩み寄る。


「わざと急所は外したよ。僕は、ここで君に死んでほしくないから」


「く……ポロ……」


「まだ続ける?」


 獣人の身体能力は、人間に比べて圧倒的に高い。

 こと肉弾戦において、ポロがノーシスに負けることはないのだ。


 だが、その差を埋める為にノーシスは多数の武器を所持している。


「これで……勝ったつもりか?」


 ふとノーシスは着ていたブレザーを脱ぎ、ボールのように丸めると、ポロに向かって思い切り投げつけた。


 その瞬間、ポロは感知する。

 火薬の匂いと、秒針の音を。


「っっ! 時限爆弾!」


 気づいた時には、ブレザーに仕込んだ時限爆弾は激しい轟音を立てて爆発した。


「く……【半人半蛇の鱗(エキドナスケイル)】」


 寸前でポロは硬化の魔法を唱え、ダメージを最小限に抑えると。


 爆炎と煙が風に流れ、クリアになった視界でポロは見た。


「ノーシス……その体……」


 上着を脱ぎ捨てたノーシスの上半身、そこに彫られた、禍々しい刻印を。


「気づいたか? これは体のリミッターを解除し、力を限界まで増幅させる呪印だよ」


 上半身の至る箇所に、黒く掘られた呪印。

 およそ正気ではないと、ポロは思った。


「そんなにびっしり呪印を施したなら、さぞかし高い効果を発揮するんだろうね。でもノーシス、その力を使うって事は、それに見合う対価を払わなきゃいけないんでしょ?」


「ああ、そうだね。対価は僕の寿命だ。命を燃料にして絶大な力を得る。強大な魔物や化け物染みた敵と渡り合うには、それくらいのリスクは負わなければいけないんだ」


「……そうまでして僕を止めることに、何の意味があるのさ?」


「ケジメだ。あの日守れなかった弟への償いだ」


「……?」


 ノーシスは割れた眼鏡を投げ捨て、青く燃える瞳でポロを睨み付ける。


「来いよ偽物。僕はこれでもSランク冒険家のメンバーだ。そこら辺の飛行士と同じだと思うなよ!」


 命を削る覚悟で、ノーシスは尚もポロに立ち塞がる。





ご覧頂き有難うございます。

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