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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第五章 エルフの領地、冥界に蘇る幻夢編
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203話 彼らの目的


 族長の家の中、ナナの結界に捕らえられたポロは、何度も壁を叩き脱出を試みるが、ビクともせず。


 その場にいた族長も魔法で結界を解除しようとするが、全て弾かれる。


「ダメですね。相当強力な魔力が込められている。……人間の魔力でこれ程の結界を作れるとは……」


「くそぉ、これじゃあいつ出られるか…………あっ」


 ふと、ポロは思い出した。


「バハムートの力があるんだった。なんで忘れてたんだろう」


 次元渡りの神獣、天王バハムート。

 彼を取り込んだポロの体にも、空間を掌握出来る力が備わっていた。


「【空間移動テレポート】」


 ポロが唱えると、突如ポロの体が消え。

 瞬く間に、結界の中から族長の隣へと瞬間移動していた。


「ふぅ……もっと早く気づいてればよかった」


「今のは……? 【空間の扉(ポータル)】とは違うようですが……」


「原理は同じだけど、【空間の扉(ポータル)】よりも簡素で使い易い分、遠くへは移動出来ないよ。せいぜい百メートル圏内かな」


「それでも大したものです。空間魔法は高度な技術を要するものですから」


 族長は見たことの無い魔法を扱うポロを称賛するが。

 所詮は借り物の力だと、ポロは軽く流す。


「それはともかく、族長さん。僕はアルミスとエリアスを助けたいんですけど」


「ええ、それは私も同じです。ですが…………」


 煮え切らない様子に、ポロは小さく息を吐いた。


「里の掟……ですか?」


「はい……私が一介のエルフに過ぎなければ、掟を破り、里を追放されようと処刑されようと構わない。しかし里の長という、皆を纏める立場が掟を破れば、里全体の秩序が崩れかねない。我々の先祖に誓って、それはどうしても避けたいのです」


「二人の命がかかっていても?」


「…………」


 難しい顔を浮かべる族長に、ポロは意地悪なことを言ったと反省した。


「すみません、答え辛いですよね。なら、族長意外の里のエルフなら問題ないですか?」


「え、いやしかし……わざわざ私の代わりに掟を破らせるのはさすがに気が引けますので……」


「じゃあ、里を追放されるべき罪人ならいいですよね?」


「はっ?」


 ポロは先程襲撃してきたエルフ達を窓の外から見つめ、協力を仰ごうとしていた。


「先に秩序を乱した者に、もう一度罪を被ってもらいます。そこは、族長さんには目をつぶってほしいな」


 と、族長にあらかたの説明をし、ポロは仲間の元へと戻った。
















 だが、ポロが先程の宿へ戻ると。


 その入り口で、激しい戦闘でも起きたのか、サイカとタロスがその場に倒れていた。


「二人とも、何があったの? ボロボロじゃん……」


 突然の惨状に驚くポロへ、サイカが起き上がり口を開く。


「ポロか……、いや、見た目よりは軽傷だ。手加減されたからな」


「たしかに斬り傷とかはないようだけど、誰にやられたの?」


「テティシアで会った、鬼人オーガの女だ」


「えっ……」


 それは以前、テティシア城の地下研究施設にて共闘したキメラの女性、グラシエ。


「敵意がなかったものでな、私達も油断した。他の皆は、部屋で気を失っている。それもあの時いた、狐型獣人の幻術にやられた」


「リノさんまで絡んでいるの……?」


『俺の体は元々幻術が効かない為免れたが、他の船員は全滅だ。自力で幻術を解けたのはサイカだけだった』


 と、タロスは不甲斐なさが感じられる素振りを見せる。


 ノーシスやナナ、そしてキメラの二人まで絡んでいることから、ポロの予想は確信に変わった。


 ――バルタがここに来ている。でも、どうして……。


 そこで気づく。先に現れたエルフ達はただの陽動であると。


 本命のグラシエとリノは皆の足止めとして現れ、その間にノーシスとナナで族長の家に忍び込み、


『冥界の谷底』の封印を解くように脅迫する作戦だった。


 エリアスを人質に取って。


 しかし、何故彼らも『冥界の谷底』に用があるのか。


 その目的が分からず、加えて、バルタらしくないやり方だとポロは思った。


「おいポロ、フークリフト様の家で何があった? 姫様の声が聞こえたが」


「…………うん」


 そして、ポロは族長の家で起きた事をサイカに話した。





ご覧頂き有難うございます。

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