19話 半人半蛇獣(エキドナビースト)【2】
メティアに【魔光弾】が被弾する直前。
『伏せろ』
タロスはメティアの背中を押してスライディング、寸前のところで回避し、【魔光弾】は近くの地面に着弾した。
大地に触れた瞬間、【魔光弾】は広範囲に渡る爆発を起こし、周囲の草木は地面の土ごと消し炭となる。
爆風に飛ばされながら、二人はどうにか危機を逃れる。
しかし……。
「助かった、ありがとタロス……タロス?」
よく見ると、タロスの右半身は砲撃を受けた痕のようにきれいに無くなっていた。
「それ……まさか私を庇った時に?」
『気にするな、痛みはない』
痛覚のない体とはいえ、空虚の出来た痛々しい半身を見ると罪悪感が押し寄せる。
「ごめん、私のせいで……」
『気にするなと言っている。それよりも、奴はまだ魔力が残っているようだ』
と、エキドナビーストを見やると、高出力の球体を放ったにも拘わらず、すでに次の【魔光弾】を生成し始めていた。
『メティア、先に逃げろ』
「はぁ? 何言ってんの……」
『この体では上手く動けん。俺が注意を引き付けている間にお前は逃げろ』
「馬鹿言ってんじゃないよ! 出来るわけないでしょ、そんなこと」
突然の自己犠牲に異を唱えるが。
『ここで二人ともやられたら誰が皆を守るんだ? 上手くすれば次で魔力切れを起こすかもしれん。その隙にもう一度攻撃を加えろ』
「でも、そしたらあんたが……」
『霊魂が消えなければ俺は死なない。だから、行け』
そう言って、タロスは片腕で銃剣を構え、エキドナビーストに銃弾を撃ち込む。
「くっ……!」
奥歯を噛み締めながら、メティアはその場から走り去った。
『それでいい。お前達を守ることが、俺の最後の役目だ』
タロスは呟き、弾が切れるまで撃ち続ける。
そして怒りを露わにしたエキドナビーストはタロスに標準を合わせ、魔力を圧縮した【魔光弾】を発射。
と、その直前。
「【直下強襲】」
突如上空からのポロの奇襲により、頭部を打ち付けられた勢いで口から放たれる【魔光弾】は自身の真下に着弾した。
自分の攻撃で自爆したエキドナビーストは、その強力な爆発を受けその場に倒れる。
『…………ポロ』
死を覚悟していたタロスは、ギリギリのところで軌道を逸らしたポロを見つめ、ぼそりと呟いた。
『……感謝する』
ポロは爆風で飛ばされながらも、【暗黒障壁】を展開し空中で踏み止まり、柔軟な体さばきでタロスの元へ着地した。
「大丈夫? 体すごいことになってるけど」
『問題ない、多少動きづらいだけだ』
そして見やる半蛇の魔物は、全身が焼け焦げたように重傷を負っている。
しかし未だ息はあり、攻撃の意思もある。
『やはり、統治者級は恐るべき生命力だな』
「けど、さっきの一撃で頑丈な皮膚が剥がれてる。今がチャンスだね」
そう言うと、ポロは再び【幻影分身】で分身体を生み出し、エキドナビーストから噴き出た血を自身の腕に吸収する。
「次で終わらせる。……メティア、手伝って!」
その言葉と共に、いつの間にかエキドナビーストの懐に忍び込んでいたメティアは、全身に風を纏い、真空の刃で上半身を斬り上げる。
「ポロっ!」
メティアの合図で、ポロは分身体と共に上空へ飛び上がり、同時に集めた血で狼の顔を模したような腕を形どり。
そしてメティアの攻撃でがら空きとなったボディーに強烈な一撃を放つ。
「【双頭犬の牙】」
分身体と同時に放つ鮮血の斬撃。
皮膚が剥がれ、柔い肉がむき出しになったエキドナビーストは、ポロの一撃で体を切り裂かれ。
人型の体と蛇の体が分離したその魔物は、もはや動くこともままならず、地面に倒れ絶命した。
召喚者がいなくなったことで、周囲にいた魔物は突如発生した黒い渦に飲まれ消え去った。
息を荒げ、茫然と立ち尽くすポロとメティアは、目の前の強敵を倒したことでようやく安堵し、二人ともその場で腰を落とす。
「あ~もう、なんなのよここ。入口付近で統治者級が出るとか、土地の生態系が崩れてもおかしくないでしょ……」
大地に寝そべりながら愚痴を零すメティアにポロは微笑で返すと、一息ついたポロは再び立ち上がり、エキドナビーストに祈りを捧げる。
「ちょっと……あんたその状態で浄化魔法なんて使ったら……」
「大丈夫、一体だけだし。それに死にはしないよ」
そう言って【霊魂浄化】を唱えるポロ。
すると、いつもとは違う強烈な目眩に、ポロは突然意識を失った。
「えっ、ちょっと……どうしたの?」
慌ててポロの介抱に向かうメティア。
ポロが倒れたのには別の理由がある。
彼が浄化魔法として使っているスキルは、実は『鎮魂』する為のスキルではなく、『吸収』する為のスキルだった。
相手の霊魂を体に取り込み、わずかながらその力を吸収していた。
それにより体内の魔力量や身体能力が変化し、吸収した霊魂が強大であればある程、その反動で強烈な目眩を引き起こすが。
その後、体が超回復するたびにポロは強くなってゆく。
その事実は、ポロ本人も気づいていなかった。
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明日、明後日はお休みさせて頂きます。




