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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第一章 世界の支柱、『黒龍の巣穴』攻略編
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18話 半人半蛇獣(エキドナビースト)【1】


 ここは『世界の支柱』の一つ、『黒龍の巣穴』。

 その入り口付近の平原であり、冒険譚で言えば冒頭部分になるであろう場所。


 そんな場所に、小手調べにしてはあまりにも強大な魔物がポロ達の前に立ちはだかる。


『腕に自信のない者は全員船の中へ戻れ』


 と、タロスは一人前進し、皆を庇う様にしてエキドナビーストの前に立つ。


『根性論で言っているわけじゃない。生き残る自信がないなら無理をするなと言っている』


 無機質な体から発せられる気遣いの言葉に、躊躇していた船員達は皆魔導飛行船の中へ避難した。


「ポロ、あんたもその体じゃ戦えないだろ? さっさと船に入ってな」


 そしてポロを抱えるメティアも彼に退避させようとするが。

 ポロは反発するようにメティアの胸の中から飛び出し、タロスの横に並ぶ。


「ポロっ! 言うこと聞きな!」

「大丈夫、体調は戻ったから。それにさっきより調子が良いんだ」

「嘘言うんじゃないよ!」


 メティアの静止も聞かず、ポロは目の前の統治者アーク級の魔物に武器を構えた。


「タロス、召喚された魔物の相手を頼める?」

『問題ない、が、体は本当に大丈夫なのか?』


 と、タロスもポロを心配するが。


「やせ我慢じゃないんだ。浄化魔法を使うとたしかに気分が悪くなるけど、その後いつもコンディションが良くなるから。理由は分からないけど」


 そう言うと、ポロは魔力を高め、闇魔法で分身体を生成する。


「【幻影分身ファントムアバター


 ポロが唱えると、自身の影から全身真っ黒のポロの分身体が現れ、ポロの動きに合わせるようにして同時に上空へ跳躍した。


 そしてエキドナビーストに狙いを定めると、途端に取り巻きの巨大空蛇スカイサーペントがポロに襲いかかってくる。


『ならば俺が援護しよう』


 しかし、タロスの銃剣から放たれる弾丸で頭部を射抜き、ポロへの妨害を阻止する。


 邪魔者がいなくなったポロは【暗黒障壁ダークプレート】で壁蹴りをしながら空中を飛び回り、分身体と共に回転を加えた斬撃をエキドナビーストに見舞う。


「【螺旋の鉤爪(スパイラルタロン)


 上半身の人型部分を狙った鉄の爪は、確実に魔物の体を捉えた。

 だが、その外皮は岩よりも硬く、二つの斬撃は皮膚をかすめた程度で弾かれた。

 そして反動でよろけた隙に、下半身の巨大な蛇の尻尾がポロと分身体を薙ぎ払う。


「っっっ!」


 極太鞭打の直撃を受けた分身体は一撃で消え去り、ポロは空中から地面に叩きつけられる。


「ポロっ!」


 メティアは血相を変え、ポロが飛来した場所へ駆けつけた。

 そこには巨大なクレーターができ、中央で吐血をしながらビクビクと痙攣するポロの姿。


 メティアは慌ててポロに治癒魔法をかけ、どうにか一命を取り留めたことに安堵すると。


 次第に顔色が怒気に満ちた表情へと変貌する。


「よくもポロをやってくれたねぇ……蛇のまがい物が……」


 一呼吸置いて、【風精の刃(エアリアルエッジ)】で短剣に真空の刃を付与すると。


「【疾風付与ゲイルエンチャント


 さらに自身に風の加護を纏わせ、身体の速度と防御を底上げする。


「ぶっ殺す!!」


 そして突風の如きスピードでエキドナビーストへ猛進してゆく。

 途中向かい来る土流蛇アーススネークを真空の刃で一刀両断し、エキドナビーストの尻尾による薙ぎ払いを寸前で宙に飛び上がり回避。


 魔物の眼前まで飛び上がると、相手の胸元目がけ、付与した風の魔力を全て切っ先に集中させ、渾身の刺突を食らわせた。


 彼女とエキドナビーストの中心に強烈な突風が吹き荒れる中、鉄以上に硬度のある皮膚に、徐々に肉まで刃が到達する。


「貫けぇええええ!」


 手に握る短剣をさらに押し込み、次第に魔物から赤い血が噴き出る。

 だが相手も黙ってやられるつもりはなく、人型の腕がメティアの首元を掴み、人並み外れた力で締め付けた。


「うぐっ……!」


 女性型の細腕からは想像出来ない程の異常な握力は、今にもメティアの首を握り潰さんと力を加える。


『させるか』


 と、その時、タロスはメティアの首を絞めている両腕に何度も銃弾を浴びせた。


 やはり皮膚は貫通しないものの、手首を集中的に狙った射撃により、魔物の腕は一時的に力が緩み、その隙にメティアは拘束から抜け出した。


 飛び蹴りを見舞い、一度エキドナビーストから距離を取ると。

 入れ替わるようにしてタロスが飛び掛かり、メティアが傷を付けた箇所に追い打ちで銃剣を突き刺す。


 その一撃により刃は完全に肉体を貫通し、エキドナビーストは吐血と共に耳をつんざくような咆哮を轟かせた。

 銃剣を引き抜くと、大量の血が噴水のように飛び出し、のたうち回りながら尻尾を見境なく振り回す。


 タロスは尻尾の射程範囲から離れると、未だ弱る姿を見せないエキドナビーストに違和感を覚える。


『急所を狙ったはずだが……魔物では人体の構造が違うのか?』


 人間で言えば心臓にあたる箇所、魔物とはいえ上半身は人型を模している以上、急所も変わらないと踏んでいた。

 だが絶命はおろか、動きも鈍らない生命力に、メティアとタロスは焦りが募る。


「……どうすりゃいいのよ」


 二人係でようやく一撃を与えたが、致命傷には至らず。

 やがて痛みが落ち着いたエキドナビーストは、激高したように二人を睨み付け、口から魔力を込めた球体を生み出す。


「まずい、【魔光弾】! 飛行船から離れないと!」


 それは体内の魔力を圧縮した塊。小ぶりな見た目に反してその威力は砲弾の数倍はある。

 飛行船にかすりでもしたら瞬く間に機内は半壊する。


 メティアとタロスは自分らに標準を向けさせ、飛行船から距離を取り逃げ回った。


 しかし、【魔光弾】が放たれるスピードは驚く程に早く、進行方向を先読みしてその球体はメティアに迫りくる。





ご覧頂き有難うございます。


ちょっとバトル展開が続きます。

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