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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第四章 空中都市、セシルグニム防衛編
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173話 中心地に集まる者達


 ポロとリミナはそれぞれ構え、対峙するハジャに双方から攻撃を仕掛けた。


「【突風穿ち(ガストペネトレイト)】!」


 リミナはハルバードを突き立て刺突を見舞うが。

 直前でハジャは空中に飛び上がり攻撃を回避される。


 だが、すでに空中にはポロが待ち構えており。


 二体の分身体を生み出し、それぞれの腕に狼の顔を模した黒い影を生成。


「【三頭犬の牙(ケルベロス・ファング)】!」


 ハジャの頭上目がけて、黒狼の牙を叩き付けた。


「む……」


 直撃を受けたハジャは地上に落とされ。


 同時に、武器を構えていたリミナの追撃を食らう。


「【風斬大旋風かざきりだいせんぷう】!」


 風魔法を付与したハルバードを振り回し、斬撃纏う竜巻を発生させた。


 竜巻に飲まれたハジャは、無数の刃に斬られながら再び浮上し。


 その上空では、【女王蜘蛛の糸(アラクネ・スレッド)】で生成した柔軟性のある障壁を乗り継ぎ、自身のスピードを加速させているポロの姿があった。


 リミナの竜巻は、丁度ポロが捉える軌道に合わせており。


 竜巻が消えると同時にハジャの懐目がけて、ポロは黒爪を立てながら突進した。


「【百中犬の爪(ライラプス・タロン)】!」


 ハジャの胴体を貫く勢いで飛びかかった突進は。


 しかしながら彼の手に持ったステッキにより致命傷を避けられた。


「悪くない連携だ。私にとって十分な脅威と言えよう」


「っああああああああ!」


 称賛を贈るハジャの言葉を聞き流し。


 ポロは加速したまま下降し、町の噴水場へハジャを叩き落とした。


 反動により跳ね上がる水流。その中から、彼が現れる瞬間を狙おうと黒爪を構える。




 だが、ハジャは水面から顔を出さず……。


 不思議に思ったポロは、警戒しながら噴水場に近づくと。

 その瞬間、背後から電光石火の如くフェンリルが接近し。


「っっ! しまっ……」


 反応が遅れたポロは、フェンリルの巨大な前足で薙ぎ払われた。


 そのひと振りで吹き飛ばされたポロは、周囲の大木に叩き付けられ。


 木がへし折れる程の衝撃に、吐血しながらその場に倒れる。


 弱々しく見つめるポロの視線の先で、ハジャはゆっくりと水面から起き上がった。


「最後まで油断するなと、何度も教えたはずだぞ、ポロ」


 と、ずぶ濡れのハジャはポロに説く。


 ポロとリミナによる連撃を幾度も浴びせられたにもかかわらず、まるで体力の消耗を見せないハジャ。


 分身体の特性か、はたまた元からのステータスか。

 いずれにしても、尋常ではない。

 だが、それでも。


 よろめきながらポロは立ち上がる。

 仲間を守る為、セシルグニムを守る為。

 越えなければならない壁なのだと、そう思い。


 すると、奥からフェンリルに接近するメティアとリミナの姿が目に入った。


「【風精の刃(エアリアル・エッジ)】!」


「【四閃斬撃アスタリスクペイン】!」


 彼女達はフェンリルの背に乗り、全力の一撃を与える。


 ポロから注意を逸らす為に。



 さらに二人に後続して、突如ハジャの上空から巨大な隕石が振り落とされる。


「【隕石召喚メテオライト】」


 傷の癒えたショウヤが神器の大剣に乗り、ハジャの頭上に向けて魔法を放ったのだ。


 寸前でハジャは回避するが、彼の進行方向に先回りしたショウヤは、自身が乗っていた大剣を手に持ち替え、力の限りハジャに振り下ろした。


「……もう戦闘復帰出来るのか。早いな」


「お褒めに預かり光栄だよ!」


 大剣をステッキで受け止められるも、ショウヤはゴリ押しでハジャに斬りかかる。


「みんな……まだ……」


 と、ポロは呟いた。


 いかに目の前の導師が強かろうと、強大な魔物が襲い掛かろうと。


 誰一人、諦めてはいなかった。


 一人でダメなら二人。二人でダメなら四人。

 それでも足りないなら……。


 ポロがそう思っていると。



「【斬空烈波ざんくうれっぱ】」



 期せずして、国最強の騎士が援護に駆け付けた。


 レオテルスの高速連撃は、フェンリルの巨体を怯ませる程の威力を持ち。


 深い傷を負った狼の王は、地面に転がりのたうち回った。


「騎士団長さん……」


「皆、よく敵を食い止めてくれた。礼を言おう」


 そう言うと、レオテルスはポロに視線を向けた。


「ポロ船長、この魔物を片付けたらすぐに援護に回る。それまで、もう少しだけ耐えてくれるか?」


 是非もないとポロは頷き、ショウヤと共にハジャとの交戦を再開する。



 しかし、当のハジャは二人を横目に、視線は奥にいる二人を捉えていた。


「……オニキス、ルピナス」


 二人がここに来た理由は分かっている。


 決別しようとしているのだと。


 オールドワン率いる軍を抜けて、自らの足で真実を探そうとしているのだと。


 二人の転生者を見つめ、そう理解した。





ご覧頂き有難うございます。

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