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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第四章 空中都市、セシルグニム防衛編
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172話 師弟対決


 真っ直ぐ自分を捉えるポロの圧力に、ハジャはそっとメティアの首から手を放した。


 恐怖心からではなく、興味本位で。


「良い頃合で目を覚ましたな、ポロ。もう少しでお前の仲間を殺めるところだった」


 咳き込むメティアにポロは駆け寄り、ギュッと彼女を抱きしめる。


「メティア、肩、痛かったよね? 噛みついてごめん、僕のせいで、ごめん」


 謝罪するポロの頭をメティアは優しく撫で。


「いいよ、こんなのかすり傷さ。それより、あんたが元に戻って本当に良かった」


 未だ罪悪感に苛むポロに、彼女は自分の頬を向ける。


「ん。じゃあ仲直りの印、やって?」

「……うん」


 彼女に要求され、ポロはそっとメティアの頬にキスをした。


「これでこの話はおしまい。いや、あとで詳しく聞くけども! もう気にすんなって意味でのおしまい」


「ありがとう。じゃあ……ちょっと待っててね」


 そう言って、ポロは再び立ち上がる。


 近くではハジャと一戦交え負傷したショウヤがいる。


 メティアに加え、ショウヤまでも、自分のせいで傷を負ったことに、ポロは自身の未熟さを痛感した。


「二人共、僕の為に……」


 するとハジャは「気にするな」と、ポロの意識を自分に向けさせる。


「お前が責任を感じる必要はない。彼らは自らの意志で私に挑んだだけだ。責任追及されるべきは私だろう」


「知ってるよ。当然ハジャのした行為は許されないし、セシルグニムへ攻め入ったその罪は償ってもらうさ」


 言いながら、ポロはハジャを指差し。


「今立っている分身体じゃなくて、本体のハジャにね」


 その体を偽物だと見抜き、自らの足で趣き罪を償えとハジャに指摘する。


「……平常心を取り戻し、ようやく気付いたか」


「普通の状態でも気づけなかったと思うよ。匂いも同じだし。だけど、僕の中にいるバハムートが教えてくれたんだ」


「バハムート?」


 その名を聞いて、ハジャは「なるほど」と微笑を浮かべた。


「そうか、魔人だけでなく、創造主の使いまで取り込んだか……。空間系、幻影系の魔法において、あれの右に出る者はいない。良い者を味方につけたな」


「まあ、そういうわけだから、今のハジャに遠慮はいらないよね?」


「無論だ」


 そう言うと、ポロは大きく跳躍し、上空に【暗黒障壁ダークプレート】を生み出す。


 上下反転しながらその障壁を蹴り、ハジャの頭上へ勢いをつけて降下した。


「【直下強襲ヴァーティカルレイド】」


 落下の際に、闇魔法で自身の腕に黒く鋭い爪を生成し、ハジャに叩き付ける。


 その一撃を、ハジャは杖一本で防いだ。


「まあ、分身体とは言え、その力は限りなく本体に寄せている。そう易々と勝ち星をくれてやるつもりはないさ」


「だろうね、知ってるよ。ハジャはそんなに甘くない」


 ポロはもう片方の手にも黒き爪を生成し、その場で回転しながら斬撃を繰り出す。


「【螺旋の鉤爪(スパイラル・タロン)】」


 ドリルのように突き刺す斬撃に、ハジャは【暗黒障壁ダークプレート】で攻撃を受け止めるが。


 ポロの威力はその障壁を凌ぐ。


「……先程までとは桁違いの力だな、ポロ」


 障壁が打ち破られると同時に、ハジャは後退して攻撃を回避した。


「しかし、まだ私には遠く及ばない。勢いだけで埋まる程、お前と私の実力差は均衡していないのだ」


「それも知ってる」


 二人は会話を交えながらも武器は下ろさず。

 互いに攻防を繰り返し、命の取り合いが続く。


「ならばどうする? 負傷した二人と共に戦うか? 当然、私も危うくなればフェンリルを使わせてもらうが」


 圧倒的不利な状況にもかかわらず、ポロは攻撃の手を止めない。


「だよね……僕も同じ立場ならそうするよ」


 遠くから駆け付ける足音に、ポロは一筋の希望を見出した為。

 仲間が駆け付けてくれた為。


「けどね、僕を支えてくれる人達は、ハジャが思うより多いんだ」


 と言った途端、ポロの体は横に逸れ。


 避けた背後から、強力な気を纏った斬撃がハジャ目がけ飛んできた。



「【憤慨の斬波(レイジングペイン)】!」



 地を斬り大砲のように迫る斬風を前に、ハジャは防御魔法で防げぬと判断し、その身を寸前で回避する。


「ちっ、躱された」


 文句を垂れながら近づくのは、周囲を片付け戻ってきたリミナ。


「ポロ、何なの? そのおじさんと巨大な犬コロは」


「僕の元師匠と、僕の元天敵」


「ふ~ん、それで、アタシはどうしたらいい?」


 近くで負傷しているメティアを見つめ、答えは分かっていながらもポロに決断を迫る。


「僕に、手を貸して」


 その言葉を聞いたリミナは、得意げにハルバードを振り回し。


「オッケー! 死ぬまで付き合ってあげる!」


 仲間の為に、その矛をハジャに向ける。





ご覧頂き有難うございます。

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