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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第四章 空中都市、セシルグニム防衛編
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162話 傾く戦況


ふと、ポロは尋ねた。


「ところでショウヤ、君、すごく強かったんだね。それ程の力があれば、あの日ゴブリンの群れに襲われた時も一人でどうにか出来たんじゃない?」


「あ、いや、これはな……」


 ショウヤはポロとライラを交互に見やり、言い辛そうに口を開く。


「これは後付けの、貰いもんの力だ。……信じてもらえないかも知れないけど、俺はこことは別の世界から来たんだよ。転生者ってやつな」


 ショウヤが言うと。

 彼の口ぶりから何となく察していたポロは、「やっぱり、そうなんだね」と、大して驚く事無く返した。


「君の他にも、何人か会ったことがあるよ。その転生者って呼ばれる人に」


「なんだ、知ってたのか」


「けど、それがどういう人なのかは知らなかった。アルベルトって人も別世界から来たと言っていたけど、そんな話、普通じゃ考えられないしね」


「ま、そうだよな。その転生者ってやつは文字通り、一度死んで、この世界で再び生を受けた人間、らしい。俺も自分の死因を思い出せないから確かな事は言えねえんだけど……」


 未だ不確かな前世の最期に疑問が残るが、ショウヤは今知りうる情報をポロに話した。


 転生者はこの世界に飛ばされると同時に、人並外れた身体能力が付与される事。


 転生特典でオールドワンという人物から『固有能力ユニークスキル』を授かる事。


 彼らは自分の生まれた国、日本に帰る為、何故か『世界の支柱』を守る使命を与えられている事。




「ふうん、転生者がみんな強いのはその力の影響なんだね」


「ああ、前世の俺のままならとっくに死んでるよ。まあ俺の場合は授かるってよりか、気づいたら身についていた能力だけど」


 納得したようにポロは頷くが。


 ライラは二人の会話についていけず、困惑するばかりだった。


「え……あの、ショウヤ様が別の世界から来て、とても強くて……あれ?」


 そんな彼女にショウヤは軽く息を吐き。


「あとで詳しく教えるよ。どのみちお前にも、そろそろ言わなきゃいけないと思っていたから」


 時間が出来た時にゆっくり説明すると、ライラをなだめた。


「けど、まずはルピナスを止めねえと。あいつは本気でこの国を崩落させようとしている。ライラ、もうあの飛行船には戻れないから俺と同行することになるけど、いいか?」


「はい、聞くまでもございません。それに正直、あの船は居心地が悪かったので……」


「なら僕も一緒に行くよ。その人、多分会ったことあると思う」


 ポロは『黒龍の巣穴』で相まみえた二人を思い出し、オニキスが彼女をそう呼んでいたことを記憶していた。


 ともすれば、彼女の真意も聞けるのではないかと思い、ポロは彼らと共に行くことにした。


「なら急ごう。あいつは多分、城のほうに向かったはずだ」


「ねえ、ところでお姉さん、さっきハジャって言ったよね? それってもしかして――」


 と、ポロが何気なくライラに質問を投げかけていた時。


 前方から重みのある地響きが鳴り、その主は真っ直ぐとポロ達の方向へ接近してきた。


 それは単眼の、屋敷程ある体躯をした巨人であり。


「……サイクロプス? 統治者アーク級がどうしてここに?」


「多分、ルピナスの召喚魔法だ。……先にあいつを片さないと」


 ショウヤは空間から神器の剣を取り出し戦闘態勢を取る。


 ――聞きそびれちゃったけど、まあいいか。


 ライラへの質問は有耶無耶になったが、流されるがままポロも双剣を構え、魔物討伐を開始した。












 時は少し遡り、ポロとリミナが町の中央に飛び降りた時の事。


 城の周辺にいたルピナスは、彼らの乗っていた船を眺め、一人呟く。


「……あの魔導飛行船、見覚えがある」


 城の中庭に緊急着陸した魔導飛行船。


 それは以前『黒龍の巣穴』攻略部隊の移動手段として使われていた船だと理解した。


「まさかあのワンちゃん達、国の危機に駆け付けたのかしら? それにショウヤの結界を掻い潜るなんて……」


 などと思考し、彼女に一抹の不安がよぎる。


 統治者アーク級を退け、ダンジョンの最深部まで到達出来る彼らが戦闘に加われば、戦況は一気に傾くのではないかと。


「のんびりしていられないわね。早急に事を進めないと」


 そう言いながら、彼女は前方の岩山にある洞窟の前で立ち止まった。


 内部には石段が連なり、奥深く地下へと続く道。


 おそらくはここが『浮遊石』の眠る場所へ行く道なのだと予想する。


 ルピナスは魔龍フシュムシュから降りると、その龍に見張りを任せ、彼女は一人、地下へ続く石段を下りて行った。











 しばらく歩くと目の前に重厚そうな扉が現れ、その横には『国宝石管理所』と書かれた札が目に入る。


 ようやく見つけたと彼女は安堵し、取手に手をかけると。


「…………?」


 よく見ると、その扉はフチをなぞるように、何かの金属で溶接されており。


「どういうこと? これじゃあ扉を開けることが出来ないじゃない」


 不明な構造に疑問を抱いていると。



「やあルピナス、そろそろ来ると思っていたよ」



 突然、神出鬼没に背後からオニキスが姿を見せた。


「あなた……まさかこの扉を固めたのって」


「ああ、僕の仕業だ」


 と、オニキスは自白する。


「約束通り、今日まで生き延びたよ。さあ、昨日の話の続きをしようじゃないか」





ご覧頂き有難うございます。

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