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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第四章 空中都市、セシルグニム防衛編
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147話 感謝される事への憤り


 城へ続く中央街道にて。

 戦闘員の男は両手に拳銃を構え、無差別に町民に弾丸を撃ち込んだ。


「きゃあああ!」

「ぐあああ!」


 堂々と街道の真ん中を歩き、次々と道行く人へ発砲する男。


「あ~だりぃ、骨のある騎士もいねえし……これじゃあ害虫駆除と変わんねえよな……」


 などと呟きながら。


「おっ、でけぇ的みっけ」


 丁度人ごみになっている場所に向けて、再び弾丸を連射する。

 と、その時。


「弾き返せ、『アイアスの盾』」


 突如上空から円盤型の盾が落下し、町民を狙った男の弾は全てその盾に弾かれた。


 直後、ショウヤも上空から舞い降り、町民を庇うように男の前に立ち塞がる。


「……おい新入り、こりゃあなんの真似だ?」


 ショウヤは【聖戦武器召喚セイクリッドデバイス】を唱えており、彼の周囲には幾つもの神器が浮遊していた。


 そしてショウヤはその中の一つを指名し。


「『魔弓アルテミス』、あいつの武器を射貫け」


 銀色に輝く弓矢は独りでに弦を引き、男の持つ二丁の拳銃を寸分のズレもなく射貫いた。


「なっ……てめえ!」


 男は激高し、懐から新たな拳銃を取り出すが。

 銀の弓はそれをも貫き破壊する。


「っっ! おい、なんで邪魔すんだよ! ガキが余計なことしてんじゃねえぞ!」


「うるせえ、ザコが吠えてんじゃねえよ」


「ああん?!」


 さらに激怒した男は手の平を向け魔法を唱えようとした時。


「【高速移動ラピッドムーヴ】」


 ショウヤはそれよりも早く身体強化魔法を唱え。

 自身を高速化するスキルによって、瞬時に男の懐まで潜り込む。


「はっ……?」


 そして神器の剣を手に持ち。

 柄の部分を向け、男の腹部へ強打した。


「かはっ!」


 直撃を喰らった男は、嗚咽と共に意識が飛び、白目を向きながらその場に倒れた。



 その様子を見た町民達は、ショウヤを味方だと思い。


「ありがとうございます! ありがとうございます!」


「あなたは命の恩人です」


 涙ながらに彼へ感謝の意を示すのだった。


 そんな言葉を敵国の者から言われたショウヤは。


 抑えようのない怒りがこみ上げ、同時に、居た堪れない気持ちになった。


「うるせえ! 俺はお前らの敵だ。いいからさっさと行けよ、行かねえなら、俺がお前らを殺すぞ!」


 敵国の者に感謝されたことが悔しかった。


 彼らは報復すべき相手国の民であり、本当に守りたかったのはこの者達ではなかった。


 村の人達を、同じように守りたかった。


 これでは、村の者に顔向けが出来ない……。


 嫉妬と憎悪と自己嫌悪が入り混じり。


 だからこそ、ショウヤは彼らに感謝などされたくなくて。


 怒鳴りを上げて、脅しをかけて、彼らを追い払った。


 彼らに感謝される筋合いも、自分が感謝される資格も、何も無いのだからと、そう思い。














 一方、セシルグニム上空では。


 三体のドラゴンが縦横無尽に飛び回り、口から放つブレスで建物を破壊してゆく。


 その巨体に立ち向かうは、セシルグニム騎士団の竜騎兵ドラゴンライダー達。


 さらには城からの魔導砲による砲撃で後方支援も担う。


 国の最大戦力でドラゴン討伐に挑むが、相手は魔物階級が最も上に位置する統治者アーク級。


 いくら精鋭部隊と言えども、そう簡単には落とせない強敵である。


 しかし、地上では戦闘員達が町民を襲撃している為、これ以上空に戦力は割けない。


「くそ……一体でも厄介なのに、三体を同時に相手取るには数が足りなすぎる」


 圧倒的に戦力不足だと騎士の一人は嘆くが。


 彼の横を猛スピードで飛び去る姿が見え。

 それは一体のドラゴンへ真正面から突進してゆく。


「あ……団長?」


 飛竜に乗ったレオテルスは、ドラゴンがブレスを吐く瞬間に急上昇し。


 ドラゴンの頭上まで浮上すると、彼は飛竜から飛び降り垂直落下する。


「【一点突飛いってんとっぴ】」


 そしてドラゴンの背に向けて、気を纏わせた剣で強力な刺突を放った。


 その威力はサイカの比ではなく、ドラゴンの硬い鱗を易々貫き、その反動のままドラゴンはレオテルスと共に地に落下してゆく。


「グルルアアアアア!」


 地面でのたうち回る雷光竜ライトニングドラゴンの背に立ったレオテルスは。


「電撃が厄介でな。お前を先に沈めることにした」


 体内の気を込めて、思い切り剣を振り下ろした。


「【滅竜斬刃めつりゅうざんぱ】」


 硬い外皮を物ともせず、レオテルスの放った斬撃は、目の前の巨体を両断。

 五十騎の竜騎兵ドラゴンライダーにも引けを取らなかった一体の竜。

 しかし彼の前ではその力は及ばず。


「あと二体……」


 そしてレオテルスの乗っていた飛竜が彼の元へ戻ると、彼は再び空の戦場へ飛び立っていった。





ご覧頂き有難うございます。


登場人物紹介を更新しました。宜しければどうぞ。

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