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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第一章 世界の支柱、『黒龍の巣穴』攻略編
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12話 出発、そして黒龍の巣穴危険度確認


 出発の日を迎えた朝。

 ポロ達の魔導飛行船に続々と兵士や冒険家が乗り込む。


「荷物はこちらに。皆さんの席と就寝スペースはあちらです」


 ポロの部下達が丁寧に誘導する中、乗降口で人数確認をするメティアは、オーグレイの荷物に目を向けた。


「ちょっとそこのあなた、他の人よりずいぶんと荷物が多いね」


 彼の荷袋は他の者と比べてはるかに大きい。まるで人一人分が入っているかのような。


「俺は慎重派かつ潔癖なんでね、自分の寝袋じゃなきゃ寝れないし、対魔物用に魔道具やトラップを色々詰めてあるんだよ。ああ、壊れ易い物も入ってるからゆっくり丁寧に運んでくれ」


 と言いながら、オーグレイの部下数人係で彼の荷物を運ばせる。

 その様子を見たサイカは。


「貴様が慎重派とは初耳だな。普段の雑な仕事ぶりは演技だったか? まあ、おおかた酒でも積んでいるのだろうが、程々にしろよ?」


 と、悪態をつきながらオーグレイのそばを横切る。

 サイカの態度にオーグレイは舌打ちをし、荷袋を運ばせている部下達に「早く運べ!」と八つ当たりをしながら搭乗していった。


「……何アレ、なんか感じ悪い」


 と、メティアは国の兵士達のまとまりの悪さに違和感を感じる。


 ともあれ、全員が搭乗したのを確認したメティアはタロスに合図を出し、そしてようやく魔導飛行船はセシルグニムから離陸した。










 船が飛び立ってから一時間、皆は機内中央の座席に腰かけ、サイカとメティアが本作戦の説明を進める。


「皆の者、改めて攻略部隊の招集に応じてくれたこと、心より感謝する。知っての通り、我々は今回『世界の支柱』の一つ、『黒龍の巣穴』へ向かい、最深部にある魔鉱石の回収を陛下より仰せつかっている。短い間だが、今ここにいる者達は目的を同じとする仲間。皆協力し合ってダンジョン攻略に挑んでほしい」


 と、サイカは自分で言いながらも、今のところ信用出来る者は少ないと自覚していた。


 今いるメンバーは総勢二十五人。しかしそのうち十人は輸送班の飛行士、ダンジョンには潜らず外で待機をする為、戦力としては除外。


 サイカの部下であるセシルグニムの兵士達も、当初予定した者達ではない為指示通りに動けるか不安が残る。


 そして魔物狩りに慣れている冒険家達はSランク二人、Aランク三人と、S~Eでランク付けされる冒険家の中ではトップの実力者が揃ってはいるが、ほとんどが別のチームからの引き抜きでやってきた即席メンバーである為、やはりこの辺りも協調性が心配になる。


 ――何故陛下はオーグレイを推薦した? せめて私直属の部下で編成していれば……。


 と、サイカは王の采配に疑問を持つが、嘆いていても仕方がないと考え直す。

 もう飛行船は飛び立ってしまったのだから。


 そしてサイカの激励が終わると、今度はメティアが話を続ける。


「じゃあ次にダンジョン内とダンジョン周辺の魔物について説明するわね。以前ダンジョンの調査で『黒龍の巣穴』へ潜った冒険家の資料をまとめたんだけど、まず第一に、ここに出現する魔物に下位戦士レッサー級は一体もいなかったそうよ」


 それは事前に知っているものは知っている情報だが、周囲は途端にざわついた。


「相手にするのは主に上位戦士グレーター級、そして稀に熟練者エルダー級の個体もいるらしいから気をつけて」


 魔物の階級は主に下位戦士レッサー級、上位戦士グレーター級、熟練者エルダー級、そして統治者アーク級の順で強さが上がっていく。


 上位戦士グレーター級までなら中堅冒険家程度の実力でも駆逐は可能だが、熟練者エルダー級となるとベテラン冒険家でも苦戦を強いられるレベル。


 ここに集まった冒険家達は皆熟練者(エルダー)級の首を取った経験者だが、もし複数体で責められた場合、生存確率は限りなく低い。


 そして再びサイカが話を進める。


「潜入期間だが、体力の消耗や食料の残量を考えて、四日以内には魔鉱石を回収して帰還するのが望ましい。魔鉱石の運搬などを逆算して、一日半を使いダンジョンの最深部へ到達出来れば上々だ」


 サイカは巨大なボードに大まかなマップ図と、下手くそな黒龍のイラストを描く。


「最も懸念されるのは『原初の魔物(オリジンモンスター)』の一角、黒龍との遭遇だが、奴は基本夜行性だ。夜になると、巣穴最深部から頂上へ繋がる空洞を使い空へ飛び立って行くらしい。つまり夕刻前までに最深部付近で待機し、黒龍が巣穴から出た頃合いで速やかに魔鉱石を回収する」


 言うは容易いが、実際はそう簡単にはいかない。

 中は未知の領域であり、狂暴な魔物の住処である。計画通りに事が運ぶほうが不安になるくらいだと、サイカは自分の言葉を内心否定していた。



 と、その時。

 見張り役の船員が声を張りながら皆に訴える。


「失礼します! 進行方向より巨大空蛇(スカイサーペント)が複数体、真っ直ぐこちらへ向かってきます!」


 船員の焦った表情に一同がざわつく中、タロスは一早く船の方向を傾けた。


『魔導飛行船に近づく空蛇とは珍しいな。ポロ、砲撃を使うか?』


 そして船長であるポロに指示を仰ぐが、ポロが応答するより早く、Sランク冒険家である竜人ドラゴニュート、バルタが動いた。


「戦闘機じゃねえなら球もそんなに積んでないだろ。……甲板ってこっちか?」


 そう言いながら、バルタは室内を抜け風当たる甲板に出る。


「おい待て、貴様、何をするつもりだ?」


 サイカ達はバルタの後を追うと、彼はすでに自身の魔力を高め戦闘態勢に入っていた。


「準備運動だよ。ずっと船にいたら体が鈍っちまうからな」


 彼女の静止も聞かず、バルタは背中の翼を広げ、船に並んで飛行する空蛇に向かって甲板から飛び立つ。


 そして腰に下げていた二本の手投げ斧(トマホーク)を取り出し武器に炎スキルを付与すると、バルタの倍以上の体躯をほこる巨大空蛇(スカイサーペント)へ投げつけた。


「【炎斬乱舞ブレイズアトラクター】!」


 炎を纏った手投げ斧(トマホーク)が空蛇の首を両断すると、斧は再びバルタの元へ舞い戻る。

 これは『炎付与魔法』と『引力魔法』の複合技であり、燃え盛る刃を飛ばし、ブーメランのように手元へ吸い寄せる、弾消費無しの遠距離攻撃法。


 宙で舞い踊る炎舞のように、燃ゆる赤きラインがループする。


「うははっ! 命の取り合いはこうでなくちゃな!」


 好戦的な表情を浮かべながら、バルタは向かい来る空蛇の群れを一掃した。





ご覧頂き有難うございます。


ここいらから徐々にバトル展開が始まります。

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