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空駆ける黒妖犬は死者を弔う  作者: 若取キエフ
第三章 水の都 海底に渦巻く狂乱編
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115話 心を開いて


 ポロ、リミナ、アルミスの三人は、一先ずの再会に喜ぶ中。


 蚊帳の外に追いやられながらも、依然として戦闘の構えを崩さぬドルチェスを、ナナは冷めた目で見つめる。


「おじさん、いつまでそうやってるの?」


「お兄さんだ! だが触れてくれたことに感謝する!」


 と、怒りながらも自分に話を振ってくれたことに喜ぶドルチェスは、この空気感を脱却するべく主張強めに彼らに告げる。


「俺は賞金稼ぎ(バウンティハンター)のドルチェス! 元Sランク冒険家だ! ここを通りたくば、この俺を倒していくが――」


「稲妻」


 だが言い切る前に、面倒だと思ったナナは彼に雷の上級魔法を頭上から浴びせた。


「ぐああああああ!」


「いい加減、しつこい……」


 ぼそりと不満を漏らすナナだが、その思いを裏切るように、ドルチェスは不死鳥の如く立ち上がる。


「まだだ、これしきでくたばる俺ではない! 貴様らの息の根を止めるまで、この鉄壁の体は決して砕けん!」


 と豪語しながら、仁王立ちで彼らに立ち塞がるドルチェス。


 そんな時、ふと彼は後ろからの気配に気づき振り返ると。



「ならば、少しの間氷塊の中で眠れ」



 そこにはミュレイヤとの一戦を終えたサイカが立っていた。


「な、お前いつの間に……」


「【永久凍土ペルマフロスト】」


 そう唱え、ドルチェスに有無を言わさず巨大な氷塊の中に閉じ込めた。

 そして、サイカは一息漏らし、アルミスを見つめる。


「サイカっ!」

「姫様……ご無事でしたか」


 優し気に笑いかけるサイカに、アルミスは安堵の中涙を流し、サイカに抱き着いた。


「良かった……みんなが無事で……本当に良かった!」


 泣き崩れるアルミスの頭を、そっと撫でるサイカ。


「まだ、パルネが捕まっているけどね」

「え……パルネさんが?」


 と、リミナの一言にアルミスは再び不安な表情を向ける。


「彼女は今どこに?」


 心配そうに尋ねると、ポロは「大丈夫」とアルミスを落ち着かせる。


「今バルタがここに来ているんだ。先に行ってパルさんの救出に向かってるよ」

「バルタさんって……あのバルタさん?」


 アルミスはキョトンとしながらポロに返した。


 そんな会話を続ける中。

 内々の輪の中にいるナナは、居心地悪そうにそっぽを向くと。

 スタスタと一人で先へ進みだす。


「お前は、バルタの連れの……。先程は世話になった」

「いい。バルタに頼まれたからやっただけ」


 彼女を気遣うサイカだが、ナナは彼らを見もせず歩を進める。


「ナナと言ったな。行く先は同じなのだろう? 一緒に行かないか?」


 すると、ナナは一瞬足を止め振り返るが。


「別に、あなた達に同行するメリットがない。ついて来たければ勝手にすればいい」


 そう言って、再び一人で歩き出した。


 人見知りな彼女にとって、ポロ達と同じ空間にいるのは敵地に乗り込むのと同定義。

 自らがアウェイな存在であると思い込み、決して心を開こうとはしない。


 すると、突然彼女に平行して、トテトテと横を歩くポロ。


「…………なに?」


「君、とってもいい匂いだね」


「だから、なに?」


「アルミスと同じ、優しい匂い」


「…………」


「ね、君がアルミスを助けてくれたんでしょ?」


「仕事の、ついで、だから」


「それでも見捨てなかった。だから僕は君のことを信頼するよ」


「え…………」


「一緒に行こうよ。僕、もっと君のこと知りたい」


 ポロの止まない口説き文句に、ナナは溜息を吐きながら足を止め。


「私、他人と会話するの、苦手だから……つまらないと思う」


 仕方なしにポロに歩幅を合わせた。


「いいよ。僕が勝手に喋るだけだから」


 と、満面の笑みでナナに返した。

 ポロの顔を眺めながら、ナナは以前バルタにも同じような会話をしたことを思い出す。


 その時も、バルタはポロと同じようなことを言っていた。




『ああ? 別につまらなくねえだろ。俺が勝手に喋るだけだからよ』




 そう言って、バルタも自分を見て笑いかけていたこと。


 そして思う。バルタがポロに信頼を寄せているのは、二人はどこか似ているからなのだと。

 タイプは違えど、人を寄せ付け引き込む力が二人にはある。

 そう思い。


「分かった。一緒に行く」


 ナナはポロの案に承諾し、共にパルネのいるモニタールームへ向かった。





ご覧頂き有難うございます。


間もなく第三章も佳境となります。ここから徐々にクライマックスへ向かっていきますので、お時間がある時にでもご覧頂けると嬉しいです。


明日、明後日はお休みします。

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