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13 一時の休息



 ***



 朝陽と律は学院の中にあるトレーニングジムに来ていた。普段も運動部以外あまり利用者は居ないが、今日はストレス発散も兼ねて集中してトレーニングしたかったので、朝陽は貸切の予約を入れていた。


 朝陽はチェストプレスに腰掛けて胸筋を鍛え、律はラットプルダウンという背中を鍛えるマシンを使っていた。

 律はいつもジムよりも室内プールで泳ぐことの方が多いのだが、今日は珍しく一緒にトレーニングしている。


「今日は水泳はいいのか」

「せっかく貸し切ってるんだ。隣でしっかり有効利用させて貰うさ」


 今日は筋トレを重点的にする為、有酸素運動は控えた。筋肉をつけたい場合は、有酸素運動と無酸素運動(筋トレ)を一日に両方行うことはあまり良くない。なので今日は筋トレだけと決めていた。

 他にもマシンやダンベルを使って二時間ほどジムに滞在し、ひと段落終えて朝陽と律は運動後のプロテインを飲んでいた。プロテインにはタンパク質が多く含まれており、筋トレには必須のアイテムだった。


「最近ジムにくる頻度増えたよな」


 律に言われて朝陽は苦笑する。


()()が俺達より動くからな」

「確かに。運動嫌いな癖に身体は動くタイプだよな」


 海は幼い頃様々な習い事をしていた。それも剣道や柔道といった運動系のものが多く、本人は心底嫌がっていたが、今でも彼女の根本的な動きにしっかり根づいていた。

 しかしだ。


「でも、男として絶対に負けられない部分があると思わないか」

「ある」


 律が即答するのも無理はない。海は行動が大胆で思考が男前過ぎた。男湯乱入や旧校舎屋上でのこともそうだ。何故か本人は認めないが、海は自分で思っている以上に身体能力が高い。


 しかし海に任せっきりにするつもりは無い。加えて朝陽と律は、女子の方が頼もしいだなんていう事実は恥ずかしいので、少しでも負けないようにこうして日々努力しているのだ。

 朝陽は海のことを考えていると、ふと大切なことを忘れていたことに気付いた。


「なあ律」

「ん?」

「実は今思い出したんだが、()()の歓迎会やってないよな」

「あ・・・・・・」


 四月に転入してきた海。忙殺されていたが、よくよく考えると招き入れた方が忘れていたというのはどうなのか。


「どうする」

「どうする、って?」

「食事会でもしようかと考えたが、少し物足りないかと思って」

「物足りない・・・・・・パイ投げでもするのか?」


 律の答えにガックリする。そういう意味で聞いた訳じゃない。


「そういうのじゃなくて、こう、なんかあるだろ。()()を喜ばせるような」

「じゃあ何かプレゼントでも渡すか?」


 朝陽はハッとして指を鳴らした。律はこういう時発想力がいい。


「名案だ。この後シャワーを浴びたら買いに行こう。善は急げだ」

「いいな。今日は暇だったし。じゃあ店の予約もしておくけど、確か()()も今日は予定が無かったはず」


 そして抜け目も無い。店の予約という大切なことを忘れていた。


「そうだな、頼む」


 欲しいと思った答えをくれ、自分の穴も埋めてくれる。十年来の有能な親友に感謝して、朝陽は何を買おうかと思案にふけったのだった。



 ***



 今日は朝陽と律の二人はトレーニングジムに行ってしまった。放課後の時間を持て余しながら海は校内を歩いていた。

 海も体力維持の為に週二でランニングを行ってはいるが、そもそも運動は好きじゃない。転入前は必要にかられて鬼コーチにしごかれながら鍛えたが、海はあまり身体を鍛えたいとは思っていなかった。

 ふと前から歩いて来た人物に目が止まった。


「「あ」」


 Bクラスの七沢桜だった。今日は伊織と一緒ではない。


「お久しぶりですです、七沢先輩」

「・・・・・・・・・・・・」


 何故か七沢は無言だった。何を言おうか考えているようにも見えた。

 不意に目の端に生い茂った木々が映って、伊織が持って来た七沢の水彩画を思い出した。


「この前は水彩画ありがとうございました。とても綺麗で部屋に飾ってます。お代は足りていましたか?」

「・・・・・・ああ、十分だ」

「よかった」

「どうして俺に描かせた。絵ならどこでも買えるだろう」

「前に先輩がコンクールで受賞した絵が、雑誌に乗っていたんです。作者の名前が桜でタイトルは花筏はないかだだったから、なんて綺麗な組み合わせなんだろうって。ずっと覚えていたんです」


 その雑誌は祖母が見ていたものだが、横から覗いてとても印象に残っていた。だから鷹坂の用意した七沢の資料を見て、もしやと思って調べたらドンピシャ本人だったのだ。


「ふんっ、お前ごときに覚えられていたなんて。Bクラスはその頃から目をつけられていたってことか」

「いやそういうわけじゃないんですけど」


(機嫌悪いな)


 七沢はやけにピリピリしていた。こういう時は何を言っても機嫌を悪くするものだ。


「どうしてまた一人でほっつき歩いている。また狙われて陥れられても知らないぞ」


 海はムッとした。確かにそうだが、そもそも原因は伊織だったではないか。


「護身術くらいは心得てます」

「それは襲ってくると分かっている時の訓練だろう。突然後ろから気配無く襲われて、咄嗟とっさに判断が出来るのか?男の本気の力に抗うほどの能力があるのか?」

「そ、それは」


 海は言葉に詰まった。確かに試合や訓練は実践とは違う。


「男っていうのは女が思っているほど紳士じゃないんだ。女々しい奴も姑息な奴も多く居る。だからお前みたいに呑気にのほほんと歩いていると危ないんだよ!」

「さっきから注意してくれてるのか怒られているのかよく分からないんですが」

「どっちもだよ!・・・・・・ったく、夜道には気を付けろ」

「それは人気の少ないホームには気を付けろみたいなニュアンス、ではないですよね?」

「ちっげーよバカ!人の心配を無下むげにしやがって!」


 よく怒るなぁと海は少々引いていた。


(めちゃくちゃキレてるけど、言ってることは親みたいなんだよな)


 そもそも先輩こんなタイプの人だっけ?と首を軽く傾げた。今までは伊織の隣で冷静沈着に佇んでいたが、伊織を屋上に呼び出した後からは、七沢が遠くから見かける度に海に分かりやすく怒気を向けているのは分かっていた。

 直に会うと直球でなかなか厳しい言葉を投げかけてくる。これは早目に退散する方がいいだろう。


「あーじゃあ私はこれで」

「待て」

「はい?」


 立ち去ろうとしたのを引き留められた。


「お前、今から予定はあるか?」

「いえ、特には」


(あ、予定も無いのにほっつき歩くなって言われるかな)


 失言だったかな、と思ったが、今度は怒ってくる様子はない。何か言おうかどうか悩んで口ごもっていた。


「美術室の・・・・・・いや、なんでも無い」

「え、なんですか?そこまで言って言葉切らないで下さい」


 七沢は少し躊躇ためらいがちに呟いた。


「美術室の掃除を手伝ってくれないか」

「いいですよ」

「即答!?」


 驚く七沢に海は驚いた。


「いや悩むほどの内容でもないでしょう。暇だし手伝いますよ」

「そうやって簡単に他クラスを信用するな!弱み握ってるからってな、それで押さえられてるのはShidoだけなんだからな!」

「え、じゃあ帰ります」

「待て暇なら手伝え」

「どっちなんですか本当に!?」


 こうして海はなんやかんやで七沢に引っ張っていかれ、美術室まで連れて来られたのだった。

 美術室は授業にも使われるが、選択制なので海が踏み入れるのは初めてだった。普通教室の二倍は広さがあり、過去の生徒の作品や石膏像が並んでいる。

 しかし授業で使うにしては、足の踏み場もないほど散らかっていた。模造紙が散らばり、絵の具やパレットは散乱、筆は使われたまま放置されていた。


「うわー・・・・・・思ってたよりぐちゃぐちゃですね。先輩、整理整頓って言葉知ってますか?」

「俺じゃねーよ!何が嬉しいのか知らないが、紫藤が地域交流で社会貢献とか適当なこと言い出して小学生に美術教室開いたんだ。そしたらこの有り様だ」


 よく見ると子供用のハサミやノリなどが多く見受けられた。確かに社会貢献活動はエーレの審査基準に含まれる。その一環だろう。


「これを一人で片付けようとしてたんですか?」


 すると七沢はギクリとして、ため息をついた。


「美術部は俺一人なんだ」

「Bクラスの方々は?シルバーの人達とかに手伝って貰ったらどうです?」

「お前Bクラスのシルバー見て、まともに手伝いそうな奴が居ると思うか?」

「思いません」

「ゴールドもアレだからな」


 アレ、と伊織が形容されていて海は苦笑いした。


「あーまあ、ハハ・・・・・・。というか、七沢先輩が伊織様の悪口言うの初めて見ました」

「悪口じゃない。でも、あれだけ俺が頑張って尻拭いしていたのに、伊織が軽々しくお前に付き纏ってるせいで努力は完全にパァなのは事実だ。威厳もクソも無い」


 それは不憫としか言いようがない。常に伊織のリミッターになっていたのは七沢だった。しかも他クラスの海に関わるのは心外だろう。


「だいたいお前に今さら取り繕ったところでだろう」

「開き直っとる」


 そして二人は窓を開けて、片付けと掃除を始めた。汚れた模造紙と綺麗な模造紙を分けて、パレットや絵の具で固まった筆はお湯で洗った。

 ハサミなど危ないものは先に指定の棚に入れ、箱から出された絵の具はひとつの箱にまとめて放り込んで、他にも素人の海によく分からないものは一箇所に寄せておいた。

 大方片付けてから机や椅子を寄せて掃き掃除とモップをかけ、床を綺麗にしてから机や椅子を整頓する。


 後は細かな選別や、絵の具を片付ければ終わりだった。約二時間ほどかかったが、来た時とは見違えるように綺麗な部屋に様変わりしていた。

 いざ見渡してみて七沢も驚いていた。


「お前、もしかして有能だったのか?」

「私も一応は鷹坂グループに選ばれたノーランクなので」


 偶然幼馴染だったから選ばれたとは言わず、ちょっと見栄を張っておいた。


「助かった。対価は払う」


 そう言って財布を取り出そうとした七沢に海はギョッとした。


「現金ですか!?要りませんよ!ちょっと手伝っただけですし」

「二時間の時給は払う」

「いやでも本当に」

「黙れ!お前に貸しを作るのが嫌なんだ早く対価を言え!」


(えー・・・・・・)


 この人意外と面倒くさいな、と海は思ったが、対価を考えるまで納得してくれなさそうだったので、頑張って落とし所を考えた。


「じゃあ、簡単なものでいいのでまた先輩に絵を書いて欲しいです」


 すると七沢は何か考え込む仕草をした。


「・・・・・・・・・・・・。・・・・・・ちょっと待ってろ」

「え、今じゃなくても」

「後で俺に撫子なでしこ棟に届けさせる手間を増やすつもりか?黙ってそこで待ってろ!」

「はい、すみません」


 もう海は反抗するのをやめた。黙って言われるがままにしておく方が得策だ。

 七沢はすぐに何枚か模造紙を持って来た。


「題がなんでもいいなら、下書きがいくつかある。あとは色付けするだけで完成なんだが」


 海はパッと顔を明るくした。


「じゃあそれでお願いします!」


 いくつか下絵を見せられて、なんとなくスズメの絵が可愛かったのでそれを選んだ。七沢は自前の絵の具と筆を用意してパレットを広げた。パレットには普段使っている絵の具がそのまま保存されていて、使い込まれているのがよく分かった。


「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


 部屋には沈黙が降りた。海は邪魔をしては悪いと思って、石膏像の顔を眺めていた。沈黙を破ったのは意外にも七沢だった。


「・・・・・・どうして水彩画が好きなんだ。別に芸術品が好きとかじゃないだろ絶対」

「なんで絶対なんですか」

「悪いとは言ってない」


 そうだろうか、と疑いながらも経緯を話した。


「おばあちゃんが絵を好きだから、隣で見てたら水彩画だけよく見るようになったんです。淡い色合いが綺麗だなって」

「そうか。・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


(会話が続かねぇー)


 単に質問されただけなんだろうか。ふと海も前から感じていた疑問を聞いてみることにした。


「あ、七沢先輩はどうして伊織様と一緒に居るんですか?」

「急に距離を詰めた質問をするな」

「先輩がそれを言うんですか!?」


(私の個人的趣味についても距離詰めてると思うんですが!!!)


 海は聞くんじゃなかったとそっぽを向いた。しかししばらくして気が変わったのか、七沢はぽつぽつと話し始めた。


「俺の名前、女みたいだろ」

「まあ、一般的にはそうかも」

「それで小さい頃はよくからかわれたんだ。でも、伊織だけは一度もそんなことしなかった。一番ふざけそうな奴なのに、礼儀だけはわきまえてた。だから今も一緒に居る。それだけだ」

「そうなんですか」


 意外だとは思わなかった。伊織はいつもふざけていそうで、肝心な一線は踏み越えてこない。親しき者にも礼儀ありという言葉があるが、まさにそれだ。それは伊織がBクラスのゴールドであるという以前に、彼自身の人間性なのだと薄々感じていた。


「まあ向こうはどう思っているか知らないがな」

「え?」

「どうせ調べて知っているんだろ。俺は別に金持ちじゃない。伊織には他にもっと合う人間も居ただろう。だから伊織はどうして俺と一緒に居るのかって考える時もある」

「それは、七沢先輩が伊織様に馬鹿にされなかった分、伊織様を大事にしたからじゃないですか?」


 七沢は手を止めて、海に振り返った。


「だから伊織様もきっと、自分を大事にしてくれる七沢先輩を、大切な友人だと思っているんですよ」

「・・・・・・どうだかな」


 七沢はそう言ってまた絵と向かい合っていた。言葉とは裏腹に、七沢は少し微笑んだ気がした。


「お前はどうして鷹坂と相馬と一緒に居るんだ」

「あの二人とは幼馴染なんですよ。知り合ったのはほとんど偶然です。家も近くないから小学校は別だったけど、空気みたいな存在で、当然に友達でした」

「いいな、自信過剰で」

「ちょいちょい言葉にトゲあるの気になるんですけど!」


 確かに人よりポジティブだとは自覚しているが、自信過剰ではない。はず。


「ならどうして今更ノーランクで転入───いや、なんでもない」


 七沢はハッとした様子で言葉を取り消した。それから本当に会話が途切れて、海は少したまれなくなって席を立った。


「・・・・・・ちょっと出てきます。すぐ戻ります」

「ああ」


 海は購買に向かって歩いていた。


 実はあることが引っかかっていた。七沢は『どうして転入したのか』と尋ねた。


(私が転入することになったのは、誰かが撫子棟に朝陽くんを狙って爆弾を送ったからで・・・・・・)


 全ての始まりはそれだった。

 正直一番疑わしいのはBクラスだと思っていた。


(それにしては意外と、爆弾に対する意識が薄い?)


 仮にもShido直属のノーランクの七沢が例の爆弾事件を知らないはずがない。さっき言葉を切ったのも、すぐにあの件に思い至ったからだろう。


 伊織が七沢を差し置いて動くというのも、正直考えにくい。七沢は伊織のリミッターの役割を担っている上に、伊織自身も七沢に信頼を寄せている。あの二人のどちらかの単独行動ではない。


 そもそもこのやり取りがフェイクかとも考えたが、それでも普通はやましいことがあればその話題を避けるのが人間のさがだ。


(そもそもShidoが怪しいとして、鷹坂グループを狙う理由って何?)


 伊織は個人的に海に絡むことは増えたが、肝心の一線は絶対に超えない。重要なことは一切話さず、いつもはぐらかす。紫藤伊織はやはりShidoの人間なのだ。

 目的も意図も見えない。しかし七沢は、押さえられたのはShido()()だと言った。では他にも鷹坂グループを狙う人間が居るのか。考えれば考えるほど、がんじがらめになっていった。


 海は自販機でパックジュースを二つ買って、また美術室に戻った。今はとりあえず、保留にしておこう。


「どうぞ」

「なんだこれは」

「オレンジジュースです。差し入れです」


 はい、と無理矢理押し付けた。


「いくらだ」

「要りません。差し入れですから。受け取って下さい」


 そこまで言うと、七沢も素直に受け取った。


「ありがとう」

「オレンジでよかったですか?」

「ああ。終わったら貰う」


 七沢の手元を見ると、もうほとんど仕上げに差し迫っていた。海はリンゴジュースを飲みながら七沢を眺めて、十分ほどして絵は出来上がった。


「出来たぞ」

「可愛い・・・・・・!」


 無機質な下絵から一変、ふくふくと可愛らしいスズメが二匹身を寄せていた。柔らかな毛並みや、愛嬌のある目がキメ細かく描かれている。


「先輩ってキレ症なのに絵は素敵ですよね」

「一言多いんだよお前」


 そう言って七沢はロッカーから額縁と紙袋を取り出した。


「ほら額縁も持ってけ」

「いいんですか?」

「俺の私物だ。額縁代はこの前の代金から引いといてやる」


 そう言って七沢はオレンジジュースにストローを刺した。


「じゃあまたよろしくお願いします!」

「俺は他クラスの人間だと自覚してから頼みに来い。金もな」

「はい!」


 海は頭を下げて美術室を後にした。ふと放置していたスマホに、律からメッセージ来ていることに気付いた。


(この後レストランでご飯?)



 ***



「「ひい、Aクラスにようこそ」」


 そう言って弾けたクラッカーの先にはピザやアクアパッツァ、アヒージョなど、様々な料理が並んでいた。


「うわぁ、美味しそう!ありがとう二人とも!」


 学院の中にあるレストランに呼ばれた時は単なる食事会だと思っていたので、海は素直に喜びばかりが溢れた。


「あとこれは俺達からプレゼントだ」

「二人で選んで来たんだ」


 二人が差し出してきたのは小さなサイズの紙袋で、百貨店のものだった。中にはブランドロゴの付いた箱がリボンで結ばれている。


「開けていい?」

「勿論」


 プレゼントは有名なブランド品のキーケースだった。ピンクのレザーを基調に、ゴールドの金具がより上品さをかもし出している。


「可愛い!」


 デザインはドンピシャ海の好みだったが、ブランド品ということは大体値段の相場が決まっている。


「いいの?こんな高価なもの貰って・・・・・・」


 海は不安になるが、朝陽は柔らかく笑んだ。


「俺達は()()が気に入ってくれたらそれでいい。な、律」

「ああ」


 目の前に居るのは神か仏か?と錯覚しそうになった。


「ありがとう、一生大事に使います!」


 海は大切に紙袋に仕舞い直した。帰ったら速攻でキーケース付け替えよう。


「気に入ってくれたらならよかった」

「さぁ飯食おうぜ」

「うん、食べよう!」


 こうして明るい夕食会は始まったのだった。


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