表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傀儡使いと獣耳少女の世界遍歴  作者: つくし
第三章 コルマノン大騒動
77/124

75 暴発する企み

「……」


 冷たい夜風が通り過ぎては夜の冷涼を感じさせる。シルヴァとシアンは背後の男の言葉に背筋を凍らせていた。


「……」


 何かを言うべきか、いやこの場合は沈黙を貫くことが最善のはず。余計なことを言ってさらに疑われるわけにはいかない。


 けれど、気持ちの悪い沈黙は非常に居心地が悪い。つい何かを口走ってしまいたい気分がふつふつと湧いてくる。


 シルヴァはこのタイミングを利用して、彼らを撃退しようという算段も頭に浮かんだが、逆にそれこそがあの男の狙いなんじゃないかとも思えてきた。


「……」


 シルヴァはちらりと、後ろの二人を見つめる。ナイフの柄の部分をシルヴァの背中に押し付ける男と、その隣にはサラと呼ばれたシアンを確保した女がいた。


 やはり二人は後ろにいた。そこからはシアンのメッセージを視界に入れることはできないはず。ならば、これはブラフか。


 そこまで考えなおして、ちょっと安堵するシルヴァ。

 けれど、それは次の瞬間に危機感へと姿を変えた。


「――」


「ぐっ……!」


 背後へと意識を向けていたシルヴァの横から、シアンのくぐもった悲鳴が聞こえる。

 シルヴァはすぐさま彼女の方へ視線を向けた。


「なっ……!」


 そこには、後ろにいたはず(・・・・・・・)のサラがシアンの首を掴み、その軽い体を持ち上げていた。シルヴァはその事態に面食らっていたその瞬間に、男はシルヴァの背後に回ってナイフの刃を首元に晒し、腕でシルヴァの首もしめる。


「この指輪……」


 サラはシアンの首を絞める腕とは反対側の腕で、指輪となった『液状武装』をはめている指を手に取って、まじまじと見ていた。男に羽交い絞めにされながらも、シルヴァはもう一度さっきまでサラがいた場所を見る。そこには暗闇が漂っているだけで、当然ながらそこにサラはいない。


 いつの間にかサラは音もなくシアンの前に移動していたのだ。どういうカラクリなのかは不明だが、この状況からして『液状武装』による秘密の合図も見られていた、ということか。


「っ……!」


 ここまできては逆王手にかけられたようなもの。異能(支配)を隠し通すのは、もう止めだ。


「――っ」

「お……?」


 サラの『液状武装』をまじまじと見る視線、そしてシルヴァを力強く絞める男の微かな震えが止まる。――シルヴァの『支配』が発動したのだ。


 そしてすぐさま二人をそれぞれ逆の方向へ吹っ飛ばす。彼らは数メートル遠くまで吹っ飛び、サラは建物のコクリートに叩きつけられ、もう一人の男は倉庫か何かの建物のガラスをかち割って、その中へ吹き飛ばされた。


「シアン!」


「ごほっ……! だ、大丈夫……っ!」


 サラの手から解放されたシアンは地面に崩れ落ち、咳き込みながらも何とかすぐに立ち上がる。


「あの女の人……いきなり前に来て……」


「ああ……。僕も後ろを見てたけど、一瞬で前に移動してた……。仕組みを見破らないと相手をするのは危険かも」


 シルヴァはそう言いながら、前方後方にそれぞれ吹っ飛ばした彼らを見定めた。男の方は建物の中まで入ってしまったので分からないが、サラという女の方はすでに立ち上がっている。


 シアンもそれに気づいていたようで、『液状武装』を指輪から槍へと変形させて構えた。シルヴァも姿勢を低くし、襲撃に備える。


「シルヴァ、これからどうする……? あの二人を相手にするの?」


「……本音は姿をくらまして、安全圏から二人を狙いたいところだけどね……。この状況だと……」


 シルヴァはこちらへ歩いて向かってくるサラを見て目を細めた。


「素直に逃がしてはくれなさそうだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ